１２月の☆ハッピーバースデー｜リアクション

１２月の☆ハッピーバースデー

☆１２月１５日（１）

綾辻綾花は、鞄にプレゼントを忍ばせていた。
（今日は珪先生の誕生日。用意してるプレゼントをどこで渡そうかな）
　担任の先生なのでタイミングのいい時に渡せるかなと機会を窺っていたけれど、早川珪先生は休み時間には他の生徒や先生と話していて渡す機会がなかった。
（結局放課後になってしまいました）
　綾花はプレゼントを制服のポケットに入れて図書室へ向かった。
　珪先生は図書室を預かる司書教諭で、綾花は図書委員。
　図書室なら確実に渡すことができるだろう。
　けれど。
（忙しそうにパソコンに向かってますね……）
　邪魔をしてはいけなおいと、渡すタイミングを逃してしまう。
（立ち上がった！　今度こそ）
　珪先生の元へ向かい、声をかけようとしたが。
　他の生徒が先に声をかけてしまい、綾花はやきもきしてしまう。
（いけない、落ち着かなきゃ）
　自分に言い聞かせ、話が終わるのを待つ。
　やっと話が終わり、生徒が離れるのを見計らって、そっと近づく。
　幸い近くに人はおらず、もう邪魔する者はなさそうだ。

「綾辻くん？」
「珪先生、誕生日おめでとうございます」
　綾花はポケットからプレゼントを出し、笑顔で珪先生に手渡した。
　珪先生は目を見開いた後、受けとってくれた。
「ありがとう。もらっていいのかい？」
「はい！　レザーのブックマーカー（しおり）のセットです。珪先生に似合うし使えるものをと思って選んでみたんです」
「開けてみてもいいかい？」
「はい」
　包みを開けた珪先生は、にっこりする。
「猫の肉球の形だね」
　綾花の猫好きは珪先生も知っているのだ。
　ブックマーカーは猫の肉球の形に型抜きしているシンプルなデザインで、赤・黒・青・黄色・緑の５色だ。
「以前にプレゼントした革のブックカバーにも合います。本の表紙の色で合わせてみても素敵です」
（ぜひ使って欲しいけど、喜んでもらえるでしょうか……）
　心配そうに先生の表情を窺う綾花。
「いつもありがとう。大切に使わせてもらうよ」
　珪先生は笑顔でそう言いながら、プレゼントをポケットにしまった。
　その様子に、綾花はほっとした。
「使ってもらえたら嬉しいです」