１２月の☆ハッピーバースデー｜リアクション

１２月の☆ハッピーバースデー

☆１２月１５日（２）

　黒兎都は、一人歌った。
「はっぴばーすでーとぅーみー　はっぴばーすでーとぅーみー　はっぴばーすでーでぃやうち～……」
　桜花寮の自室で、都はつぶやく。
「空しくなるからこれ以上はやめとこうね。高校最後の誕生日さんでもぼっちかー、そっかー。……別に寂しくないし、誕生日さんなんてただの日常だし……」
　そう、今日は都の誕生日なのだ。
（……しかしなんでうちはアレかなあと10日くらい遅く生まれんかったのかしらね。そうすりゃはっちゃけて燥いでもリア充記念日の一環として違和感なく過ごせるのにのー……）
　そんな思いがよぎったが、すぐに気づく。
「まぁどっちのイベントでもボッチなわけだが。……まぁあれだ、黄昏てても仕方ないしセルフで祝うって決めたんだからそれなりのことしましょうね」
　スマホに目をやれば、爺様や兄様からお祝いメールも届いている。
「大丈夫きっとお空の彼方に旅立った誰かを想うがごとく、おいしいもの供えて祝ってくれてる気がするからセルフでも寂しくないし！　ないし！！」
　とまぁ一人漫才をしてしまう都。
「さておき……スポンジと生クリームと餡子使ってなんちゃって和ケーキでも作るかの」
　めんどくさい事は苦手な都だが、やはり誕生日にはケーキくらいほしい。
　かと言ってホールケーキを買っても一人では食べきれないし……。
　そんなわけで材料は買ってきた。
「半分に切ったカステラ風味のスポンジを上下に分けて、間に餡子を挟み―の、周りをクリームでコーティングしーの……」
　レシピに合わせるわけではないいい加減な作り方だが、誰に食べさせるわけでもないので気楽にトライしている。
「飾り無いと寂しいので、餡子でヌコのシルエットつけてチョコペンつかって宛名をポイポイっと……」
　猫好きなのに、なぜか会う猫ほぼ全てに避けられている都。
　せめてケーキくらい猫で飾りたい。
「何でセルフなのに無駄にころうとしてんだろうねーＨＡＨＡＨＡ」
　思わず笑ってしまいながら、セルフケーキは完成した。
「……まぁいいや、んじゃ改めてーおめっとう、うち！」

　一人で食べる和ケーキは、普通においしかった。
（来年はどこで誕生日するんだろね）
　そんなことを思ったりもしながら。