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寝子島シーサイドタウン駅で下車する。
通勤ラッシュの時間帯を少し過ぎて、平日の朝まだ早い駅の構内に行き交う人々はそれでも少なくはない。
分厚いコートに身を包み、それぞれが向かうべき場所へそれぞれに急ぐ人々の間を、
志鷹 佑都
は勤務先である病院の廊下よりもよほど緩やかな足取りですり抜けて行く。
周囲の人々の声も構内に響く案内の音声も、何もかも寄せ付けぬような空気をその玲瓏とした横顔に張り付かせ、駅を出る。
薄青の空の下に踏み出した途端、ほんのわずか潮の香を含む北風が押し寄せた。
コートの中に留めていた体温さえ攫ってゆく風に、新緑の双眸が揺らぐ。澄んだ冬空に初めて気づいたかのように、白い額が空を仰ぐ。
──疲れているのね
くちづけも交わさぬままに身体を重ね一夜を過ごした女性の囁きが耳朶に蘇って、白い息が唇から零れた。何のかたちにもなれずに風に消し飛ばされる己の吐息を目で追う。
馴染みのバーで身体に流し込んだ強い酒の熱も、時折夜を共にしては躰の内に溜まった熱を吐き出させてもらう女性の体温も、冬の朝の澄んだ風にすべて奪われてしまった。
雪の気配を運んでくる冷たく湿った風をコートの裾に絡ませ、一歩を踏み出す。
残っているのは、帰路を辿ることさえ億劫に感じてしまうほどの疲弊。
それでも家に帰ろうと歩を進めるのは、同じマンションの一室で暮らす双子の姉が心配するからだ。
(ああ、でも)
何日か前に確認した姉のシフトを思い出す。己と同じに寝子島総合病院で、こちらは小児科医として働いている姉の勤務時間は、救急医である己と同じに不規則だ。
手袋に包んでいても冷たい指先をコートのポケットに入れる。
ポケットに入れていた携帯電話に指先が触れた。携帯電話につけたストラップの鈴が微かに鳴る。
ストラップのねこのあみぐるみに触れる。元患者であった少女がくれたそれに、祈りを添えるように姉がつけてくれた四葉のクローバーの飾りにも触れる。
(今日は当直だっけ)
昨日の夕方から病院に詰めている姉を思う。誰の容態の急変もない、穏やかな夜であってくれればと願うものの、願いが叶ったことはほとんどない。
疲れて帰って来るだろう姉のためにも、きちんと家に帰って家事を済ませておいてやりたい。
──ただいま
疲れているはずなのに、いつだって明るい声で帰宅を告げる姉の笑顔を思い出せば、重い足取りも少しは速くなった。
「……」
ただいま、と。
空っぽの部屋に姉のように言ってみようとして、出来なかった。
乾いた喉から出てきたのは、北風にも似た吐息ばかり。
玄関に靴を揃え、静まり返るばかりの部屋に入る。鞄とコートをいつもの場所に仕舞い、腕まくり。自室のベッドに倒れこんでしまいたい気持ちを押しのけ、まずはキッチンとリビングと自室、それからトイレの掃除。
合間に洗濯機も回し、風呂場も洗って換気しておく。
(置いて行っていいのに)
出掛けに食事を済ませ、律儀に食器の後片付けもきちんとして行く姉の几帳面さにちらりと笑って、笑えることに何故だか安堵する。
家事を一通り済ませて時計を見れば昼時で、ともかく何か口にしようと冷蔵庫を開けてみると、ラップに包んだ皿が見易いところに置かれていた。
『温めて食べてね』
小さな子供に対するような手書きの猫のイラスト入りの姉からのメッセージに思わず苦笑いする。彼女はいつだって『お姉ちゃん』で、きっといつまでだって『お姉ちゃん』なのだろう。
おにぎりが三個乗った皿と、その隣に大きめの椀いっぱいの具沢山スープ。ありがたくいただくことにして、冷蔵庫から出す。言いつけ通りにレンジで温め、食卓に並べる。
いただきます、と両手を合わせて口にした温かなおにぎりとスープは、気づかぬうちに空っぽになっていた胃にひどくしみた。
食べ終えた皿を洗って片付け、濃いめに淹れたコーヒーのマグカップを手に自室に入る。窓辺の机に置くのはマグカップとノートパソコン、それからここ数か月に渡り仕事の合間に揃えては読み込んだ資料の束。
椅子に掛け、熱いコーヒーを一口すする。
パソコンを立ち上げる。頭に叩き込んだ参考文献と手元の資料を睨めっこしながら、論文の執筆に取り掛かる。
一度集中してしまえば、執筆の手が止まるのは資料の確認をするときくらい。コーヒーが覚めてゆくのも構わず、資料を整理し、論理を組み立て、文章を書きあげて行く。
乾いた喉にコーヒーを流し込んで、その冷たさに驚いたときには書き始めから数時間が経っていた。
瞼を閉ざせば、疲れた目と首筋がじりりと痛んだ。
脳までが凝り固まっているような気がして、一度大きく伸びをしたところで、集中が切れていることに思い至った。
深く息を吐く。書き上げた個所までを記録し、パソコンを閉じる。ふらりと立ち上がり、ベッドに身体を横たえる。そのまま、沼に沈むように眠ってしまえるはずだった。
閉ざした瞼の裏に、空の青が見えた。
身体も心も疲れ果てているのに、眠って堪るものかとばかり、頭の中の歯車が軋みながら回り続けている。
重たい瞼を持ち上げる。何も見たくないと思うのに、瞳は窓の外の冬空を写し取っている。
雪の気配を湛えた暗灰色の雲の隙間から見える蒼はひどく澄んで、ひどく眩しかった。虚ろなまでにぼんやりとした瞳が自然と細まってしまうほどに。
光に眩む目を擦って起き上がる。眠れないのであれば論文作成の続きをしようと机を見やって、ふわり、淡い碧の光を見た気がした。それは、机の端に置いていた携帯電話のストラップ。ねこのあみぐるみをストラップに仕立ててくれた姉が小さな鈴と一緒につけてくれた四葉のクローバーの飾り。
携帯電話を手に取る。画面に光を灯し、時間を確認する。
(……ああ)
時間と共に表示された日付に、佑都は瞬いた。今日は、父の誕生日だった。
古武術師範として道場を開いている父の、穏やかで優しい笑みを思い出す。
大人になって思い知った。父は、己には及びもつかぬほどに思慮深く懐の深い人格者だった。
それはたぶん、幼い頃に事故で両親と片目の視力を喪ったことと、絶望の淵に沈んでいた長い時間を幼馴染であった母が寄り添い続けたことに関係があるのだろうと佑都は思う。
父の掌を思い出す。無骨で温かくて優しい、父のてのひら。
──父さんが今笑えるのは、母さんとお前たちのお陰だ
そう言って、頭を撫でてくれた遠い思い出。
(……この島に来てから一度も帰省できていない)
帰省できない旨を伝える度、命と向き合う尊い仕事なのだから、と父はそう言ってくれはするけれど。
明日の大晦日も正月も仕事が入っている。
携帯電話を手にしたついで、実家に電話を掛けることにする。番号を表示し、呼び出しボタンに触れる。コール音が何度か響いて後、
『はい、志鷹です』
耳に届いたのは、父の柔らかな声だった。
「父さん?」
『佑都か』
「誕生日おめでとう。お酒届いた?」
『ああ、ありがとう』
父の声は心から嬉しそうで、だから佑都はくすぐったいような感覚を覚える。
誕生日の贈り物は無事届いたこと。
父も母も、実家の猫たちも健康に過ごしていること。
皆の変わりがないことに安心してから、
「こっちも変わりなく過ごしているよ」
こちらの近況も伝える。姉とのこと、病院の環境のこと、今己が暮らしている島のこと。他愛のない会話を交わしてから、正月の帰省も仕事で叶わぬことも知らせる。
『そうか……母さんが残念がるだろうが、人の命に関わる大事な仕事だ』
身体に気を付けてな、とどこまでも穏やかに続ける父の言葉に頷き、ありがとうと続けて、そうして佑都はほんのわずか言葉を途切れさせる。
「……あのさ、父さん」
その想いを抱き始めてから、いつかは両親に告げなくてはならないと思っていた。
『うん』
父の声はいつも通りに柔らかくて、だから佑都は告げる勇気をもらう。
父はいつでも、こちらの話にきちんと耳を傾けてくれた。こちらの想いを汲み取ろうと心を砕いてくれた。
そんな父だからこそ。
「専門医の資格を取得したら地元の病院で働きたいって言ったけど……」
『うん』
「俺、この島で生きるよ」
だからこそ、そう決意することができた。
大切なひとたちと出逢うことができたこの島で、もっと様々な経験を積みたい。知識を蓄え、そうして、──両親に、いつか立派になった自分を見てもらいたい。
『……そうか』
父の応えはただ一言で、けれどその一言は優しかった。
電話口の父の声に、ふと、封じていた言葉が頭に浮かんだ。
(……『結婚』)
生涯にただひとりと決めた恋人を病に奪われたきり、己の一生には最早必要あるまいと黒く塗り潰した言葉。両親が待っているはずの、息子からの吉報。
「……うん」
『どうした?』
知らず沈んだ声音に、己よりも父が先に気づいてくれた。優しい父を心配させまいと慌てて笑って見せる。
「なんでもないよ」
そう言ったのに、こちらの気丈は父に容易く気取られたらしい。
『……父さんも若い頃はたくさん悩んだよ』
何でもないように語る父の人生を、佑都は知っている。少なくとも、知っているつもりでいる。
『生きてさえいれば光は見えてくる』
だから父の言葉が父の真実であると感じることができる。
『佑都』
「うん」
『お前は父さんと母さんの子だ』
「うん」
父と母が己を誇りに思ってくれているように、己もまた父と母を誇りに思っている。それをどう伝えればいいのだろう。
父は電話の向こうで心強く笑った。
『大丈夫。何も心配するな』
「……うん」
『休める時にしっかり休んで、心と体、支えてくれる人達を大切にな』
優しく諭してくれる父の言葉に、瞼を閉ざす。うん、と子供のように頷いて応じれば、ちりん、とストラップの鈴が柔らかく笑った。
「父さんと母さんも身体を大切に。また電話するよ」
閉ざした瞼の裏には『支えてくれる人達』の笑顔が見えている。
もちろん、そこには父と母の笑顔も──
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阿瀬春
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ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2020年05月07日
参加申し込みの期限
2020年05月14日 11時00分
アクション投稿の期限
2020年05月14日 11時00分
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