ことのはあそび　～春隣～｜リアクション

ことのはあそび　～春隣～

●恋する乙女の夢

　乙女ゲームをやり終えた羽生碧南は、そろそろ寝ようとベッドの中へ。
　推しキャラの告白に成功し、綺麗なスチルを見ること、イケメンボイスで愛を囁かれたことでしばらくは興奮していた。
　心臓バクバク状態だったが、それが落ち着いてくると次第に眠気がきて、いつの間にか眠ってしまった。

　気が付くと、碧南は一面、銀世界なゲレンデにいた。
　服装はスキーウェアといったウィンタースポーツなもので、スキーを装着し、ストックを持っている。
　どういうこと！？　と少し焦ったが、これって夢……？　と考えると冷静に。
　いつの間にか隣にいたのは、スポーツマンなイケメン。寝る前に攻略した推しキャラに似ている。
　一緒に滑ろう、と声をかけられた。
（これって、寝る前にやった乙女ゲームの再現なのね）
　そう思うと胸がドキドキしてきた。
　ドキドキしつつ、２人は交互にゲレンデにシュプールを描く。
　上手じゃないかとイケメンに褒められ、嬉しくなり張り切る碧南。

　滑り終えると、もう1回滑りましょうと碧南はイケメンの手を取り、リフト乗り場に向かう。
　ペアリフトに乗り、ゲレンデ頂上に向かう間はイケメンの顔をチラ見。
　どうかした？　と言われた時は「ちょっと疲れただけだから」と誤魔化した。
　頂上に着くと、イケメンはこう言った。

「このままずっと、お前と一緒に滑っていたい」

　推しキャラと同じイケメンボイスだわ！　と碧南は心の中で大興奮。
「私も、あなたとずっと滑りたいわ……」
　イケメンにゆっくり近づき、熱い視線で彼を見つめる。
　俺もだよ、とイケメンが顔を近づけ、唇を重ねようとする。
（こ、このままだとキスすることに……！）
　乙女ゲームにない展開に、この後どうなるの！？　と碧南はドキドキ、ワクワク状態。
　胸の高鳴りを感じながら、イケメンとキスを……というところで、何度も自分の名前が耳に。
　最初はイケメンの声だったが、それは次第に聞き覚えのあるアラーム音に変わった。

　寝ぼけ眼でむっくり起き、枕元に置いてあるスマホを手にして時刻を見る。
　時刻は、セットした時間をとうに過ぎ、既に家を出る時間になっていた。
「え？　もうこんな時間！？　遅刻しちゃう！」
　急いで飛び起き、制服に着替えて身だしなみを整えると朝食を摂らずに登校した。

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