【クリスマス】あなたに会いたい、雪降る聖夜｜リアクション

【クリスマス】あなたに会いたい、雪降る聖夜

●マリンパラダイス～英二とののこ

（賑やかなクリスマス好きそうだし喜んでくれそうかな）
　佐藤英二が野々ののこを誘ったのは、そんなふうに思ったからだ。
（あっ、いや、デートとかそう言うのじゃないよ。野々さんに用事や先約がありそうなら１人で行けばいいし）
　いろいろと自分に話しかけて臨んだ放課後、ののこの返事は、
「いいよ！」
　と明快なもので。
　よっしゃ、と内心ガッツポーズを取ったことも記憶に新しい。

　ののこは去年のクラスメートで、明るい笑顔が気になる女の子だ。
　けれど恋人同士というわけではない。
　友だちの延長上と言えばいいだろうか。誘えば気安く応えてくれて一緒にいたら楽しい。そんな関係だ。
　英二としては気さくな今の距離感も気に入っている。
　来年の今頃はきっと受験間際で焦っているだろう。
　だからこそ、今年は楽しいクリスマスを過ごせると良いなとやってきた夜の水族館。
　ののこがとくに気に入ったのは、チンアナゴの水槽だった。
　白や黒やオレンジのまだらの棒みたいなチンアナゴたちが、海底を模した砂の中から垂直に出たり入ったりするのが可愛らしくも面白く、ののこは、
「あ、出てきた！　引っ込んだ！　今度はこっちのが！　餌食べてるとこも可愛い！！」
　などとはしゃいでいる。
（野々さん、すごく楽しそう……誘ってよかったな）
　魚よりののこの楽しそうな姿に、胸がほっこり温かくなる。
　ふたりはチンアナゴの水槽をあとにして、人波に乗ってトンネル水槽の方へ進んでいった。
「それにしてもクリスマスの賑わいって良いよね」
　カップルも、家族も、友だちも、思い思いに連れ立って歩く足取りは、ふわふわ夢の中のよう。
「うん。みんな楽しそうだから、一緒の空間にいるだけで、なんだか楽しくなるよね」
「よく考えると１週間後には年越しなんだけど……そんな感じは微塵も無くてクリスマスに全力投球な浮かれ具合がなんだかスゴク楽しげな気がする」
「わかるー！」
「野々さんはいつだって楽しいことに全力投球だもんね」
　自然と笑顔になって歩いていると、水族館の作業服に身を包んだ職員さん――エリオット・Ｅ・シートン――に声を掛けられた。
「もうすぐショーが始まりますよ！　ゆるキャラ大集合の楽しいショーです。見ていきませんか？」
「わ！　楽しそう！　行こうよ英二君！」
　ののこがその気になったのなら断るべくもない。
「いいね、見ていこうか」