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寝子島高校
日日是寝子島
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クリスマスが過ぎた途端、赤と緑と金色、ツリーとオーナメントだらけだった町はお節料理にしめ縄に門松な正月ムードに席捲された。
シーサイドタウンも例外ではない。
ちょっと前までは右を見ても左を見てもツリーとサンタクロースとトナカイ、クリスマスケーキとチキンに溢れていたというのに、今はもうどこを見てもクリスマスのクの字も見当たらない。あるのは師走。大掃除に大晦日。クリスマスの浮ついた雰囲気とも違う、どこか忙しない雰囲気に町中が包まれている。
初売りセールの宣伝に賑わう寝子島シーサイドタウン駅を過ぎ、駅近くのカフェに入る。そこはクリスマスだろうが正月だろうがそう大きく雰囲気を変えない、古色蒼然とした──カフェ、というよりも喫茶店。
カラン、と鳴るベルの音と共、コーヒーの香りと軽食の匂いが鼻に触れて、
滝原 レオン
は翡翠の色した鋭い眼を小さく瞬かせた。
昼下がりになっても上がらぬ気温に冷え切った頬を片手でこすり、北風に乱れた銀髪を片手に撫でて適当に整える。
いらっしゃい、とカウンターの向こうから聞こえた店員の声に小さく頭を下げ、外の道が見える窓際の席に腰を下ろす。店内の温かさに小さく頬を緩め、コートを脱ぐ。慣れた手つきで手早く畳んで隣に置く。
水を運んできたエプロン姿の店員に待ち合わせをしていることを告げ、相手が来てから注文してもいいか問う。
ではお連れさまが来られてから伺いますね、と笑う店員に、レオンはその目つきの悪さと派手な銀髪のせいでともすれば不良に見られがちな容貌にそぐわぬ丁寧さで頭を下げた。
「ありがとう」
カウンターから流れてくる淹れたてのコーヒーの香りを嗅ぎながら、窓の外に流れる北風の音に紛れそうなほどに微かなラジオの音を聞くともなしに聞く。
カラン、と鳴るベルの音に顔を上げ、入ってきた人間の顔を目隠し替わりの観葉植物の影からそっと確かめてすぐに視線を逸らす。テーブルに置かれたメニューを見るふりをする。
ポケットに両手を入れ、ソファの背もたれに背中を預けて窓の外を眺める。行き交う人々の中に待ち合わせの相手を探す。
(ヤスのやつ)
鋭い眼つきの割りにどこか繊細そうな唇がちらりと不満げに歪んだ。
(遅いな)
セピア色に古びた壁の柱時計を眺めやる。約束した時間はとうに過ぎている。
もう一度窓の外に視線を投げる。師走の昼下がりの駅前を行き交う人々をしばらく眺めて後、ポケットから携帯電話を引っ張り出す。待ち合わせ相手に電話でもかけてみようかと操作しかけたとき、窓が外から軽く叩かれた。
顔を向けてみれば、そこには伸びた亜麻色の髪を大雑把に束ねた一見少年にも見える少女がひらひらと手を振っている。
「ヤス」
口を開きかけるレオンにニカリと笑い、待ち合わせ相手である宮部安奈は軽い足取りで店内に入ってきた。
「よお、元気してたか!」
「おせーよ」
「相変わらずのぶすくれた面だなー!」
幼馴染である安奈の、遅れても悪びれもしない態度はいつものことと言えばいつものこと。
「何してたんだ?」
「電車に乗り遅れた」
あっけらかんと笑う幼馴染に、レオンはため息を吐く。とは言え、本土の木天蓼市からわざわざ会いに来てくれた友人。
「まあいいや、座れよ」
「おう」
向かいの席に座った安奈は、店内の温かさに安堵したようにまた笑った。
(変わらないな)
昔から──レオンが祖母に引き取られるかたちで寝子島に来て、元はこの島に住んでいた安奈と出会った頃から、安奈は何かにつけてよく笑った。
中学進学と同時に家庭の事情で引っ越して、けれどそれ以降も手紙でのやり取りを続けていた頃も、文字の上でも安奈は賑やかだった。一年ほど前に木天蓼市に再び引っ越して来た折に再会した時も、それから時折会うようになった今も、安奈はよく笑う。
「なんか頼むか?」
「温かいものが飲みたい」
「外、寒かったな」
「うん、寒かった」
レオンが差し出したメニューを受け取り、安奈は楽しそうに笑んだ。
「ついでに腹が減った」
言った直後にぐうう、と安奈の腹が鳴る。思わず自分で自分に噴き出す彼女に、レオンもつられて笑った。
「すみません」
店員を呼び、注文する。レオンは紅茶とケーキ、安奈はコーヒーとサンドイッチ。
品物を待つ間、思い出したように安奈は上着を脱ぐ。ソファに掛け直し、外を眺めるレオンの視線を追うように窓の外を眺めやる。
しばらく、そうして何の会話もなく同じ方向を見る。話題を探すでもなく、ただただふたりでのんびりと過ごす。
沈黙が苦痛にならぬ幼馴染とのこの空気感が、レオンは好きだった。
「で、どうよ」
不意に話を振られる唐突さも、気安い関係ならでは。
「どう、っつーか」
供されたドーム型の苺のケーキのてっぺんに飾られた砂糖菓子の花の可愛らしさにうっかり一瞬目を輝かせてしまってから、レオンは紅茶をひと含み。ふわり、口いっぱいに広がるアールグレイの甘い香りに口元を緩める。
「なんつーか、……聞いてくれよ」
「うん、聞いてやるから話せ話せ」
パンから卵のフィリングが零れそうなくらい詰め込まれたサンドイッチに豪快にかぶりつきながら、安奈は楽し気に先を促す。
「この前のクリスマスのことなんだけど」
「お、なんだ、とうとうカノジョでもできたか」
「ちげーよ、それどころじゃなかったっつの」
ぶんむくれた顔でレオンが話すのはついこの前のクリスマスの話。
イルミネーションでキラキラ輝き、クリスマスに浮かれる賑やかな町を、ストーカーに追いかけまわされて難渋しまくった話。
「あれか、また例の格好してたのか」
「……まあな」
レオンの女装趣味を知る数少ない人物であるからこそ語れる話ではある。
話の途中からくすくすと笑い始めていた安奈は、話が終わる頃にはソファの上で腹を抱えて笑い転げていた。
「笑い事じゃねえって!」
「い、いやでも、……ぶは、無理、あははは!」
息継ぎも忘れてヒィヒィと息切れしつつ、それでもまだまだ大笑いし続ける安奈を軽く睨み、レオンはケーキを頬張る。生クリームと苺とスポンジの繊細な甘さとふわっふわした触感にちらりと笑みかけて必死で表情を難しく繕う。
「こっちは必死だったんだからな!」
「ふは、ふふ、……悪い悪い」
笑みを噛み殺し笑いすぎて出た涙を拭い、安奈は身体を起こした。息を整え、コーヒーをゆっくりすする。
「いや、楽しそうで何より」
「楽しくない」
「そうか?」
「そうだ」
楽しくなんかなかったぞとむくれた顔をしようとして、ほんの少しだけ口元が和らいでいることに思い至った。紅茶を口にして誤魔化す。
(本当に大変だったんだからな!)
楽しいのは、こうして安奈に話せているからだ。話を聞いて、大笑いに笑い飛ばしてもらえているからだ。
(あー、やっぱお前と話してると落ち着くわ……)
それは言葉にせぬまま、レオンは安奈を見やる。
「んで、お前の方は最近どうなんだよ?」
聞いてもらってばかりも悪かろうと水を向ける。
安奈は素行不良者が多いと噂の木天蓼工業高校に通っている。
ともすれば往来での派手な喧嘩にいわゆるカツアゲ、他校の生徒への暴力行為に盗んだバイクでの暴走に、悪い噂の絶えない高校に幼馴染が通っていると知ったときは、心配で胃が痛くなった。
「まさかマタ工でなんか嫌なことされてねえだろうな?」
「んなわけないだろ」
安奈に苦笑され一蹴され、それでもレオンは心配で堪らない。
「ケンカ売られたり買ったりしてねえか」
「まあ、ケンカ売ってくるやつもいるけど」
「なっ……」
「あ、コラ落ち着け立ち上がるな一緒に殴りに行こうとするな」
どうどう、と水を手渡され、レオンは荒くなった鼻息のままコップの水を一気飲みした。
「大体みんな仲良くしてくれてる」
「本当か」
「心配いらない」
鋭い瞳をますます尖らせるレオンに、安奈はカラカラと笑う。屈託のない明るい笑顔に、レオンはひとまず安堵する。
「……そっか」
「そうだって」
「ならいいんだけど」
荒くなった息を整え、ソファに身を沈みこませる。
サンドイッチに添えられたパセリまで美味そうにもぐもぐする安奈の横顔を眺める。何をしていても楽しそうな、幼馴染。
ほんの少し前まで、自分の姿かたちに無頓着で物事に囚われないカラリとした性格のせいでうっかり男だと思い込んでいた彼女に、レオンは返しきれない恩を感じている。
レオンは母親に捨てられ寝子島に来た。
捨てられた自分を引き取ってくれた祖母は優しかったけれど、それでも、母に捨てられたという現実は幼いレオンを打ちのめした。
それに加えて、誰かも分からぬ父親譲りの銀髪、母親からの虐待で傷だらけになった身体。周囲の奇異の目も、少年をふさぎこませるのには充分過ぎた。
──なあ! なあなあ、外行こーぜ! 外! いー天気!
部屋に閉じこもって毛布にくるまって丸くなっていたところに、ある日ズカズカと上がり込んできた挙句、遠慮会釈なく毛布を剥ぎ取ったのが、安奈だった。
どうせ祖母に頼まれたのだろうと毛布を取り返して再び丸くなっても、
──オレのことはヤスって呼んでくれよな!
毛布を半分剥ぎ取るついでに潜り込んできた。そうして太陽のように笑った。何度拒否しても何度でも部屋にやってきた。声を掛けてきた。笑いかけてきてくれた。手を取って、外に連れ出してくれた。銀髪も傷だらけの身体も気にせず接してくれた。仲良くしてくれた。
「なんだよ、ぶすくれてないで笑えー?」
「元からこんな面だ」
安奈は、いつだって笑う。笑ってくれる。
彼女にはいつだって明るく笑っていて欲しかった。元気でいて欲しかった。いつも笑顔でみんなに優しい、昔の『ヤス』のままでいて欲しかった。
(……俺の勝手な願いだけどな)
そうと知っていて、それでも願ってしまう。
話し込んだり、笑いあったり、黙って互いに好きなことをしたり。そうするうちに気づけば明るかった外はいつのまにか茜の色に染まり始めている。
「っと、そろそろ帰る」
「ああ、そうだな」
安奈が壁の柱時計を見て言ったのを機に、会計を済ませて外に出る。吹き寄せる冷たい風の中、ふたりはいつものように笑いあう。
「じゃ、またな」
「うん、またな」
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
なんでもない冬の日のいちにち、お届けにあがりました。
冬景色な寝子島、いかがでしたでしょうか。
なんにも起きないほんとに普通な日常も、みなさまの手にかかればなんとも素敵な一日に変身しちゃいますねえ。すてきです。
お話、聞かせてくださいまして、書かせてくださいましてありがとうございました! とても楽しく書かせていただきました。
少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。
ご参加くださいまして、お読みくださいましてありがとうございました。
またいつか、お会いできましたらうれしいです。
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担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2020年05月07日
参加申し込みの期限
2020年05月14日 11時00分
アクション投稿の期限
2020年05月14日 11時00分
参加キャラクター一覧
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