【星幽塔】第一階層　グレムリン・パニック！｜リアクション

【星幽塔】第一階層　グレムリン・パニック！

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「……ここはどこだ？」
響蒼留人は、まったく見知らぬ場所に居た。
目の前に広がるのは、明らかに寝子島とは違う、まるでファンタジーRPGのような町並み。
蒼留人の服装も、ファンタジックなものに変わっていた。
（もしかして、噂に聞く星幽塔か？）
　とりあえず散策してみようとぶらつくうちに、路地の一角に少し興味を引くお店を見つけた。
「魔道具……ちょっと気になるな」
　そのお店――sweep∽sleepの扉を開けた蒼留人を出迎えたのは、ジョウロだった。
それも、スプリンクラーのような勢いで水を撒き散らしながら。
　ジョウロ自体はとっさに剣で弾き返したものの、顔や髪はぐっしょり濡れてしまう。
「なんだこりゃ？」
　顔を拭う蒼留人に、ふさふさの大きな尻尾の獣人――チェス・ブルームが、顔だけ振り向けながら、慌ただしげな様子で言う。
「お客様、申し訳ありません！　グレムリンが出ていて――えいっ！」
　チェスが振りかぶったバケツをかわし、小さな妖精のような生き物が窓枠にぶらさがる。
チェスを見下ろして笑うその姿は、いかにもいたずら好きな妖精といった印象だ。
「あいつらの仕業か。俺も手伝うぜ！」
　せっかくだ。フツウも気にしなくていいようだし、思いっきりやってやる。

◆
「あ、リリエルー！！」
　sweep∽sleepへと向かう道すがら、メリィ・ランページは親友のリリエル・エーテライトの姿を見かけ、ぶんぶんと手を振った。
「メリィちゃん、こんにちはー！」
　手を振りかえし、パタパタと駆けよるリリエル。
「メリィちゃんも魔道具店に用事ですか？　私はフライパンを修理に出してたのを、受け取りにいくところで」
「うん、あたしも爪を直してもらっててね」
　それから、とメリィは丸っこいトラのぬいぐるみを抱える。

「このぬいぐるみも直してもらえないか、聞いてみよーって思って！」
「わぁ、かわいいぬいぐるみですね！」
「でしょ！　でもこの辺がちょっとほつれちゃってさー」
　そんなやりとりに花を咲かせつつ、二人はsweep∽sleepの扉を開く。
「こんにちはー！！！」
「こんにちはー、頼んでたフライパンの修理できてますかー？」
　そんな二人の目に飛び込んできたのは、暴れまわる魔道具に、バケツと布を手に追いかけるチェス、それから剣を手にグレムリンを追い回す蒼留人の姿だった。

「はわわ！　魔道具が暴れまわってます！」
　しかも暴れている魔道具の中には――
「あ！　私のフライパンも暴れてる！」
「ああーーー！！！　あたしの大事な爪がぁーー！！」
「メリィちゃんの魔道具もですか！？」
　――二人の大事な愛用品も混ざっていた。
　フライパンは炎をまとい、爪はひゅんひゅん高速で飛びまわっている。
　愛用品のそんな有様に、愕然とする二人。
　蒼留人が追い込んだ箒を何本かとっつかまえながら、チェスが二人にかくかくしかじか。
　事情を聞いたメリィは、怒りに震えた様子で「がおー！」とばかりに両腕を振り上げる。
「許さ～～ん！！　やっちゃうよ、リリエルー！！」
「グレムリン退治やっちゃいましょう！　がんばリリエルです！」
リリエルも、白手袋に魔風の光を輝かせて頷いた。

その間に、また一人店内へと顔を覗かせた。
　ティオレ・ユリウェイスだ。

「騒々しいと思ったら……どういうこと？」
店内の様相に、微かに眉をひそめるティオレ。そんな彼女目がけ、いきなり飛んでくる星の金槌。
無造作に振り下ろされる一撃をかわし、ダガーの柄で殴りつけて追い払う。
　どこからか、悔しそうな声。視線を走らせれば、グレムリンが一匹、地団駄を踏んでいた。
「そういうことね。手伝うわ」
　後ろ手に扉を閉め、ティオレは両手にダガーを構えなおす。

「これなら大丈夫でしょう」
　なんだかんだと人の増えた店内を見渡し、ノエル・バレがつぶやいた。
「皆さん、後ろは気にせずに居て下さいね」
　チェスたちに呼びかけながら、ノエル自身は少し奥へと下がっていく。
　全体を見渡しながら、いざという時のフォローにまわるつもりのようだ。

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