新雪とともに日が昇る｜リアクション

新雪とともに日が昇る

☆新学期を待ちながら

　年明け後、鴻上彰尋は家族と共に母の実家で過ごした。
　そして新学期が始まる少し前にシーサイドタウンの家に戻ってきた。
　弟妹がゲームに興じる声が聞こえる中、少し残っている宿題を片づけたり、新学期の準備をしていた。
　
　ふと窓に目をやると。
「……あ、雪が」
　外で雪がちらちらと舞っているのが見えた。
　なんとなく雪を見たくなって、外に出る。
　空を見上げながら手を開き、舞い落ちる雪に触れる。
　ふいに、七夜あおいの顔が浮かんだ。
（今頃は実家にいるまだだろうか、それとも戻ってくる時期だろうか）
　学校で毎日見かけていたから、長い休みの時はほんの少し寂しい。
　かといって、毎日連絡を取るような仲でもなくて。
（連絡、してみようか）
　用事があるわけではないけれど。
（元気かなとか、今何をしているのかとか）
　そんなささいなことでもいいんじゃないだろうか。
　そして、いつもなら心の中で想うだけのことを伝えてみたい気がした。

（メールか、それとも電話か）
　どちらにしようか迷う。
　声を聞けたら嬉しいけれど、もしかしたら忙しいかもしれないし。
（まずはメールかな……）
　メールならば考えながら言葉を紡ぐことができる。
　そう思って彰尋はメール画面を開いた。　
　なんと書こうか。新年の挨拶は時期を逃してしまったし。
『お元気ですか？　まだ実家にいるのかな？　そろそろ帰ってくる頃かな』
　書いては消しを繰り返す。なかなか気楽には書けない。
『今何をしていますか。俺は新学期の準備をしながら雪を見ています。
　新学期、早く来てほしいな』
　長すぎるのも重くなってしまうし、と指を止めて読み返す。
　誤字がないのを確認してから彰尋はメールを送った。

　携帯をしまわず、机の上においたまま彰尋は返事を待った。
（すぐには来ないよな）
　そう自分に言い聞かせながら、しばらく時間が経った。

　～♪
「来た！」
　携帯の着信音に、飛びついてメールを開く。
　あおいからだった。
『メールありがとう。私は元気です。今日こっちに帰ってきました。あ、家族へのお土産の猫まん、喜んでもらえました。
　宿題がまだ終わっていないので仕上げをしています。
　お休みも長いと飽きてきて、私も新学期が早く来ないかなとちょっと思います』　
　それだけのメールだけれど、読み終えても閉じたくなくて、もう一度読み返した。
　胸が温かくなるのを感じた。

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