たのしいオンライン授業｜リアクション

たのしいオンライン授業

　恵御納夏朝はＰＣの前で深呼吸をした。これからオンライン授業が始まる。普通の授業と違って質問しづらいこともあるし、いっそう気合を入れてのぞまなければ。
　しかし、夏朝はそれとは別に心配事を抱えていた。
　それはというと。
　夏朝は視線を足元へ。
「にゃぁ～」
　呑気に欠伸をするレンズ猫、おはぎ。内緒で飼っているので、先生にバレるとあまりよろしくない。勉強していると必ず膝の上に来るので、気をつけなければ。
「よーし、がんばるぞ」
　受ける授業は国語で、担当は久保田美和先生だ。
　ソフトを開くと、目の前に久保田先生の顔が映った。
『はい、よろしくね』
　　久保田先生のＰＣは何人かの生徒の顔が同時に映っているはずなので、視線が合わない時もたまにある。と、その時。
「うひゃっ」
　いつもならあり得ない声をあげてしまい、久保田先生が夏朝に視線を合わせる。
『夏朝ちゃん、どうかした？』
「い、いえ」
　さっそくおはぎの洗礼だ。足元にふわもこの物体が。慌ててマイクをミュートにしてテキストチャットに切り替えた。
『じゃあ教科書の三十二ページ、一行目から私が読むから登場人物の心情をノートに書いてみて』
　久保田先生の音読が始まり、印象的なセリフを書き出していく。
「あれ？　この漢字の読み方って」
　質問をしてみることにした。チャットに書き込んでいく。
「んー、質問分かりにくいかな。うん、書き直そう」
　と、思ったのだが。
「わっ！？」
　膝の上にかなりの衝撃が。書き直し中のメッセージがそのまま送信されてしまった。
「あーっ」
　さらにおはぎがキーボードの上に飛び乗り、タイピングを始めた。
　かちゃかちゃかちゃ。
「危ないってー！」
　久保田先生の視線が向く前にカメラのスイッチを乱暴に切る。
「おはぎっ」
　両手で抱え上げて、膝の上へ。
『夏朝ちゃん？　カメラどうかした？』
　マイクのミュートを解除。
「大丈夫です！」
『そう？　話聞いてた？』
「えっと」
　さすがに聞いていなかった。
『突然男の子が冷たくなる心理について、です。ちゃんと聞きましょうね？』
「先生、漢字の質問して良いですか？」
　いつの間にか授業が脱線していたらしい。

このページにイラストを設定する