雨は嘘を水に流さない｜リアクション

雨は嘘を水に流さない

　白いシーツの上には灰色の新聞が転がっている。
　記憶を取り戻す手がかりがあるかもしれないから、と看護師が置いて行った紙束を、包帯の巻かれた手で捲る。
　感情を失くした枯葉色の瞳が瞬く。
　傷だらけの上に記憶を失くして運び込まれた病院で数日を過ごして、けれど己については何一つ思い出せないまま。
(……でも)
　このままでもいいかもしれない、と思ってしまうのは何故だろう。
　ぱらり、見るともなしに新聞の記事を眺めていた瞳が僅かに揺らぐ。
　地方欄に小さく記されていたそれは、寝子島山中のとある川辺で発見された白骨死体について。
　十数年前に失踪して後、白骨となって発見されたアイドルの名に覚えはなかった。それなのに、赤い髪に赤いドレス姿の女の姿が脳裏を過って、瞬間、──さゆるは、すべてを取り戻した。
「……っ……」
　取り戻した何もかもに言葉もなく顔を覆うさゆるの手から、新聞が落ちる。

　『彼女』に何があったのか。
　死したはずの『彼女』が十数年の時を経て何故蘇り災いを為したのか。
　遺体が発見されて後、『赤い鬼』『ブラック・レディ』の噂は絶えた。
　──その事件が神魂の影響であるのか悪魔の業であるのかは、最早、知る由もない。

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あとがき

担当マスター：阿瀬春／ 39番地
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お待たせいたしました。
代筆を担当させていただきました阿瀬　春です。

39番地マスターさんの代わりが務められたとは到底思えないのですが、今回は阿瀬が書かせていただきました。
元はシリーズものを予定されておりましたが、ここで終了となります。ご了承ください。

お読みくださいましてありがとうございました。

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