雨は嘘を水に流さない｜リアクション

雨は嘘を水に流さない

「ブラック・レディ……」
　十六の歳よりも下に見られることの多い幼い瞳を難し気にしかめ、白真白は小さく呟く。
「オカルトは好きだけど、これは手ごわそうだね……」
　『赤い鬼』の噂が飛び交うインターネット上の掲示板を手元のスマートフォン画面に追いながら、響タルトも小さく唇を尖らせる。
「街で暴れてる紅い鬼、かぁ」
　どうにも普通じゃないみたいだし、と頷く真白が教室の机越しに手元のスマホを覗き込んで来て、タルトはポニーテールの黒髪を揺らして頷いた。
　陰鬱な雨の放課後、人気のない教室で偶然顔を合わせたふたりが話題にしたのは、寝子島を飛び交うオカルトな話題のひとつ。

「口裂け女みたいなものかな。分身作るとか強すぎだね」
　掲示板の情報を目で追っては硬くなってゆくタルトの表情を、真白は机に頬杖をついて眺めやる。
「弱点はないの？」
「ネットには上がってなさそうかな」
　同じ画面を身を寄せ合って見つめながら、タルトが呟き、真白が応じる。
「赤い色を見つければ警戒できるから、不意打ちの心配はないかな？」
「まずは街を探索して探すところからだね。よく見かける場所とかあるのかな？　あるいは一度出た所には出ないとか、そういうのがあったり？」
「……精神操作系の感じだよね……」
　噂話を検証しているうち、言葉を交わしているうち、互いの意志が固まって来るのを言外に感じ取り、女子高生ふたりは勇敢な笑みを交わし合った。
「……ここはひとつ解決に手を貸すことにしようかな」
　真白が白い髪を揺らして結論を口にすれば、
「……だね」
　タルトが黒髪のポニーテールを振って頷く。
　学校を出る前にそれぞれで準備を整える。校門前で待ち合わせ、ふたりは肩を並べて雨の街を歩き始めた。