妖精のカフェ｜リアクション

妖精のカフェ

●お代はお話で

　美味しい？　と聞いているように飛び回る妖精に、神野美野梨「美味しいわ、ありがとう」と微笑んだ。
　それを聞いた妖精は、美野梨の周りを飛び回る。
「ケーキも美味しいねぇ」
　一口食べた彦生名瑠の表情が緩む。
　コンノ・グラスハーベルの口元にクリームがついているのに気づいた妖精は、紙ナプキンでそっと拭く。

　紅茶とケーキをゆっくり味わい、森にいる雰囲気の店内と可愛い妖精を一通り楽しんだ三人は店を出ようかということに。
　美野梨が財布を取り出して代金を支払おうとすると、店主は「お代はあなた方のお話です」と一言。
「私の話？」
　研究の話じゃ面白くないかしら……と思った美野梨は、猫鳴館にいるねずについて話すことに。
「私が住んでいる猫鳴館にも小人がいるのよ。ねずという種族で、羽はないし光らないけど、人間の言葉を話せるわ」
　どんなものなのだろう？　と首を傾げたり、もっと聞かせて、と言うように飛び回る妖精達。
「興味を示してくれてありがとう。あなた達を見れば喜ぶんじゃないかしら。ああ、猫鳴館というのはね、とても古い建物なのよ」
　たまに床が抜けたりする、ネズミもいる、綺麗とはいえないが修繕したりペンキを塗ったりしてなんとか暮らしている。
「大人はめったに来ないし、あなたたちが遊びにきても問題ないと思うわ」
　遊びに行ってもいいの？　と妖精達はソワソワする。

「僕の話で良ければ、聞いてくださいなっ」
　綺麗な主人と妖精に囲まれて、のんびりティートークもいいですねぇと名瑠は自分のことを話し始めた。
「実はそんなに面白いエピソードにあふれた人生はまだ送れていないと思うけれど、よく言われることや実は……なことでも良かったら」
　まずは見た目の話。
「妖精さん達には敵わないけれど、可愛いって言ってもらえるのは実は好きだよ。女の子みたいって誂われるのは嫌だけど」
　可愛いに性別は関係ないでしょ？　と妖精を見てクスリと笑う。
「美は性別に宿ってるんじゃない……って、妖精さん達を見れば何より良く分かる気がするな」
　次は服装に関して。
「あまり気にしたことはないんだけど、好きに選ぶとジェンダーフリーのコーデになりやすいって言われるね」
　名瑠が履いているのはハイヒールなので、どちらかと言えば女性寄りなのかもしれない。
　女性寄り寄りと思ったが、可愛ければOKかなと。
「実は、ちゃんと足に合わせて広く作ってもらってるんだよ～」
　立ち上がると、クルリと回って「どうかなぁ？」と妖精達に全身コーデを見せた。
「見た目が中性的だからって、そのままレディースのファッションができる訳じゃないのは仕方ないかな」
　最後は……と話したのはシークレットトーク。
「ここまで妖精さん達の事も眺めながらお話してきたんだけど、実は身体というか、骨格フェチなんだよね僕。綺麗な骨格に、しっかり肉が乗ってこそみたいな」
　妖精さん達の骨格はどうなのかなぁ？　と名瑠はじっくりチェック。
　私も興味ありますね、と美野梨もチェックし始めた。
　泣きそうな顔をする妖精もいたので、二人は深く追究するのをやめた。
「皆、とてもばっちりで嬉しい時間を過ごさせて貰ったけど……これは本当に秘密ねっ」
　約束だよっ、と名瑠はウィンクする。

　私は……とコンノも自分のエピソードを話した。

「このカフェ、また来れるのかしら？」
　店を後にし、名瑠とコンノと別れた美野梨は帰ったら鳶色彦さんに話をして、連れてきてみたいと思った。

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