たのしいオンライン授業｜リアクション

たのしいオンライン授業

　水上桜はタブレットを台にセットし、起動した。
　ここは桜花寮の自室。このタブレットのボイスチャット機能を使ってオンライン授業を受けるのだ。
　そんなわけで私服だったりする。
　タブレットを起動すると、美術担当の泉先生の顔が映った。
『さて、オンライン授業は初めてだが。材料は用意したか？』
　桜は手元へ視線を落とした。透き通ったペン先のようなガラスと金色の装飾、そして黒のベルト。アクセサリー用の接着剤。
　自分の得意とする分野で何かを創作してみるということで、桜はチョーカーを作ることに決めていた。
『まずは自分で作ってみろ。わからないことがあれば見るからな』
　透き通ったペン先のようなガラスに小さな金色の装飾をピンセットで一つずつつけていく。
「んー、どうしても曲がる……前どうしてたっけ。先生、この装飾のつけ方なんですけど」
『ん？　見せて見ろ』
　カメラに近づける。
『接着剤の量が多いな。細いノズルに変えて少しづつつけるんだ』
「確かに」
　助言通りにするとスムーズに作業が進んだ。
「よし」
　部活が忙しく、ひさしぶりだったがこういうことは体が覚えているらしい。
『なんだ、もう終わったのか？　水上』
「はい、後は乾かすだけです」
『中々の出来だな』
「ありがとうございます。そういえば先生、そのネクタイお洒落ですね」
　どこか観光地にありそうなタワーの絵柄だ。
『ニューヨークで買ったものだ』
「ニューヨーク？　仕事の関係で両親と弟がニューヨークにいて、今年の夏休みに行ったんですよ」
『良いところだろう？　少しごみごみしているが』
　泉先生は何かを思い出すように何度も頷いた。
『ファッションも独特だな。水上はニューヨークで服を買ったことがあるか？』
「一応あります」
　普段着としてはあまり着れない派手なものが多いが。
『着こなせればファッションセンスが良い。その私服も中々良い。水上は自分に合った服が分かるんだな』
　どうやら褒められたらしい。
　泉先生の経歴をしっていると……なんだか嬉しくなった。

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