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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
COLORFUL CHRONICLE
●ふわふわ、翼、空も飛べるはず
繋いだままの手がいままでよりもっと大切なもののように思われて、ワタシは恋人の手の温かさを味わう。
センパイは声を見つけたんだ。
――『これを身につけて学校に通って欲しい』。
きっとセンパイは、あの声を忘れたことなんてなかっただろうと思う。
――ワタシは？
ワタシには、どんな声が聞こえるんだろう。
風船をいくつか弾いてみる。
恩センパイとの想い出もある。もっと昔の思い出もある。
「あっ、懐かしいノ！」
寝子島に来る前の、パーパと世界を巡っていたころの記憶が、風船の中に浮かび上がる。
パーパは義父で、日本人だった。職業はバックパック系の絵本翻訳家。ひとところにいるのは性に合わなかったのか、パーパはイタリアを拠点にワタシを連れてあちこち巡った。地中海も、ヨーロッパも、アジアも。そんな具合に旅が多かったし、ワタシの身寄りはパーパだけだったから、当然の帰結としてワタシは誰よりパーパに懐いた。パーパのことが嫌いになる日なんかきっと来ないだろうと思っているし、今でも何かあるとパーパに手紙を書いてしまう。
色とりどりの風船の中に、そんな懐かしいパーパとの旅の日々を眺めながら、センパイといっしょに歩いていたけれど、ふと、一つの風船の前で足が止まった。
それはイタリアの空みたいに明るい水色の風船だった。
風船の中に、四歳くらいのワタシがいる。
パーパが背中から大仰に袋を取り出して、ワタシにプレゼントを渡している。
ワタシは袋の中から出てきた背負う鞄に歓声を上げる。
「これ、覚えてるノ！ パーパのお仕事のおみやげに買ってもらったノ！」
エスニックな民芸品風の雰囲気の鞄で、四歳のワタシが背負うのにぴったりのサイズ。
飾りにカラフルな羽根が沢山付いていて翼みたいでとってもカワイイものだった。
風船の中のワタシは、嬉しそうにそれを背負って、パーパの前でくるっと回って見せている。
「きゃあ！ セレッソちゃん、可愛い……！」
恩センパイが目をハートにしてちっちゃいワタシに魅入っている。
ワタシもなんだか懐かしくなってきて、思い出話に花が咲く。
「この鞄、もらった時とても嬉しくて、毎日背負ってるうちにこれで空を飛べるんじゃないかって思って」
「うんうん」
恩センパイは興味深そうにうなずいて先を促す。
「それでネ、ある日家の二階のテラスからぴょーん！ って飛んじゃったノ！」
「ええっ！ それで、どうなったの！？」
「庭木に上手く着地して、大丈夫だったワ！ でもあのときばっかりは流石のパーパも目を丸くしてネ！」
――『びっくりしたなー、セレシータが飛べたら何処までも』
風船の中から若いパーパの仰天した声。
はっとして見ると、庭木に引っかかって恰好悪く足をばたつかせるワタシの姿が映っている。
「きゃー！ 恩センパイ見ちゃ駄目ナノ！！」
「ふふ。セレッソちゃんの思い出はわかるわぁ……空を飛べちゃうって思うわよね。可愛らしいけど、怪我をしなくて本当に良かったわ……！」
飛んでみたのはもうずっと前のこと。今のワタシは無事なのに、恩センパイはまるで今しがた起こったことに安堵したっていうように、ぎゅっとワタシを抱きしめてくる。
「大丈夫ナノ！ 流石にワタシも今は飛べるとは思ってないノ！」
「ふふ、思っていても構わないけれど。いつだって受け止めるつもりだから」
そう言って身体を離した恩センパイが素敵すぎて、今度はワタシの方からぎゅっと抱き着く。
「飛ぶ時は飛行機を使うしセンパイの隣は徒歩で大丈夫ナノ！」
センパイの胸の中で目を閉じて温かさを感じる。
その手ごたえはそのまま――。
「――あら？」
「戻った、ノ？」
ワタシたちは抱き合ったまま、学校の屋上にいた。
他に誰もいないのは幸いだった。
照れ臭くなってどちらからともなく離れる。
「あ」
恩センパイが空を見上げた。
つられて見上げる。
「あっ……」
幸せな気持ちになって息を飲む。
雲が切れ、夕日が覗く反対側の空には見事な虹が架かっている。
その虹の方向。
白と水色の風船が手をつなぐように、ふわ、と昇ってゆくところだった。
＜了＞
繋いだままの手がいままでよりもっと大切なもののように思われて、ワタシは恋人の手の温かさを味わう。
センパイは声を見つけたんだ。
――『これを身につけて学校に通って欲しい』。
きっとセンパイは、あの声を忘れたことなんてなかっただろうと思う。
――ワタシは？
ワタシには、どんな声が聞こえるんだろう。
風船をいくつか弾いてみる。
恩センパイとの想い出もある。もっと昔の思い出もある。
「あっ、懐かしいノ！」
寝子島に来る前の、パーパと世界を巡っていたころの記憶が、風船の中に浮かび上がる。
パーパは義父で、日本人だった。職業はバックパック系の絵本翻訳家。ひとところにいるのは性に合わなかったのか、パーパはイタリアを拠点にワタシを連れてあちこち巡った。地中海も、ヨーロッパも、アジアも。そんな具合に旅が多かったし、ワタシの身寄りはパーパだけだったから、当然の帰結としてワタシは誰よりパーパに懐いた。パーパのことが嫌いになる日なんかきっと来ないだろうと思っているし、今でも何かあるとパーパに手紙を書いてしまう。
色とりどりの風船の中に、そんな懐かしいパーパとの旅の日々を眺めながら、センパイといっしょに歩いていたけれど、ふと、一つの風船の前で足が止まった。
それはイタリアの空みたいに明るい水色の風船だった。
風船の中に、四歳くらいのワタシがいる。
パーパが背中から大仰に袋を取り出して、ワタシにプレゼントを渡している。
ワタシは袋の中から出てきた背負う鞄に歓声を上げる。
「これ、覚えてるノ！ パーパのお仕事のおみやげに買ってもらったノ！」
エスニックな民芸品風の雰囲気の鞄で、四歳のワタシが背負うのにぴったりのサイズ。
飾りにカラフルな羽根が沢山付いていて翼みたいでとってもカワイイものだった。
風船の中のワタシは、嬉しそうにそれを背負って、パーパの前でくるっと回って見せている。
「きゃあ！ セレッソちゃん、可愛い……！」
恩センパイが目をハートにしてちっちゃいワタシに魅入っている。
ワタシもなんだか懐かしくなってきて、思い出話に花が咲く。
「この鞄、もらった時とても嬉しくて、毎日背負ってるうちにこれで空を飛べるんじゃないかって思って」
「うんうん」
恩センパイは興味深そうにうなずいて先を促す。
「それでネ、ある日家の二階のテラスからぴょーん！ って飛んじゃったノ！」
「ええっ！ それで、どうなったの！？」
「庭木に上手く着地して、大丈夫だったワ！ でもあのときばっかりは流石のパーパも目を丸くしてネ！」
――『びっくりしたなー、セレシータが飛べたら何処までも』
風船の中から若いパーパの仰天した声。
はっとして見ると、庭木に引っかかって恰好悪く足をばたつかせるワタシの姿が映っている。
「きゃー！ 恩センパイ見ちゃ駄目ナノ！！」
「ふふ。セレッソちゃんの思い出はわかるわぁ……空を飛べちゃうって思うわよね。可愛らしいけど、怪我をしなくて本当に良かったわ……！」
飛んでみたのはもうずっと前のこと。今のワタシは無事なのに、恩センパイはまるで今しがた起こったことに安堵したっていうように、ぎゅっとワタシを抱きしめてくる。
「大丈夫ナノ！ 流石にワタシも今は飛べるとは思ってないノ！」
「ふふ、思っていても構わないけれど。いつだって受け止めるつもりだから」
そう言って身体を離した恩センパイが素敵すぎて、今度はワタシの方からぎゅっと抱き着く。
センパイの胸の中で目を閉じて温かさを感じる。
その手ごたえはそのまま――。
「――あら？」
「戻った、ノ？」
ワタシたちは抱き合ったまま、学校の屋上にいた。
他に誰もいないのは幸いだった。
照れ臭くなってどちらからともなく離れる。
「あ」
恩センパイが空を見上げた。
つられて見上げる。
「あっ……」
幸せな気持ちになって息を飲む。
雲が切れ、夕日が覗く反対側の空には見事な虹が架かっている。
その虹の方向。
白と水色の風船が手をつなぐように、ふわ、と昇ってゆくところだった。
あとがき
担当マスター：
笈地 行
ファンレターはマスターページから！
こんにちは。ゲームマスターを務めさせていただきました笈地です。
今回は御薗井 Ｅ セレッソさんのプレゼントシナリオということで
風船や想い出をテーマにしたシナリオをお届けいたしました。
みなさんの様々な過去をお伺い出来て、
嬉しかったのと同時に、
これは大切な記憶がいっぱいだぞ、と気が引き締まり、
いっしょうけんめい書かせていただきました。
今回は、思い出ということもあり一人称で書かせていただいています。
みなさんの心に寄り添ったシナリオになっていますように！
ではまた別のシナリオでお会いしましょう。笈地でした！
今回は御薗井 Ｅ セレッソさんのプレゼントシナリオということで
風船や想い出をテーマにしたシナリオをお届けいたしました。
みなさんの様々な過去をお伺い出来て、
嬉しかったのと同時に、
これは大切な記憶がいっぱいだぞ、と気が引き締まり、
いっしょうけんめい書かせていただきました。
今回は、思い出ということもあり一人称で書かせていただいています。
みなさんの心に寄り添ったシナリオになっていますように！
ではまた別のシナリオでお会いしましょう。笈地でした！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2020年07月09日
- 参加申し込みの期限
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- 2020年07月16日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2020年07月16日 11時00分
