ことのはあそび　～春隣～｜リアクション

ことのはあそび　～春隣～

●限界まで大きく

　膝下くらいまであるふわふわのロングウェーブの髪、真っ白な肌。
　漆黒のミニキャミソールドレスが普段着のボンキュボンの完璧なスタイル。
　窮極を超越した美少女だが、徹頭徹尾謎で不条理な不思議少女。
　目立つ存在にもかかわらずなぜか神出鬼没で、正体についてはいくつもの噂があるエロ・イーアールオーは、雪が積もっている周囲では浮いている存在だった。
　あの子、寒くないのかなとエロを見た人々は不思議がるが、本人は寒さや周囲の視線を感じていない様子。
　男女関係なく動植物から無機物まで魅了する超絶魅力があるので、男性の熱い視線がエロに降り注ぐ。
　いつものことですと気にせず、寝子島を歩き回る。

　積もった雪を掌で乗せ、「真っ白で綺麗なのです」とエロはじっと見る。
　しばらくじっと掌の雪を見ていたが、体温で次第に溶けていった。
「残念なのです」
　もっと見ていたかったのに、溶けてしまったのが残念だった。
　雪はどこから降ってくるのか。
　降り続ける雪を見ながら、ふと、エロはそんなことを考えた。
「大きくなれば、雪が降っているところがわかるでしょうかー」
　ろっこん『おっきくなったのですー』を使えば、寝子島全体が小さく見えるほど大きくなれる。
　そうすれば、雲の上の様子を見ることができ、雪が降っているところを見られるかもしれない。
「雪が降るところを見るのですー。おっきくなったのですー」
　ろっこんを発動すると、エロの身体は、みるみるうちに巨大化した。
　雲を突き抜けるほどの巨大化は、無限の巨大化に挑むことだ。
　これまでにない巨大化に、エロはドキドキした。

　極限状態な巨大化に挑んだのはいいが、徐々に息苦しくなってきた。
　人によっては、2000メートル前後の標高でも発症することがある高山病に一瞬でかかったようなものだ。
　エロの場合、急激な巨大化が原因で酸欠状態のような症状が出たのだろう。
　何度か巨大化したが、ここまで大きくなったのは初めてだった。
　このままでは危ないですと巨大化をやめ、元の大きさに戻った。
「雪が降る場所には辿り着けなかったのです。死ぬかと思ったです」
　元の大きさに戻ったエロは、巨大化して直に雪ができるところを見るのは自殺行為だと身をもって知った。

　危ない目に遭ったが、ものすごく大きくなれたことが嬉しかったエロだった。

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