ことのはあそび　～春隣～｜リアクション

ことのはあそび　～春隣～

●内と外の刃物

　サキリ・デイジーカッター。
　外見はセミロングの銀髪、鋭い眼光の中性的な美形。
　冷静で思慮深い雰囲気だが、瞳の奥に刃の如き鋭い眼光を宿している。
　優しさと冷酷さが同居する性格で、滅多に無いが、激昂した時は乱暴な口調になる。
　
　時折見せる鋭さ、冷酷さ。激高した時の口調は昔、裏社会で荒んだ生活をしていた。
　色々あって更正し、命の恩人でもある従姉弟に連れられ寝子島に来たことは今でも覚えている。
　心の底には危険な部分を隠し持つものの、平穏な生活にも随分慣れてきた。
　体のどこかに刃物を帯びていないと精神が不安定になるほど刃物依存症になってしまったのは、裏社会の生活習慣が身に染みたからだろうか。
　誰に教わった訳でもないが、扱いが異常に上手いのは天賦の才能なのかもしれない。
（狂気なんて、誰しも常に心の内にあるものだ。普段の僕は、優しいフリをしているだけだ）
　服の中に暗器として携帯している小型刃物を取り出し、手にしながら、そんなことを考える。
　不思議な出来事、戦いが生じる出来事に多く係わったこともあり、サキリはますます刃物が手放せない。
　常に隠し持ち、来たるべきその時に備えることを忘れない。

「これを使うことがなければ、それでいいんだが」　
　そう言うが、寝子島で起こる不可思議な出来事で、刃物を使わざるを得ない場合もある。
　センセーショナルに一斉に報道され、寝子島にも、もれなく伝わっていった事件の犯人に係わったり。
　クローネの配下と三羽烏と戦ったり。
　誘拐事件に係わったこともあった。
　淹れたての紅茶を飲みながら、そんなこともあったと思い出す。
「美味しいお茶を飲んだり、甘いものを食べたりいった平穏な日常を過ごしたい」
　サキリはそう望むが、寝子島ではそうもいかないかと思ったりする。
　彼自身、鋭い刃物のようなものなのだから。
　刃物の手入れでもしようと、ナイフを取り出す。

「刃物を扱わない退屈で、平和な生活を送ることは僕には一生、できないだろうな」

　フッ……と嘲笑し、手入れをしながら、サキリは刃物を手放せないことを実感するのだった。