古今東西スーパーレキシ的ジンブツかるた大戦｜リアクション

古今東西スーパーレキシ的ジンブツかるた大戦

　校内放送のスイッチが入り、続けて司会の楡宮遠海のアナウンスが響き渡った。
「ただいまから、寝子島高校かるた大会を開始します。実況と解説を担当するのは、寝子高歌留多倶楽部のお二人です！」
　遠海の紹介で、武道場に設置された実況席にいる歌留多部前部長・八重崎五郎八と、新部長・大田原いいなに注目が集まる。全校の試合模様はリアルタイムに実況席に中継され、実況音声も校内に流れるのだ。
歌留多倶楽部が公認の部活になって初めて、さらに新部長になって初めてのかるた大会。そして、五郎八にとって高校最後のかるた大会。二人は自然、熱が入る。とはいえ、歌留多倶楽部としては前年と同じく、選手としての参加は控えて運営に回った。
　二人の扮装は、「これぞ百人一首！」といえる歴史人物コンビだ。五郎八は「紫式部」に扮し、王道の十二単姿。ストレートの黒髪が衣装にマッチしている。

　一方、いいなは紫式部のライバル「清少納言」をイメージした格好だ。ただし、ゲームのキャラ風にアレンジした、和風ミニスカといういで立ちである。
　五郎八をコスプレに誘ったのはいいなの方だ。それに対して、五郎八は「古典派対新進気鋭の対決って感じにすれば面白いんじゃない？」と提案した。
（……そんなことを言われてしまったら、応じるしかなかろう）
こういうわけで、こんな対照的な仮装になったのだ。
「百人一首で対決なら、これしかないでしょ。ね、いいなちゃん」
「私たちのやることは去年と同じですが、勝負が楽しみですね、五郎八部長！」
　いいなの返答に、ものすごく違和感を覚える五郎八。普段の一人称は「儂」なのに……
「……いいなちゃん、今日は口調が変じゃない？」
「あらヤダ五郎八部長。衣装に合わせてるだけですよう」
　なるほど、キャラになりきる気なのか……と五郎八は了解した。お茶目なところもある五郎八は、すぐになりきりモードに入る。
「さあて……いいなちゃ、もとい清少納言。準備はいいかな？」

「試合開始の前に、ルール説明を兼ねて歌留多倶楽部のお二人に試合をしてもらいます。歌留多倶楽部前部長の八重崎五郎八さんと、新部長の大田原いいなさんによるエキシビションマッチでもあります」
　司会の説明を聞いて、待機中の選手や観客たちがどよめいた。この試合は二人の強い希望で実現した。大田原新部長のお披露目でもあり、八重崎前部長の集大成でもある。
　試合前、お互い軽口をたたきながらも、その眼は真剣だ。
「望むところです、五郎八せ……じゃなかった、紫式部さん？　私もますちゃんとタッグを組んでいろいろ勉強してきましたから」
「ふふふ……次期部長として、この私を乗り越えていってくださいな――なんてね」
　畳の上で一礼して、札を並べ始めると二人は口を利かなくなる。
（『ますちゃん』ことどっかの誰かさんには、決まり字アプリ作ってもらったりしてお世話になったのう……。って、感傷的になってる場合じゃない、気合入れないと）
いいなは感傷を振りほどき、集中力を高める。