新雪とともに日が昇る｜リアクション

新雪とともに日が昇る

☆始業式前

　森篠琳子は、今年の春には高校を卒業して寝子島信用金庫へ就職する。
　思い返せば、高校１年の時に亡くなったお人好しの父親が知人の借金の連帯保証人になったばかりに、財産と保険金をほぼ借金返済に充てる羽目となった。
　保険外交員をしている母親は決して身体が丈夫な方ではない。今年で10歳になる妹もいる。
　とてもじゃないけど、進学は論外だった。
　その決断を間違っているとは思わないが、モヤッとしたものは残っていてそれから自由になれずにいる。

　始業式の朝。
　冬休みもバイトに勤しんでいた琳子に休みボケはない。
　いつものように早く起きて、母親と一緒に朝食の支度をする。
　頃合いを見て９歳の妹、奏子を起こす。
「起きて。今日から学校でしょ？」
「やだ、ねむい……」
　ぐずぐず言った奏子だが、しぶしぶ起きだした。
　３人で朝食をとった後、食器を片付けて、歯磨き洗顔をしたら登校準備。
　寝子高の制服に身を包み、妹の身支度を手伝う。
「宿題は済んでるよね。忘れ物はない？」
「うん……」
　同じく出勤準備のできた母親と三人同時に家を出る。
「いってらっしゃい」
　駅へ向かう母親と別れ、小学校まで妹を送る。
　手を振る妹に手を振り返し、その足で寝子高へ向かった。

「今日から新学期。休みが終るのは残念だけど……気分一新で頑張ろう」
　昨日までのんびり過ごしていた佐藤英二は、朝の寒さに落差の激しさを感じつつ、心機一転頑張ろうと思っていた。
「おはよう」
（同じ桜花寮の住人だと冬休みも普通に会ってるけど……）
　２年３組の教室で、久しぶりに会う級友たちと挨拶を交わす。
「おはよう。冬休みどうだった？」
　クラスメイトの万条幸次に声をかけた。
「俺は帰省して、母さんのオムニャイスを食べてきた」
　幸次が答え、猫のおにぎりが可愛い写メを見せてくれた。
　他愛ない雑談も、冬休み明けはそれなりに新鮮だ。
「へえ、すごいな。可愛いくて美味しそうだね。僕は年末にネコミケに行ったよ」
「帰省はしなかったの？」
「うん、桜花寮で年越しした。雪の日に遊んだり……あとは時間があったからゲーム何本かクリアしたよ」
「何のゲーム？」
　盛り上がっているところで、チャイムが鳴った。
「あ、講堂に行かなきゃ」