冬の図書館でゆったりと｜リアクション

冬の図書館でゆったりと

●いつか見たい景色

　小山内海は旧市街にある寝子島図書館へ向かっていた。

（今日は図書館でのんびり過ごそう。読みたいのは写真集とか画集とかそういう系）

　海は図書館までの道のりを景色に触れるようにゆっくり歩く。
　寝子島も季節や天候によって色々な顔の見せるが、海は違う視点を持っていた。

（外国の美術館とかにある絵とか、ここじゃ見られない風景とか。そういうのを見れるのは画集とか写真集とかのいい所だよね。まぁ、実際に見るのよりは劣るのかもしれないけどね。それでも勉強にはなるし）

　絵画や彫刻など、外国で展示されている実物の前に立って眺めるのは残念ながらできない。その願望を少しでも叶えるのが画集や写真集なのかもしれない。どんなものが見られるか、頭で思い描くうちに図書館に到着した。

（さて、図書館に着いたけど何を読もうかな）

　読みたいジャンルは来る前から決まっていたが、具体的な内容までは決めていなかった。しばらくうろうろしていると、ふと本が積まれた一角が目に留まった。

（なんだろう？　何かの特集かな？）

　近づいてポップを見ると『冬の読書フェア』と書かれている。冬にまつわる本を集めた催しのようだ。小説からレシピ集、写真集などジャンルを問わず並んでいる。

（冬の読書フェア…へぇ、面白そう。冬にまつわる本が集まってるんだ。それならせっかくだし読んでみようかな）

　海はフェアのコーナーに置かれた本からいくつか見繕って読書スペースに持っていく。

（まずは雪景色の美麗写真集から読もう）

　表紙をめくって飛び込んできたのは、積もった雪が光と見紛うほどに輝く景色だった。

（うわぁ……綺麗）

　それ以上の言葉が出てこなかった。思わずしばらくじっと眺めてしまった。そこから次のページ、さらに次のページとめくっていく。言葉で表現できない美しさがそこに存在している。

（こういう景色、寝子島ではなかなか見れないから、今描くなら想像して描くしかないんだよね。いつか実際に見に行ってスケッチとかしてみたいな）

　ゆっくりと写真集を堪能したら、次の本に手を伸ばす。『冬空に君を想う』というタイトルの文庫本だ。

（小説……タイトルと表紙からして恋愛小説かな？　なんだかびびっと来たから一緒に借りてきたけど……さて、読んでみようかな）

　冬をテーマにした恋愛小説は、内容は王道だった。しかし冬という題材を最大限に活かして、人の心を描いている。きっと冬でなければ成り立たないほど、溶け込んでいる。
　フェアが無ければ出会わなかったかもしれない。
　海は最後に写真集をもう一度眺めてから、持ってきた本をすべて元の場所に戻した。

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