古今東西スーパーレキシ的ジンブツかるた大戦｜リアクション

古今東西スーパーレキシ的ジンブツかるた大戦

「学校中探し回るなんて、想像もしてなかったな……」
　海賊の衣装に身を包んだ森篠琳子が周囲を見渡した。彼女のチームがいるのは、理科の特別教室などがある北校舎の二階だ。
「宝探しといえば海賊！　気合を入れて探すのだ！」
　大橋尚先生は相変わらずノリノリだ。同じチームを組む野々ののこもついてきている。
「そうね。大逆転の方法もないし、注意深く探すのが一番ね」
　そういいながら、琳子は理科室に足を踏み入れた。ごちゃごちゃと色々なものがある教室なら、札を隠しやすいかもしれない。

　八重むぐら　茂れる宿の　寂しきに
　人こそ見えね　秋は来にけり

　校内放送が流す歌に、全員で耳をすませる。琳子たちは、実験器具の棚などを、根気よく確認してまわった。
　――がっしゃーん！
　派手な音がして、琳子は後ろを振り返った。
「あちゃ～……やっちゃった」
　ののこが、人体模型の骸骨に引っかかって倒してしまったのだ。
「大丈夫、怪我はない？」
「うん、ごめん……」
　世話焼きの琳子は、駆け寄って模型を元に戻すのを手伝った。その時、ふと琳子の手が止まる。
「……これよね」
　人体模型の頭蓋骨の下の部分に、札が隠してあった。

　おほけなく　うき世の民に　おほふかな
　わが立つそまに　墨染の袖

　高梨煉は、古代ローマの軍装のまま校舎内を歩き回っている。
「校舎内に札があるのか……ほぼ運任せになりそうだな」
「万国騎士」チームは、それぞれ探す場所を手分けする作戦である。煉は教室を一つずつ見回る担当だ。
「机の中にでもあるかな。範囲も広いし、体力は温存しておくか。ほかの札が見つかったら、二人にも教えればいい」
　体力を消耗しないため、焦らずゆっくりと一つ一つの教室を確認する。ほかの選手たちも苦心しているらしく、なかなか見つかったことが告げられない。やがて、ヒントが放送される……
「この歌の『おほふかな』の部分がヒントです」
「なんだそりゃ？」
　首をかしげながらも、煉は考える。つまりは「覆い」のある場所に隠してあるんだろう。あとは直感に頼るだけだ。
「覆いのある場所……あそこか！」
　煉は、最初に頭に浮かんだ「覆いのある場所」に急いだ。北校舎三階の音楽室のピアノは、使わないときカバーがかけられている。
　煉がカバーをめくると、果たして一枚の札がぽとりと落ちてきた。