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- 00月00日生 00歳
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コケッコー！ 新春☆初夢宝船フェア♪ ～鷹編～
背の翼を広げるには、その鳥籠は狭すぎた。
手を伸ばす。腕を伸ばしきらぬうち、冷たく黒い鋼の格子に触れる。
指先の温度を奪う鉄格子を両手で掴む。無骨な鋼が容赦なく指先に細かな傷をつけるのも構わず、力任せに揺すり立てる。そうしたところで己を捉えるものはなにひとつとして壊れないと知っていて、それでも、籠の鳥は籠の外を見据える。
外に何があるのかも知らなかった。知らないままに憧れた。
傷ついて朱く血の滲む指先を拳に握りこむ。冷たい鉄の床に膝を抱えてうずくまる。かじかんで紅い裸足には、飛び立つことすら許さぬ鉄枷が嵌められている。己の力だけでは決して砕けぬ鎖によっても、鳥籠に繋がれている。
鉄格子に翼をぶつけるのも構わず、翼を広げる。羽ばたこうともがいて、翼を格子に激しく打ち付ける。白い羽が散る。傷ついた白翼に紅い血が滲む。
結い上げた赤銅の髪と同じ色した睫毛を上げる。榛の瞳で鉄格子の外を眺めやる。
憧れは、唇から歌となって零れ出た。
高く高く、見果てぬ空へ届けと歌を紡ぐ。己の身体ぜんぶを楽器にして、音を奏でる。
歌えば、鳥籠に押し込められて冷たく塞いだ心がふわりとぬくもりを帯びた。かじかんだ指や爪先に熱が巡った。生きて行ける、そう思えた。生きて、生きて生きて、いつか必ず──
夢見るように願っていた心が不意に竦む。
こちらに近づいてくる足音がしている。聞き覚えのある足音。己に対する怒りに荒々しく速度を増すばかりの、あの男の足音。
何があるのかも分からないがゆえに、ただ白い光に満たされるばかりの外側から、ぬう、と腕が伸びてきた。無遠慮に服の襟を掴まれ、引きずり立たされる。
そこにあったのは、己の所有者である男の顔。
己を所有していると己に言い聞かせ続けてきた男は、鎖に繋いで鳥籠に押し込めてもなお外に出ようと暴れる己を不快感も露わに睨む。
──歌など
忌々し気に吐き捨てられた言葉に、低い声に、胸が本能的な恐怖に近く軋んだ。男の手によって心身共に刻み付けられた畏怖は、どれだけ肉体が成長しようとも消えない。
反射的に恭順を示して俯こうとしかけたとき、
──悠月
己の名を呼ぶ声を脳裏に聞いた。優しく強く、まるで歌をうたうかの如く囁かれる、己の名。
──Mio Destino
俺の運命。
息を吐くように、けれどどこまでも真摯に呼びかけてくるその声に、獅子目 悠月は悄然と伏せかけていた瞳をぐいと上げる。ともすればすぐに怖じて結んでしまいそうになる唇を薄く開く。
そうして、歌う。
最初、震えて微かだった声は、けれどすぐに晴れやかな旋律をなぞりはじめた。
(そう、──そうだ)
己の発する歌に勇気を得て、悠月は爪先に力を籠める。
立て。
背筋を伸ばせ。
俯くな。
前を見ろ。
そうして初めて、この歌は力を放つ。
高らかに歌う。誰にも負けぬ己だけの声で、何者にも屈さず信ずるべきものを信ずる歌を。
見据えた男の瞳が揺らいだ。揺らいだことすら許せぬように、男は頬に力を籠める。歌う声を遮り怒鳴ろうと開きかけた唇は、けれど薄く開いたまま力を失くした。
襟を掴んでいた男の手が緩んだ。
悠月は歌い続ける。歌はいつか、優しい子守歌となっていた。何もかもを赦し慰め、安らかな眠りに誘う歌に頬を撫でられて、男はけれど悠月から背を向ける。光の向こうへと消える。
男の背を静かに見送り、籠の鳥は決然と顔を上げた。
手を伸ばす。己を封じる鉄格子を掴む。
封印を解くための最強の呪文は、もちろん、彼の名。
愛しい彼の名を唇に上らせた途端、頬に柔らかな熱が昇った。唇に笑みが滲んだ。
瞬きひとつの間に、鉄の扉は消え去っていた。
鳥籠の外に出る。翼を思うさま大きく広げる。
籠の中に溜まっていた無数の白い羽が、祝福するように周囲に舞い踊った。
雪のように舞う羽の中、鎖に繋がれた足で地を踏む。
未だ囚われているのかもしれない、微かにそう思うも、
(構わない)
くすり、悠月は笑う。こんな鎖など、きっと砕いてみせよう。
祈るが如くその場に膝をつく。彼の名を口にすることでぬくもりを帯びた胸に手を当てる。光の色した空気を胸に満たす。光を想いの色で彩り歌とする。
光が胸に満ちているような、そんな気がした。
窓の向こうには払暁の白い光。夜の闇をも包み込む光を榛の瞳に映し、悠月は唇に笑みを刻む。
胸に満たした光を一刻も早く歌にしたくて起き上がる。
いちばんに歌を届けたいひとは、傍らで共に歌って欲しいひとは、言うまでもなく決まっている──
手を伸ばす。腕を伸ばしきらぬうち、冷たく黒い鋼の格子に触れる。
指先の温度を奪う鉄格子を両手で掴む。無骨な鋼が容赦なく指先に細かな傷をつけるのも構わず、力任せに揺すり立てる。そうしたところで己を捉えるものはなにひとつとして壊れないと知っていて、それでも、籠の鳥は籠の外を見据える。
外に何があるのかも知らなかった。知らないままに憧れた。
傷ついて朱く血の滲む指先を拳に握りこむ。冷たい鉄の床に膝を抱えてうずくまる。かじかんで紅い裸足には、飛び立つことすら許さぬ鉄枷が嵌められている。己の力だけでは決して砕けぬ鎖によっても、鳥籠に繋がれている。
鉄格子に翼をぶつけるのも構わず、翼を広げる。羽ばたこうともがいて、翼を格子に激しく打ち付ける。白い羽が散る。傷ついた白翼に紅い血が滲む。
結い上げた赤銅の髪と同じ色した睫毛を上げる。榛の瞳で鉄格子の外を眺めやる。
憧れは、唇から歌となって零れ出た。
高く高く、見果てぬ空へ届けと歌を紡ぐ。己の身体ぜんぶを楽器にして、音を奏でる。
歌えば、鳥籠に押し込められて冷たく塞いだ心がふわりとぬくもりを帯びた。かじかんだ指や爪先に熱が巡った。生きて行ける、そう思えた。生きて、生きて生きて、いつか必ず──
夢見るように願っていた心が不意に竦む。
こちらに近づいてくる足音がしている。聞き覚えのある足音。己に対する怒りに荒々しく速度を増すばかりの、あの男の足音。
何があるのかも分からないがゆえに、ただ白い光に満たされるばかりの外側から、ぬう、と腕が伸びてきた。無遠慮に服の襟を掴まれ、引きずり立たされる。
そこにあったのは、己の所有者である男の顔。
己を所有していると己に言い聞かせ続けてきた男は、鎖に繋いで鳥籠に押し込めてもなお外に出ようと暴れる己を不快感も露わに睨む。
──歌など
忌々し気に吐き捨てられた言葉に、低い声に、胸が本能的な恐怖に近く軋んだ。男の手によって心身共に刻み付けられた畏怖は、どれだけ肉体が成長しようとも消えない。
反射的に恭順を示して俯こうとしかけたとき、
──悠月
己の名を呼ぶ声を脳裏に聞いた。優しく強く、まるで歌をうたうかの如く囁かれる、己の名。
──Mio Destino
俺の運命。
息を吐くように、けれどどこまでも真摯に呼びかけてくるその声に、獅子目 悠月は悄然と伏せかけていた瞳をぐいと上げる。ともすればすぐに怖じて結んでしまいそうになる唇を薄く開く。
そうして、歌う。
最初、震えて微かだった声は、けれどすぐに晴れやかな旋律をなぞりはじめた。
(そう、──そうだ)
己の発する歌に勇気を得て、悠月は爪先に力を籠める。
立て。
背筋を伸ばせ。
俯くな。
前を見ろ。
そうして初めて、この歌は力を放つ。
高らかに歌う。誰にも負けぬ己だけの声で、何者にも屈さず信ずるべきものを信ずる歌を。
見据えた男の瞳が揺らいだ。揺らいだことすら許せぬように、男は頬に力を籠める。歌う声を遮り怒鳴ろうと開きかけた唇は、けれど薄く開いたまま力を失くした。
襟を掴んでいた男の手が緩んだ。
悠月は歌い続ける。歌はいつか、優しい子守歌となっていた。何もかもを赦し慰め、安らかな眠りに誘う歌に頬を撫でられて、男はけれど悠月から背を向ける。光の向こうへと消える。
男の背を静かに見送り、籠の鳥は決然と顔を上げた。
手を伸ばす。己を封じる鉄格子を掴む。
封印を解くための最強の呪文は、もちろん、彼の名。
愛しい彼の名を唇に上らせた途端、頬に柔らかな熱が昇った。唇に笑みが滲んだ。
瞬きひとつの間に、鉄の扉は消え去っていた。
鳥籠の外に出る。翼を思うさま大きく広げる。
籠の中に溜まっていた無数の白い羽が、祝福するように周囲に舞い踊った。
雪のように舞う羽の中、鎖に繋がれた足で地を踏む。
未だ囚われているのかもしれない、微かにそう思うも、
(構わない)
くすり、悠月は笑う。こんな鎖など、きっと砕いてみせよう。
祈るが如くその場に膝をつく。彼の名を口にすることでぬくもりを帯びた胸に手を当てる。光の色した空気を胸に満たす。光を想いの色で彩り歌とする。
光が胸に満ちているような、そんな気がした。
窓の向こうには払暁の白い光。夜の闇をも包み込む光を榛の瞳に映し、悠月は唇に笑みを刻む。
胸に満たした光を一刻も早く歌にしたくて起き上がる。
いちばんに歌を届けたいひとは、傍らで共に歌って欲しいひとは、言うまでもなく決まっている──
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2020年05月22日
- 参加申し込みの期限
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- 2020年05月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2020年05月29日 11時00分
