【星幽塔】第一階層　グレムリン・パニック！｜リアクション

【星幽塔】第一階層　グレムリン・パニック！

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「おとなしくしろ！」
　蒼留人の振るう剣が、暴走した星の鏡に防がれる。攻撃がそっくりそのまま反射され、その衝撃に蒼留人はよろめく。
　そこへ迫る星のジョウロが、やはりスプリンクラーのように勢いよく水を散布する。
けれどジョウロが放った水は、ティオレが放った魔火の斬撃によって防がれた。
音を立てて蒸発させられたからなのか、ジョウロはまるで動揺したように空中で震えている。
「今のうちに」
「わかった！」
　チェスの言葉に応えるが早いか、体勢を立て直した蒼留人はジョウロに飛びかかる。逃げようとしたジョウロの、鼻の部分をむんずと掴む。
「ジョウロを床に！」
「これでいいか！？」
　鼻を床へ突き立てるような格好で、蒼留人はジョウロを床へ押し付ける。
「ありがとうございます。ばっちりです」
すかさず、チェスは魔風の光を発動。風に乗せてめいっぱい加速させたバケツを射出した。
勢いよく放たれたバケツは、過たずにジョウロに命中。ぐわぁぁぁん、と妙に余韻の響く音を立てて覆いかぶさった。
すぐさまバケツを押さえつける蒼留人に、「代わるよ」とティオレ。半ばもたれかかるようにバケツに体重をかけ、蓋をされてもまだ暴れようとするジョウロを封じ込めてやる。
手伝いには来たものの、金槌から受けたダメージが案外バカにならない。ならせめて、このくらいは引き受けようというつもりだった。
ティオレが乗っかっても、まだしばらく震え続けていたバケツだったが、やがてぴたりと動かなくなる。
　けれどバケツに乗りかかったティオレの背後から、一匹のグレムリンが迫っていた。ティオレに悪戯するつもりか、それとも今度はバケツを暴走させるつもりなのか。
つま先立ちの早足で、バケツに迫っていくグレムリン。
そしてその背後から、両手いっぱいにカーテンを広げたチェスが迫っていた。
　自分の身体を覆う影に気づいたグレムリンが、なにごとか喚き散らしながら、床を跳び上がる。テーブルの足や棚の側面を使って器用に三角飛びし、梁の上へと逃げようとする。
「逃しませんよ」　
足元に思いっきり魔風を吹かせ、チェスは飛んだ。跳び上がったグレムリンの前へ、ふわりと回りこむ。
「観念してください」
「ギギッ！？」
空中でジタバタもがくグレムリン。翼があるわけでもなし、もがいたところで意味はなく。
そのまま、為すすべなくカーテンに包まれた。
中でグレムリンがもがくカーテンを抱えたまま、ふわりと落下するチェス。
その足元を狙って、まだ残っている箒が「お掃除」にやってくる。
「ちょっと落ち着いてください、箒さん達」
チェスは魔風の光を発動、左右から風を起こして箒を挟む。
風の壁に挟まれまい、と抵抗する暴走箒。しかしそれはむしろ、チェスの思うつぼだった。
左右の風に抵抗する箒たちは、ローラーに流されるように風に流され、チェスから引き離されてしまっていたのだ。
風の壁から抜け出たところで、すかさず蒼留人が捕縛する。
縄でぐるっと束ねて縛ろうとする彼。その背後の棚の上、天井との隙間にグレムリン。後ろから飛びかかろうと構えた瞬間、チェスが風呂敷を魔風で発射。
風呂敷に飛び込む格好になったグレムリンは、急に視界が塞がってじたばた、ぼとり。
落ちた拍子に思いっきり頭を強打でもしたのか、そのまま動かなくなってしまった。

　一匹のグレムリンが、こそこそと壁伝いに逃げようとしていた。
　飛びまわる鏡を抑えようとするチェスや蒼留人に気付かれないように、息をひそめた忍び足で窓を目指す。
　グレムリンにとって、窓の鍵を開けるくらいは決して難しいことではない。
――見つからなければ、だが。
「あまりに無鉄砲な振る舞いはいけませんよ」
　たしなめるように、ノエルの箒がグレムリンの視界を塞ぐ。さっと箒を掃けば、窓にかけていた手が滑り、グレムリンが落っこちる。
「皆さん、こちらに。きっとこれで最後でしょう」
　当然、逃げられるわけもなく。
　蒼留人に剣の腹で小突かれて、そのまま気絶させられたのだった。

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