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- 00月00日生 00歳
- AAA000000
キラキラチアリーディング！ 応援パレパレパレード♪
「その名にちなんで、ってわけじゃないけど……」
はにかんだ笑みを浮かべて、万条 幸次はあまり一般になじみのない弦楽器をつま弾き始める。
円形のボディに4つの弦の弦楽器「バンジョー」。
派手な衣装、凝った装飾でステージに上る演者も多い中、幸次はいつも通りの猫パーカーにジーンズ。
家からそのままふらりと訪れたという風情だ。
凝ったことはしない。
できるだけ自然体に。
あまり決めごとの好きではない幸次の、それだけは決めていたことだった。
せんだってのバンジョー披露では、あまり思ったような結果が出せなかった。
リラックスして臨もうと思っていたのだが、どこかでかっこつけていいところを見せてやろうという気負いもあったのかもしれない。
ダジャレみたい、と他人には照れて笑って弾いていたバンジョーだったが、結構身を入れて練習したりしていた。
独特のピックを使った奏法など、かなりてこずったが、それなりの技術は身についたと思う。
そうして気負って気負って、臨んだ寝子島講堂でのコンサート。
演目はずばり「クラシック」。
まばらな拍手、努力賞といったところがせいぜいだった。
マイペースで風の吹くまま生きる、が身上の幸次。
その日の気分を大切にする。普段はぼーっとして固まっているが、猫探しに出かけるとなるとどこまでも疲れを知らない。
それがペースを乱してしまった。
「……じゃ、弾くね……」
そう言って、頭をぐっと持ち上げようとして、気づく。
背中が妙にムズムズする。
観客席からクスクスと笑い声が聞こえる。
「……あ……」
思い当たった幸次、ステージの上で堂々とバンジョーを置き、背中に手を回す。
手ごたえあり。ぐっと引っ張り出す。
子猫がじっとこちらを見た。
「花遊、おまえフードに入っていたのか」
幸次の飼い猫、花遊。
家で寝ている隙に幸次のパーカーに入り込み、そのままやってきてしまったらしい。
観客席にどっと笑い声があふれた。
「予想はできていたけど……」
ＴＰＯをわきまえず、どこでも幸次のそばでまとわりついてくる花遊。
その小柄な体を生かし、幸次と遠くへ出かけることもしばし。
演奏の邪魔にならないようにステージ上に下ろし、さてとバンジョーを手に取ろうとすると。
するり。
幸次の頭の上に、花遊が這い登る。
そのままここがいいですよとばかり、鎮座する。
腹がよじれるほど笑う観客に、すまなそうに声をかける幸次。
――演奏の邪魔にならないようにしますんで、このままでいいですか。
そうしてバンジョーを構え、頭上の花遊をちらりと見る。
「頭に乗っていていいから、おとなしくしていてよ」
～♪
バンジョーの歴史は、アメリカのネイティブインディアンの一部族にさかのぼるといわれている。
弦を張って奏でる弦楽器は、世界各地にみられ、その種類もさまざまだ。
その中でもバンジョーは、独特なピックとそれを利用した奏法が独特である。
陽気で明るく、そしてどこか寂し気な音楽。
幸次は今回、皆が知っているＪ－ＰＯＰを題材に選んだ。
はやりの歌は、積極的に動画サイトであさったりしないたちの幸次だが、ふいに街角で聞いて、いいなと思う曲があった。
自分と縁遠いと思っているヒットチャートの曲でも、皆が感情を共有できる曲もあるものだ。
幸次の曲が流れるとともに、客席の子供たちから「知ってる―」という声が聞こえた。
――知っていたら、歌ってよ。
気安い言葉が、自然に出てきた。
以前とは全く違う、あたたかなムード。
バンジョーという楽器は、どんな曲でも、哀歓漂う、胸苦しい思いにさせる、不思議な調べがある。
苦難の歴史をたどった、アメリカの少数民族の悲しみの響きが、そこにあるからか。
夕暮れる寝子島。幸次のバンジョーの響きは、遠くグランドキャニオンの、荘厳な夕映えを人々に幻視させる。
海に没する太陽。
はるかに星々をたたえる空。
すっかり影となった島々。
悠久の昔と変わらぬ光景。
バンジョーの響きは、人々に孤独な愁いの思いを呼び覚ました。
最後の「ポロロン」というつま弾きとともに、あたたかな拍手が幸次に送られた。
超絶の芸術に送られる、というのではない。
リラックスした時間を共有できたという感謝の拍手。
「君にしか奏でられない曲だと思った」『低いド』の音の精、フレッドが『◎』のプラカードを出す。
「これからも、どこかでバンジョーを聞かせてくれ」
――お前のおかげかもしれないな。
バンジョーの演奏が終わってもくつろいでいる花遊を頭からおろして、幸次は客席に一礼したのだった。
はにかんだ笑みを浮かべて、万条 幸次はあまり一般になじみのない弦楽器をつま弾き始める。
円形のボディに4つの弦の弦楽器「バンジョー」。
派手な衣装、凝った装飾でステージに上る演者も多い中、幸次はいつも通りの猫パーカーにジーンズ。
家からそのままふらりと訪れたという風情だ。
凝ったことはしない。
できるだけ自然体に。
あまり決めごとの好きではない幸次の、それだけは決めていたことだった。
せんだってのバンジョー披露では、あまり思ったような結果が出せなかった。
リラックスして臨もうと思っていたのだが、どこかでかっこつけていいところを見せてやろうという気負いもあったのかもしれない。
ダジャレみたい、と他人には照れて笑って弾いていたバンジョーだったが、結構身を入れて練習したりしていた。
独特のピックを使った奏法など、かなりてこずったが、それなりの技術は身についたと思う。
そうして気負って気負って、臨んだ寝子島講堂でのコンサート。
演目はずばり「クラシック」。
まばらな拍手、努力賞といったところがせいぜいだった。
マイペースで風の吹くまま生きる、が身上の幸次。
その日の気分を大切にする。普段はぼーっとして固まっているが、猫探しに出かけるとなるとどこまでも疲れを知らない。
それがペースを乱してしまった。
「……じゃ、弾くね……」
そう言って、頭をぐっと持ち上げようとして、気づく。
背中が妙にムズムズする。
観客席からクスクスと笑い声が聞こえる。
「……あ……」
思い当たった幸次、ステージの上で堂々とバンジョーを置き、背中に手を回す。
手ごたえあり。ぐっと引っ張り出す。
子猫がじっとこちらを見た。
「花遊、おまえフードに入っていたのか」
幸次の飼い猫、花遊。
家で寝ている隙に幸次のパーカーに入り込み、そのままやってきてしまったらしい。
観客席にどっと笑い声があふれた。
「予想はできていたけど……」
ＴＰＯをわきまえず、どこでも幸次のそばでまとわりついてくる花遊。
その小柄な体を生かし、幸次と遠くへ出かけることもしばし。
演奏の邪魔にならないようにステージ上に下ろし、さてとバンジョーを手に取ろうとすると。
するり。
幸次の頭の上に、花遊が這い登る。
そのままここがいいですよとばかり、鎮座する。
腹がよじれるほど笑う観客に、すまなそうに声をかける幸次。
――演奏の邪魔にならないようにしますんで、このままでいいですか。
そうしてバンジョーを構え、頭上の花遊をちらりと見る。
「頭に乗っていていいから、おとなしくしていてよ」
～♪
バンジョーの歴史は、アメリカのネイティブインディアンの一部族にさかのぼるといわれている。
弦を張って奏でる弦楽器は、世界各地にみられ、その種類もさまざまだ。
その中でもバンジョーは、独特なピックとそれを利用した奏法が独特である。
陽気で明るく、そしてどこか寂し気な音楽。
幸次は今回、皆が知っているＪ－ＰＯＰを題材に選んだ。
はやりの歌は、積極的に動画サイトであさったりしないたちの幸次だが、ふいに街角で聞いて、いいなと思う曲があった。
自分と縁遠いと思っているヒットチャートの曲でも、皆が感情を共有できる曲もあるものだ。
幸次の曲が流れるとともに、客席の子供たちから「知ってる―」という声が聞こえた。
――知っていたら、歌ってよ。
気安い言葉が、自然に出てきた。
以前とは全く違う、あたたかなムード。
バンジョーという楽器は、どんな曲でも、哀歓漂う、胸苦しい思いにさせる、不思議な調べがある。
苦難の歴史をたどった、アメリカの少数民族の悲しみの響きが、そこにあるからか。
夕暮れる寝子島。幸次のバンジョーの響きは、遠くグランドキャニオンの、荘厳な夕映えを人々に幻視させる。
海に没する太陽。
はるかに星々をたたえる空。
すっかり影となった島々。
悠久の昔と変わらぬ光景。
バンジョーの響きは、人々に孤独な愁いの思いを呼び覚ました。
最後の「ポロロン」というつま弾きとともに、あたたかな拍手が幸次に送られた。
超絶の芸術に送られる、というのではない。
リラックスした時間を共有できたという感謝の拍手。
「君にしか奏でられない曲だと思った」『低いド』の音の精、フレッドが『◎』のプラカードを出す。
「これからも、どこかでバンジョーを聞かせてくれ」
――お前のおかげかもしれないな。
バンジョーの演奏が終わってもくつろいでいる花遊を頭からおろして、幸次は客席に一礼したのだった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2020年07月12日
- 参加申し込みの期限
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- 2020年07月19日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2020年07月19日 11時00分
