今年も！　雪中お年玉＆お年賀争奪戦！｜リアクション

今年も！　雪中お年玉＆お年賀争奪戦！

￥争奪戦、スタート！

　雪が積もった寝子高のグラウンドの真ん中にどどーんとそびえるのは高さ５メートルの巨大な雪だるま。
　グラウンドの隅っこには高さ３メートルの大きな猫の雪像。
　３匹のサンマさん像は、高さ８メートルもあり。
　その近くにある高さ３メートルほどのマンボウくん像は、正面から見ると薄っぺら。
「うわあ、よくできてるなあ」
　今年も前向きでピュアなこころの寝子島観光大使、浜マンボウくんが遊びに来て、嬉しそうに自分の雪像を眺めている。
　そしてかまくらと、グラウンドのあちこちにある小さめの雪だるま──とはいえ、高さ２メートルある。　

　期待に満ちた眼差しで後輩たちを見守る猫鳴館ＯＢたち。
「先生の水着見つけたら教えてね」
　去年に引き続き水着が行方不明のまゆ先生は、温かい飲み物を手に言う。

「まう……猫鳴館のイベントなら、参加したい。まうも、猫鳴館の一員……だから……お年玉＆お年賀争奪戦、頑張る」
　いつの間にか猫鳴館に居ついていた穂現まうは、積極的な参加の意思を見せたが。
「何で、真冬に、布の少ない水着を……くしゅん！」
　布の多い水着だとお年賀が減らされてしまうと聞いて、まうの好みではない露出のある水着を着用した。
　胸ぺったんで、あまり視線は集めていないが、胸の大きさは気にしていない。
「寒い。かじかむ。体がこわばる……！」
　震えながらもまうは決意する。
「早く雪像を壊して沢山お年賀見つけよう」

　水着を着て雪の中へ踏み出した紗月は、あまりに寒いのでがくがくふるえてしまった。
　臆病で顔見知りが激しく、人前で水着になるのは恥ずかしくてたまらない彼女だが。
（いまは人に見られることよりも肌を突き刺すような寒さがつらい……これから受験なのに風邪ひいたらどうしよう）
「大丈夫、紗月？」
　見るからに寒そうにしている紗月を見かね、そっと理緒が紗月の手を取る。
（それに引き換え、理緒ちゃんはこんな寒い中でも堂々としてるのだからさすがというか……）
　心配させまいと頷いて見せた紗月に、理緒は元気づけるように言った。
「ここは短期決戦でざっくりと攻めていこう」
「うん」
　紗月は、理緒の手を握って微笑んでみせた。

「水着は……まー普通のしかねーからな」
　ボクサータイプの水着を履いた簾は、内心ちょっと困っていた。
（ていうか今年は女子多いな、やべーやべー。どこ見とけばいいんだ。雪だるまに集中するしかねーか）
　健康そのもので、女子の扱いは苦手な簾であった。　
「……あっ、みんな風邪引いたら意味ないから気をつけような！？　もこもこもないってやつ？」
「……もこもこ？」
　簾の発言に、まうは首を傾げる。

　水着姿の参加者たちシャベルを手に集まり、いよいよ開始と言うときに。
　動き出したのは風紀委員たち。
「雪の中そんな破廉恥な姿で恥ずかしくないのですか！　このような不健康なイベントは、今すぐ中止しなさい！」
　笛吹ぴりりが声を上げる。
　その時。
「ハッハッハッハッ！」
　高笑いとともに、風紀委員達の前に立ちはだかる者がいた。
「だ、誰？」
　仮面をつけ上着をマント代わりにした彼女に、ぴりりは問いかける。
「私は……賑やか大好き仮面！」
　賑やか大好き仮面は、巨大な雪だるまの上によじ登り、風紀委員の注意を引きつける。
「このイベントは学校の許可を得て行われている。風紀委員に止められる筋合いはない！」
　突っ込みを入れられ、風紀委員たちはたじろいでいる！

　その隙に、猫鳴館ＯＢが宣言した。
「これよりお年賀争奪戦を始める！　用意、スタート！」
　なぜかチェッカーフラッグ代わりに白い褌が振り下ろされ。
　参加者は一斉に駆け出した。

　