＜七福猫シリーズ＞福禄寿猫を探せ編｜リアクション

＜七福猫シリーズ＞福禄寿猫を探せ編

●ロック魂で誘き出してみる

　九夜山の麓を散歩していた佐藤瀬莉の耳に突如、全身を揺さぶるようなロックのビートが飛び込んできた。
「わっ！　な、何！？」
　唐突に轟音が響いたので驚いてしまった。
　手にはエレキギターを持ち、服装はゴスロリ系に……というが、普段来ている服とあまり変わらない。
　何だか少し背が高くなったような気分だったので手鏡をバッグから取り出して自分の姿を覗いて見ると、結構大人っぽくなっていた。
　ツインテールは変わらないが17歳くらいの、どこかシャープな感じの美少女に変化していた。
　それだけでなく、胸も少し大きくなっていた。
　何が何だかよくわからないが福禄寿猫を探しに行こうとしたら……妙に足が重い。
「どうなってんの？　これじゃあ身動きが取れないじゃない……」
　七福猫探しで一番大変なことになったかもと思いつつ、瀬莉は歩き出す。
　
　１時間近くかかって辿り着いたのは耳福池のあたり。
　移動中、カメにように歩くのはしんどい、背中に担いでいるエレキギターが重いで大変だった。
　おまけに、まだロックがガンガン鳴り響いているので頭も耳も痛い。
　それ以上に痛かったのは「何やってるの？」と瀬莉を見る周囲の視線。
　服装を見られて痛い思いをするなら、いっそのこと、ここで路上ライブをして誤魔化すしかない。
　観客が少ない、路上ライブを行うには場所が若干悪い気がするが、この状況をどうにかするほうが先だ。
（上手くいけば、福禄寿猫を誘い出せるかも）
　その場に足を広げて立つとエレキギターを構え、眦を決して周囲を睥睨し叫ぶ。
「……あたしの魂を受け止めなっ！」
　ツインテールを振り乱しながらロック魂溢れる演奏を披露する。
　福禄寿猫を見つけ出す！　という気概に満ちた思いを汲み取ったのか、エレキギターはひとりでにロックを奏でた。
　その途端に鳴り響いていた頭の中のロックが聞こえなくなったので演奏する気アップ。
　九夜山路上ライブは珍しいと興味を持った観客は写真や動画を撮影したり、ＳＮＳにアップしたり。
（恥ずかしい……！　大黒猫を探す時も恥ずかしかったけど……）
　観客の様子を窺うと、頭が少し長く、亀に乗った猫の石像を見かけた。
「あれは……」
　福禄寿猫発見！　と近づこうとするが、カメの歩みは相変わらずなので思うように歩けず。
　その間、石像は回れ右して路上ライブの場からゆっくりと立ち去った。
「この歩みがなければ追いつけたのにー！」
　追いつけない悔しさをエレキギターにぶつけ、路上ライブを続ける瀬莉だった。

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