ことのはあそび　～春隣～｜リアクション

ことのはあそび　～春隣～

●願い事

　恵御納夏朝は猫が大好き。
　趣味は趣味は猫グッズ作成等で、猫パペットを常備している。
　猫好きということもあってか、寝子島で係わった出来事では猫関連が多い気がする。
「寝子島という名前だからかな……」
　散歩の途中で出会った仔猫をじっと見ながら、そんなことを思う。

　大好きな猫と一緒に楽しい時間を過ごせたらいいと思うが、時折、フツウを脅かす出来事に係わることも。
　その中でも特に忘れられないのが『冷徹な僕』と呼んでいた別人格である夏夜の存在だろう。
　初めて夏夜と会話した時は、とても不安だった。
　何かを忘れている。このままでは駄目なのかという不安に駆られた。
　夏夜の警告に怯えたこともあった。
　夏夜と対峙したあの日、無差別に誰かを攻撃するような子じゃないとわかって安心した。
　それから、夏夜の存在に不安を感じなくなったような気がした。

　そんなことを思い出していると見つめていた仔猫が近づき、夏朝の足元に擦り寄ってきた。
「僕のこと、心配してくれているの……？」
　スリスリしている仔猫を抱き上げ、頭を撫でる。
「大丈夫だよ、心配かけさせてごめん……」
　にゃあ、と鳴くと、仔猫は夏朝から離れた。
　遠くに行ってしまうのかと思ったが、振り向くと「ついてきて」と言っているかのように鳴く。
　どこかに案内してくれるのだろうか。

　仔猫の後をついていくと、辿り着いたのは寝子島神社の鳥居の前に辿り着いた。
　夏朝が辿り着いたのを見届ける役目が終わったというように、仔猫は、どこかに行ってしまった。
「神頼みをするといいよ、って思ったのかな……？」
　神様にお願いすることは、何かあるだろうか。
　お願い事をしよう、と鳥居をくぐり、寝子島神社の境内へ。
　賽銭箱にお賽銭を入れ、鈴を鳴らして二礼二拍手をしてからお願い事を。
「寝子島の神様、お願いします……。僕と、夏夜ちゃんのお願い事を叶えてください……」
　手を合わせ、願いが叶うことを夏朝は真剣に祈った。