１２月の☆ハッピーバースデー｜リアクション

１２月の☆ハッピーバースデー

☆１２月３日

　水上桜は、荷物を手に寝子島スポーツセンターの玄関で待っていた。
「桜ちゃん！」
　所属している水泳部の顧問、相原まゆ先生が走ってくる。
　寝子高水泳部は、夏期以外は屋内プールのコースを借りて練習しているが、今日は水泳部の練習ではない。
「こんにちは、先生。お休みなのにありがとうございます」
「いいのよ、桜ちゃん生徒会の会計やら家庭科同好会やら掛け持ちして忙しいもんね」
　まゆ先生と二人きりで温水プールへ。
　生徒会役員になって、水泳部の活動に参加するのは中々大変、と話したら、まゆ先生は快く休日の指導を引き受けてくれたのだ。
　準備運動を済ませ、軽く何本か泳いでみる。
「それじゃタイム測るわね」
「お願いします」
　桜は得意のクロールで気持ちよく泳いだ。
「いいわね、久しぶりでこのタイムなら上出来だわ」
　まゆ先生が教えてくれたタイムが思ったより良かったので、桜は安心した。
「先生、次はバタフライのフォームを見てもらえますか」
「いいわよ」

　そんな風にして一日の練習を終えた。
　熱いシャワーを浴び、服を着替えた後。
「お腹すいたわね。ファミレスに寄らない？　先生のおごりよ」
「いいんですか？　ラッキー！　何にしようかな」
　近所のファミレスに入り、桜はメニューを広げた。
「ハンバーグステーキとライスをお願いします」
　それから気づく。
「……って、誕生日の先生におごってもらうなんて」
　恥ずかしそうな顔になる桜に、まゆ先生は笑う。
「覚えててくれたの？　いいっていいって、先生大人だから」
「ありがとうございます。……それじゃ遠慮なく」
「それじゃ先生は、ミートパスタにするわ」
　
　注文を済ませ、二人は適当に雑談などする。
「久しぶりで疲れてない？　体がなまってるんじゃないかと思ってけど、全然大丈夫だったわね」
「良かったです。時間が空いた時プールに行ったりはしてたんですけど、一人だとちゃんとできてるか自信がなくて」
　そんな会話の中、タイミングを見て桜はバッグから包みを取り出した。
「先生、お誕生日おめでとうございますっ」
「えっ？」
　用意した先生への誕生日プレゼントの包みを差し出され、まゆ先生は口を開けて驚いた。
「嬉しい、もらっちゃっていいの？」
「どうぞ。手づくりのネックレスです」
　童顔なまゆ先生が子供っぽく見えるのを気にしているのを知っているので、桜なりに気を使った。
「桜ちゃんアクセ作りも得意なんだったわね。開けてもいい？」
「もちろんです」
（大人っぽく見えるデザインのものに仕立ててみたんだけど、もしこれもＮＧならごめんなさいだけど……）
　桜はどきどきしながら、包みを開けるまゆ先生の表情を見守った。
　ネックレスを見たまゆ先生の笑顔が、いっそう輝く。
「素敵！　桜ちゃんセンスあるわね！」
「気に入ってもらえてよかったです」　

　そこへハンバーグステーキとパスタが届いた。
「いただきます！」
　二人は食事を楽しみながら、会話をはずませるのだった。

このページにイラストを設定する