古今東西スーパーレキシ的ジンブツかるた大戦｜リアクション

古今東西スーパーレキシ的ジンブツかるた大戦

「第二ラウンドのほうがましだな……手すりとか、摑まる場所あるし。頑張るぞぃ！」
　鋼鉄の鎧をまとっている志波武道は、さっきより余裕のある表情をしている。もっとも、早く動けない分グラウンドに近い南校舎付近を探すことにした。
「正解以外の札を見つけたら、場所を覚えて……と」
「ブドー、何か見つかったか？」
　トルコ式の軍服を翻し、桐野正也がそばにやってきた。三人は、それぞれが見つけた札の情報を、合間合間に共有することにしている。第二ラウンドも終盤に差し掛かり、この戦略はじわじわと効いてきた。
「うん、中庭のベンチに『紅葉のにしき　神のまにまに』って札があったよ。『まにまにっ』。覚えやすいでしょ？」
「なるほどな。俺もさっき収穫があったよ」
　そうこうしているうちに、続く歌が読み上げられる。

　このたびは　ぬさも取りあへず　手向山
　紅葉のにしき　神のまにまに

「俺にまかせろ！」
　身軽さにアドバンテージのある正也が、教わったばかりの隠し場所に急いだ。彼の恰好は一見走りづらそうだが――
「ところがどっこい、意外とスムーズなんだぜ！　ちょっと空気抵抗があるくらいだ」
　さらには、ゆったりした袖が風にはためくのも様になっていて、観客の目をひきつける。騎乗して走る姿なんて格好いいだろうな――などと思ったりもする。
「よっしゃ、確保！」
　正也は、ベンチの下にあった札を、高々と掲げた。

　読まれた歌は、まもなく百首に達しようとしていた。いよいよ最後――校内の緊張感は嫌でも高まる。

　百敷や　古き軒端の　しのぶにも
　なほあまりある　昔なりけり

「む……この札は、きりのんの言っていたあそこに……！」
　武道は、鎧の重さも忘れて動き出した。確かその場所は、南校舎の片隅の、植え込みの下――
「間に……合った……」
　すべてを出し切った武道は、最後の札をがっちりとつかみながら倒れこんだ――