今年も！　雪中お年玉＆お年賀争奪戦！｜リアクション

今年も！　雪中お年玉＆お年賀争奪戦！

￥巨大雪だるま　

　走り出したMaliceの視界の端にさゆるが映り、心臓がドクンと鳴った。
　Maliceは、二度と会うことのない最愛の人に執着するさゆるに横恋慕しているのだ。
「さゆる」
　さゆるは、背後から聞こえた揶揄うような声に反応した。
　さゆるにとって今一番会いたくない女だった。
　Maliceと名乗る倫理子の顔に浮かぶのは、相変らず悪意に彩られた癇性な──妖艶な微笑。
　振り返った退廃的で年齢不相応な美貌のさゆるは、疎まし気にMaliceを見る。
「あら、さゆる。あなたも参加するの？」
「……」
「そのビキニ似合うわよ」
「……」
「つれないのね。……ねえ、一緒にお宝探しましょ」
「……」
　無言のままさゆるは巨大雪だるまへ向かい、Maliceはその後を追った。

「さー、俺も張り切って挑戦だー！」
　簾は迷わず巨大な雪だるまへ向かった。
　正面から行くのかと思いきや、裏側へ回る。
（まぁ……ちっとズルってか、作戦だけど）
　簾はまずシャベルで手を突っ込めるくらいの穴を掘った。
　そして水着の中から8mm径のレンチを取り出す。
　シャベル以外の道具を使うのもルール違反ではないが、見つかったらお宝が減らされてしまうので人目を避けている。
　穴の中に両手を入れてレンチをはさみ。
（一瞬だけろっこん発動だ！　雪を内側から押し広げて、だいぶ脆くなるんじゃねーか！？）
　ろっこん『Titan's Toolbox』を発動、レンチを大きくした。
（よし、穴が大きく……）
　ザクッ！
　その穴から、シャベルの先が出てきた！
「わっ」
　反対側から突っ込まれたさゆるのシャベルだった。
　さゆるは、徹底して無感動無表情に、シャベル片手に巨大雪だるまをザクザクと破壊している。
　破壊。
　そうとしか言いようのない壊しっぷりだ。
　その隣では倫理子が、ケラケラ笑いながら雪像を破壊する。
　対照的な美女二人が雪像を破壊する様は、いろんな意味で圧巻だったりする。
「びっくりした……」
　簾は毒気を抜かれた様子で二人を見ていたが、慌ててレンチをもとの大きさに戻した。
（レンチは雪の隙間に隠しとこう……いや、この調子じゃ崩れてどこに行ったかわからなくなるな）
　無理なら服の隙間に……と思ったが。
「って水着しか着てねぇんだった！　冷てえ！！！！」
　雪の中で冷えたレンチを水着に戻した簾は、肌に直接当たる冷たさに悲鳴をあげた。
　──それでもさゆるは、感情というものが存在しないかのような振る舞いで雪像を破壊し続けるのだった。
「やった、お宝発見！」
　Maliceはお宝を見つけ、大はしゃぎする。
『食べるべし』と札がついたビニール袋に入った団子を掘り出す。
　だがさゆるはお宝を見つけても無感動のままだった。
「せっかくだから食べましょうよ」
　Maliceは団子を一つさゆるに差し出す。
「……」
　無言で食べるさゆるは、やはり無表情のままだ。
「それじゃ、私も」　
　団子を口に入れたMaliceだが、一口噛んで表情を変えた。
「辛い！　何これ、わさび？」
　たまらず吐き出すMalice。
「ちょっと、あんたのはわさび入ってなかったの？！」
　詰め寄るも、相変わらず無表情のさゆるである。

「お、何かあったぞ」
　簾も雪の中から大きなお宝を掘り出した。
「肉だ！」
　雪を落とすと、ビニールに包まれたおいしい牛肉１キロが現れた。
「猫鳴館のみんなで食べられるな」