たのしいオンライン授業｜リアクション

たのしいオンライン授業

　宮祀智瑜はPCの前で深呼吸をした。これから桐島義弘先生のオンライン授業を受けるのだ。制服でなくても良いので、お気に入りのワンピース姿である。
　PCを起動すると、久々の桐島先生の顔が目の前に。
「あ」
　教室での授業よりかなり距離が近い。
『全員いるか？』
　桐島先生が参加生徒の顔をそれぞれ見回す。最後に智瑜と目が合った。
『ん？　宮祀、顔が赤いが大丈夫か？』
「は、はい。大丈夫です」
『そうか』
「よろしくお願いします！」
　お辞儀をすると、桐島先生が微妙に視線を上向けた。実は智瑜のワンピースの胸元が危うかったのだ。
『ん。服装は自由だが、気を引き締めて行けよ。では始めるぞ。教科書を開け』
　それから本格的な授業が始まった。
『この数式の使い方はこの前説明した通りだ。今回は応用問題を解いてもらう。質問はいくらでもOKだ』
　メールで配られたのは応用問題だった。テストではないので、教科書を見てもいいそうだ。
「ちょっと難しそうですね」
　そうは言ったものの、数式の使い方については桐島先生がかなり分かりやすく説明してくれていたので、ノートを見ればすんなり解けそうだ。
「先生、ここなんですけど」
　カメラにノートをさらす。
『なんだ、途中まで解けているな。ここの計算は難しくないぞ』
　いつもより丁寧に教えてくれた。オンライン授業のためか、いつにもまして説明が多い。
　やがて応用問題がメールで回収された。
「では次。三十分与えるから全部自力で解いてみろ」
　メールで送られてきた問題とにらめっこを始める。
「……これ、先生の説明を全部聞いていれば簡単ですね」
　特に桐島先生の授業は熱心に聞いて、復習もしているので。
「……終わりました。これで」
　顔を上げると、桐島先生がこちらを見ていた。
「！」
『終わったか？』
「はい、これで」
　ノートを見せると桐島先生は何度か頷いて、
『宮祀はきちんと授業を聞いてるな』
　さらりと誉められてしまった。他の生徒は苦戦しているらしい。
「冬休みに復習をしたので……そういえば、先生は何してたんですか？」
『ん？　私か？』
　テスト問題を作っていた、とか答えそうだ。そんなことを考えていると、
『こたつでみかんを食べながら』
「えっ」
『テスト問題を作っていた』
　その光景を思い浮かべると、なんだか微笑ましい。半分は正解だった。冬を満喫しているイメージはなかったので意外だ。
「おせち料理は食べるんですか？」
『ああ、買ってきたやつをな』
「うちはおせち料理を作るんです。おばあちゃんに教わるのが楽しくて。栗きんとんとか」
『栗きんとんか。宮祀の作った栗きんとんも食べてみたいな』
「えっ」
　桐島先生は、はっとした様子で、
『いや、変な意味はないぞ。生徒の趣味は気になるからな』
　桐島先生は何度か頷いて、
「時間だな。そろそろ答え合わせをするぞ」
　智瑜は密かに思った。
(嬉しいこと、聞いちゃいました)

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