１２月の☆ハッピーバースデー｜リアクション

１２月の☆ハッピーバースデー

☆１２月５日

　仕事を終えると、楠桐葉は茶色いウェーブの髪をなびかせて急いで商店街へ向かった。
　今日は最愛の妹である瑠璃の誕生日なのだ。
　早めに準備しておきたかったのだが、仕事が忙しかったりでつい先延ばしになってしまった。
　とは言え、何も考えていなかったわけではない。
　桐葉は、旧市街のチャイナドレスを扱う店へ飛び込んだ。
　桐葉は日ごろからこの店のチャイナドレスが気になっていたのだ。
「プレゼントは……この胸元が開いたチャイナドレスでいいわね。きっと似合うと思うわ」
　それから、ケーキ屋でバースディケーキを購入する。
「ケーキも買ったしあとは家に帰るだけね」
　うっかりケーキを崩さないよう、桐葉は慎重に歩きだした。

「今日は私の誕生日なんだけどお姉ちゃんはどんなケーキを用意してくれたのかしら」
　寝子高１年の楠瑠璃は時計を見上げた。
（それに何年か前から毎年プレゼントもあるし楽しみで待ちきれないわ）
「ただいまー」
「あっ、お姉ちゃん帰って来た」
　急いで玄関へ向かうと、妖艶な笑顔を浮かべて姉がケーキの箱を持っていた。
「おかえりなさい」
（本当は抱き着きたいけどケーキが崩れたら困るから遠慮しておこう）
　そう思っておとなしくしていると、桐葉が残念そうな顔をした。
「瑠璃が抱き着いてこないからちょっと寂しいわ」
「だってケーキが崩れちゃうじゃない」
「それもそうね。お誕生日おめでとう、瑠璃。プレゼントがあるのよ」
「ありがとう、お姉ちゃん！」
　ケーキとプレゼントを置いた桐葉に、抱き着いて瑠璃は言った。
「お父さんたちはまだ店の方にいるから２人で夕食を済ませて、ケーキを食べよう」
　桐葉と瑠璃の父は中華料理店を営んでいる。
　両親が店で忙しかった分、瑠璃は１３歳上の桐葉に甘やかされて育った。
　晩御飯を終えて、瑠璃はわくわくしながらケーキの箱を開く。
「おいしそう！」
　ろうそくを１５本立てて火をつけると、二人でハッピーバースデーの歌を歌った。
　瑠璃は一息でろうそくの火を吹き消す。
　写真を撮った後、桐葉はケーキを皿に取り分けるとフォークに刺した。
「瑠璃にはお姉ちゃんが食べさせてあげるわね。はい、あーんして」
「あーん」
　１５歳なのにちょっと恥ずかしいかな……という気持ちはあるけれど、瑠璃は姉が大好きだ。　　
「ごちそうさま。おいしかった！」
　食べ終えて片付けを済ませて、瑠璃はもう一つのお楽しみであるプレゼントに目を向ける。

「いよいよプレゼントを開封したいな」
「それじゃ、お姉ちゃんの部屋で開けて」
「えっ？」
　何考えてるの？　と首をひねりつつ、言われた通り瑠璃は桐葉の部屋に向かう。
　瑠璃はわくわくしながら包みを開けるが。
「これ、チャイナドレスじゃない」
「着て見せて。きっとよく似合うわ」
　お店で手伝いをするとき着ろという意味？　とも思ったが。
「しかもスリットは深いし胸元は大きく開いてるし趣味丸出し……」
　目を輝かせている桐葉に瑠璃は呆れた。
「お姉ちゃんが可愛い女の子に目が無いのは知ってたけど、まさかここまでとは思わなかったわ」
「えっ、恥ずかしいから着られない？」
　しょげた顔になった桐葉だが、すぐに気を取り直した様子で。
「じゃあ今日はお詫びにいっぱい甘えさせてあげるわね。何でもいいのよ。さあ、言ってみて」
「えっ、本当？　それなら遠慮なく……」
　未だに姉離れできていない瑠璃。
　子供のように桐葉に抱き着いて甘えるのだった。
「お姉ちゃん、耳掃除してくれる？」
「はいはい」
　桐葉の膝枕に頭を乗せ、瑠璃は幸せな誕生日のひと時を過ごした。

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