今年も！　雪中お年玉＆お年賀争奪戦！｜リアクション

今年も！　雪中お年玉＆お年賀争奪戦！

　雪の街を歩いていた朝鳥さゆるは、いきなり猫鳴館のＯＢと称する者たちににつかまった。
「キミ、寝子高生だよね？　雪中お宝争奪戦に参加してよ」
　有無をいわさず──というより、気怠くて断る気にもなれず、そのまま連れていかれた。
「さあ、好きな水着を選んでよ。キミなら着こなせるよ」
　そう言われて差し出された水着から、適当に選んで着用した。
　ＯＢが持ってきたのは派手で大人びすぎており、並の女子高生には全く似合わぬ代物だが、23、4歳にしか見えない年齢不相応なさゆるの美貌のおかげで、違和感は全くない。

　葉利沢倫理子は、猫鳴館のＯＢにいきなり声をかけられた。
「ねえ君、雪中お宝争奪戦に出てよ。あ、拒否権はないよ、強制参加」
「強制参加？　冗談じゃない。なんでこのクソ寒いなか水着になんなきゃならないの？」
　倫理子の中身は、全ての他者に対して容赦なく嘲笑し純粋な悪意を持って対するMaliceに乗っ取られているのだが。
　外見は控えめで気が弱そうにしか見えず、図々しいＯＢはまったくひるむことがなかった。
「確か君、去年も出てくれたよね。今更恥ずかしがらなくてもいいじゃん」
　結局参加する羽目になってしまった。
「去年は白ビキニだったよね？　今年はどれにする？」
「そんなの着るくらいなら自分のを使うわ」
と着替えてみたが。
（とはいえ、これも結構露出度高めだ……）
　寒い中、露出度高めのビキニなので、肌を刺す寒さに思わずその美貌を顰める。
　そして背後からの視線にも、怒りと共に寒気を感じて、内心で口汚く猫鳴館OBの面々を罵った。
（──このスケベ野郎ども。どうせニタニタしながらいやらしい目で眺めまわしてんだろ。バレバレなんだよ。あんまりジロジロ見んな！）

　星ヶ丘寮在住の嘉渡洲稀跡は、争奪戦に参加する気はなかった。
「真冬の屋外開催なのに水着必須な仕様は疑念だけど、皆が良い物得られるというなら……」
　しかし風紀委員の動きが耳に入ると、黙って見てはいられないと感じた。
（風紀委員……没収する気なの？　お年玉お年賀没収されたら何の為の催しなのかしら）
　稀跡は変装することにした。
　寝子高制服姿の稀跡は、寝子高制服の上着（ジャケット）を脱いで肩に羽織り、袖を首元で括ってマント代わりにした。
　そして画用紙を切って糊貼りして何か作り始めた。
（舞踏会につけるようなイメージのドミノマスク……）
　を作ろうとした稀跡だったが、できたのは幼稚園などで作るような、紙を筒状にしたものに仮面を貼り付けた代物だった。
　稀跡の名誉のために言っておくと、美術は得意なはずだが……そんなものを作ったことはなかったし、時間がなかったせいもある。
　こうしてできあがった即席の仮面を付けて行動することにする。
「風紀委員は足止めするわ」

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