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コケッコー！ 新春☆初夢宝船フェア♪ ～鷹編～
遥かに遠く、地平線が見える。
どこまでも緩やかに弧を描いて大地と空を確かに分かつ、線。
地平を白く輝かせているのは目も眩むほどに眩しく、けれどひどく淡く柔らかな純白の光。彼方まで翡翠の色して広がる草原を、粉雪のように粉砂糖のように優しく彩る白の誘われ、一歩を踏み出す。
ふわり、足元に軽やかに広がるフリルに、鮮やかな蜜柑色したスカートの色に、ぱちりと瞬く。
ここは、と呟きかけた唇が知らず綻んだ。
(……今までに)
何度その言葉を口にしただろう。そうして何度、己を包む不思議の世界を見回しただろう。
どこまでも広がる草原と、見上げる果ての果てまで続く紺碧の天穹。夜空よりも明るいその癖、太陽の浮かばぬ蒼い空には、雪の色した雲がふわふわと浮かんでいる。
空と大地を照らし出しているのは、虹よりたくさんの色を湛えて瞬く数え切れぬ星々。
見知らぬ大地の只中にひとり立ち尽くして、それでも、恵御納 夏朝は栗色の瞳をしっかりと開く。
たとえ見たことのない場所だとしても。
たとえ見渡す限りに自分以外のひとの姿が見えなくても。
(ここは、寝子島だもの)
きっぱりと自分に言い聞かせる。肩から提げていた猫のアップリケつきの鞄の中から、いつも持ち歩いている橙色の布製猫パペット『ハルくん』を取り出して左手にはめる。
「いつも一緒、にゃ」
時々、神魂の影響で喋りだしたりひとと似た姿を取ったりしたこともある『ハルくん』の口調で言ってみれば、広い世界に一人きりだと知らず竦んで動けなくなっていた足を再び踏み出すことができた。
「……うん、だから、……大丈夫」
ともかくも、歩く。寂しくなれば左手の『ハルくん』に笑いかけて、早緑の色した柔らかな草の上を一歩一歩進んでゆく。
「ひとりじゃないよ」
さくさく、さく。草を踏む自分の靴の音に混ざり、しゃらん、と鈴の音に似て涼やかな音が聞こえた。音を追って空を仰いで、
「流れ星……！」
栗色の瞳に捉えたのは、紺碧の空をひとすじ渡る金色の光。しゃらしゃらと不思議に軽やかな音を振りまき、金色の星がひとつ、大地に降り立つ。
草原の真ん中に降った流れ星のもと、夏朝は駆け寄った。
蛍火の如き光を乱舞させ、光る星はふわふわとゆらゆらと、ひとのかたちを取り始める。小柄な少女の姿に。自分とよく似た、けれど違う意志を宿した瞳の女の子に。
「夏夜ちゃん……？」
流れ星がかたちを変えて現れた、自分の中に在るはずのもうひとりの女の子の姿に、夏朝はそっと呼びかける。
夏朝と同じかたちした栗色の瞳が、まっすぐに夏朝を映す。
「やあ、夏朝」
流星の音と同じに静かに軽やかに、夏夜は笑んだ。
紺碧の星空の下、ふたりの少女は肩を並べて歩く。
ふたりでなら、どこまででも歩いて行ける気がした。ふたりで、どこまでだって歩いて行きたかった。
「一緒だね、夏夜ちゃん」
「うん、一緒だよ、夏朝」
歩幅も同じに歩いて行くふたりの足が同時に止まる。
「夏夜ちゃん」
「猫、かな？」
ふたり揃って周囲を見回し耳を済ませ、ふたり揃って同じ方向へ足を早める。ずっとずっと広がる草原の一角、にゃあにゃあみゃうみゃあ、何匹もの猫の声がしている。
駆けるふたりの足元、星屑の色してふしぎな光が夜露のように跳ねる。
「あっ……」
「居た」
にゃあ、と草の間から三毛猫が顔を出した。白猫に黒猫、虎猫に銀猫、たくさんの猫に塗れて、草原の真ん中に大の字で寝転がっていたのは、
「あっ、やっほー、夏朝ちゃん夏夜ちゃん！」
星のように明るい黄色の衣服を纏った野々 ののこ。
通学路の途中でばったり出会ったかのようになんでもない調子でひらひらと手を振って起き上がるののこに、ふたりは顔を見合わせ瞬いて、それからふたり一緒に笑いかける。
「こんにちは、ののこちゃん」
「今日は、ののこ君」
何匹かの猫がしがみついているのも構わず立ち上がるののこの肩や背中から猫を抱き取りながら、夏朝は空の歌う声を聞いた。
しゃらしゃらと、きらきらと、空を流れる星たちが奏でる音楽につられ、空を仰ぐ。
「わあっ、見て見て、おほしさま！」
ののこが歓声を上げて空を示す。夏夜が声もなく感嘆の息を吐く。
満天の星空を、いくつもいくつも、色とりどりの星々が光の尾を引き透明な音楽を奏でては流れてゆく。地上に降っては無数の光に砕け、さまざまの色が混ざり合っては輝かしい純白の光となってゆく──
星々の優しい光に包まれてゆきながら、夢のような夢から覚めてゆきながら、夏朝は隣に立つ夏夜の体温を確かに感じていた。星の光を宿らせてきらきらと輝く瞳を確かに見た。
またねと笑う、その瞳を。
どこまでも緩やかに弧を描いて大地と空を確かに分かつ、線。
地平を白く輝かせているのは目も眩むほどに眩しく、けれどひどく淡く柔らかな純白の光。彼方まで翡翠の色して広がる草原を、粉雪のように粉砂糖のように優しく彩る白の誘われ、一歩を踏み出す。
ふわり、足元に軽やかに広がるフリルに、鮮やかな蜜柑色したスカートの色に、ぱちりと瞬く。
ここは、と呟きかけた唇が知らず綻んだ。
(……今までに)
何度その言葉を口にしただろう。そうして何度、己を包む不思議の世界を見回しただろう。
どこまでも広がる草原と、見上げる果ての果てまで続く紺碧の天穹。夜空よりも明るいその癖、太陽の浮かばぬ蒼い空には、雪の色した雲がふわふわと浮かんでいる。
空と大地を照らし出しているのは、虹よりたくさんの色を湛えて瞬く数え切れぬ星々。
見知らぬ大地の只中にひとり立ち尽くして、それでも、恵御納 夏朝は栗色の瞳をしっかりと開く。
たとえ見たことのない場所だとしても。
たとえ見渡す限りに自分以外のひとの姿が見えなくても。
(ここは、寝子島だもの)
きっぱりと自分に言い聞かせる。肩から提げていた猫のアップリケつきの鞄の中から、いつも持ち歩いている橙色の布製猫パペット『ハルくん』を取り出して左手にはめる。
「いつも一緒、にゃ」
時々、神魂の影響で喋りだしたりひとと似た姿を取ったりしたこともある『ハルくん』の口調で言ってみれば、広い世界に一人きりだと知らず竦んで動けなくなっていた足を再び踏み出すことができた。
「……うん、だから、……大丈夫」
ともかくも、歩く。寂しくなれば左手の『ハルくん』に笑いかけて、早緑の色した柔らかな草の上を一歩一歩進んでゆく。
「ひとりじゃないよ」
さくさく、さく。草を踏む自分の靴の音に混ざり、しゃらん、と鈴の音に似て涼やかな音が聞こえた。音を追って空を仰いで、
「流れ星……！」
栗色の瞳に捉えたのは、紺碧の空をひとすじ渡る金色の光。しゃらしゃらと不思議に軽やかな音を振りまき、金色の星がひとつ、大地に降り立つ。
草原の真ん中に降った流れ星のもと、夏朝は駆け寄った。
蛍火の如き光を乱舞させ、光る星はふわふわとゆらゆらと、ひとのかたちを取り始める。小柄な少女の姿に。自分とよく似た、けれど違う意志を宿した瞳の女の子に。
「夏夜ちゃん……？」
流れ星がかたちを変えて現れた、自分の中に在るはずのもうひとりの女の子の姿に、夏朝はそっと呼びかける。
夏朝と同じかたちした栗色の瞳が、まっすぐに夏朝を映す。
「やあ、夏朝」
流星の音と同じに静かに軽やかに、夏夜は笑んだ。
紺碧の星空の下、ふたりの少女は肩を並べて歩く。
ふたりでなら、どこまででも歩いて行ける気がした。ふたりで、どこまでだって歩いて行きたかった。
「一緒だね、夏夜ちゃん」
「うん、一緒だよ、夏朝」
歩幅も同じに歩いて行くふたりの足が同時に止まる。
「夏夜ちゃん」
「猫、かな？」
ふたり揃って周囲を見回し耳を済ませ、ふたり揃って同じ方向へ足を早める。ずっとずっと広がる草原の一角、にゃあにゃあみゃうみゃあ、何匹もの猫の声がしている。
駆けるふたりの足元、星屑の色してふしぎな光が夜露のように跳ねる。
「あっ……」
「居た」
にゃあ、と草の間から三毛猫が顔を出した。白猫に黒猫、虎猫に銀猫、たくさんの猫に塗れて、草原の真ん中に大の字で寝転がっていたのは、
「あっ、やっほー、夏朝ちゃん夏夜ちゃん！」
星のように明るい黄色の衣服を纏った野々 ののこ。
通学路の途中でばったり出会ったかのようになんでもない調子でひらひらと手を振って起き上がるののこに、ふたりは顔を見合わせ瞬いて、それからふたり一緒に笑いかける。
「こんにちは、ののこちゃん」
「今日は、ののこ君」
何匹かの猫がしがみついているのも構わず立ち上がるののこの肩や背中から猫を抱き取りながら、夏朝は空の歌う声を聞いた。
しゃらしゃらと、きらきらと、空を流れる星たちが奏でる音楽につられ、空を仰ぐ。
「わあっ、見て見て、おほしさま！」
ののこが歓声を上げて空を示す。夏夜が声もなく感嘆の息を吐く。
満天の星空を、いくつもいくつも、色とりどりの星々が光の尾を引き透明な音楽を奏でては流れてゆく。地上に降っては無数の光に砕け、さまざまの色が混ざり合っては輝かしい純白の光となってゆく──
星々の優しい光に包まれてゆきながら、夢のような夢から覚めてゆきながら、夏朝は隣に立つ夏夜の体温を確かに感じていた。星の光を宿らせてきらきらと輝く瞳を確かに見た。
またねと笑う、その瞳を。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2020年05月22日
- 参加申し込みの期限
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- 2020年05月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2020年05月29日 11時00分
