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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
ちょっと、ご褒美
●猫まみれ
桜花寮の自分の机で、パチリと彼女は目を開けた。彼女……恵御納 夏朝は先程うとうととしてつい机に顔を預けてしまったばかりなのに。もう目が覚めてしまったのだろうか？
いいや、違う。彼女の顔をよく見て欲しい。いつもの彼女の穏やかでのんびりとした瞳の色はなりを潜め、同じ焦げ茶色でも鋭い眼光が見て取れる。油断なく引き締めた唇。彼女は頭を起こすと外界に慣れるように静かに首を振った。
そう、彼女は夏朝ではなかった。夏朝の別人格―――夏夜だ。
（ん、まだ昼間か）
夏夜は外の光を確認した。机には開いたノートと教科書。
（ふ～ん……）
ぱらりとノートを見ながら夏夜は肩を竦めた。夏朝は大方授業の復習でもしていてうたた寝をしたのだろう。そこで僕が出てきた、と。
「夏朝……」
夏夜はふうと息をついた。その瞳は愛しさと心配が入り交じった複雑な色をしていた。
別人格の僕が言うと、本人格贔屓になってしまうのかもしれない。
けれど、やっぱり思うんだ。夏朝はいつも頑張っているって。
どの進路にも進めるようにと勉強を頑張り、土日にはバイトを入れて頑張り。
彼女は進んでくれている。フツウを守る為にも、願いを叶える為にも。
昼間に疲れて寝てしまうくらい。きっと僕の事を考えながら寝たのだろう。
「ありがとう、夏朝」
けして本人に直接伝えられない言葉を夏夜は口にする。そしてふと考えた。
（そういえば、僕から夏朝に何か物とかあげた事って……あったかな）
いつも頑張っている夏朝に何か、あげられたらいいのだけれど。
夏夜はしばらく考えると、夏朝との交換日記を取り出す。そして今日の午後はほぼ予定が入っていない事を確認すると、桜花寮の部屋を出て散歩をすることにした。
この体は夏朝と共有しているから、ゆっくり外の空気を楽しんだら、夏朝の健康にもいいと思うし、それに。
頑張る夏朝へのご褒美が……見つけられたらいいな。
＊
気持ち良く晴れた空の下、夏夜は寝子島散策を始めた。
夏朝への贈り物を探しつつ、寝子島のあちこちをチェックする。―――夏朝の目では気付かない事が僕には気付くかもしれないから。
色々な事を考えながら歩いていた夏夜の足がふと止まった。そこは九夜山の裾野に近い場所。細い路地に面した陽当たりの良い広場にたくさんの猫達がいて、思い思いに寛いでいたのだ。
気持ちの良さそうな場所に、夏夜は引き込まれるように入っていった。
小さいが綺麗な場所だった。木々が植えられ、下草も程よく刈られている。猫達は陽当たりの良い場所でひなたぼっこをしたり、じゃれあいっこをしたり。夏夜がそこに足を踏み入れても人懐こいのだろうか、気にしてはいないようだ。
（これは、素敵な場所だ）
夏夜は猫達に交じりそっと下草に座った。この辺りはチェックしていなかったから、こんな場所があるなんて気が付かなかった。夏朝の情報にもなかったはずだから、ここはお互いに初めてだ。
ぽかぽかと降り注ぐ陽射し。ふやぁとあくびをする猫達につられるように、夏夜も地面に寝転んだ。すると猫達がわらわらと集まってきたではないか。
「なんだ、暖を取りたいのか？」
陽射しで充分暖かいだろうに、夏夜の体に密着するように丸くなる猫達。その１匹がすりりと顔を擦りつけてきたので、夏夜は優しく撫でてやる。猫は嬉しそうに夏夜の頬をぺろりと舐めた。
ああ、夏朝。温かいよ。命は温かいね。
君の温もりは僕には触れられないけど、いつか。
お互いの頬に触れて
「温かいね」
って言い合えたらいいね。
「起きたらいきなり猫まみれ、か……ふふっ」
夏夜は猫達に囲まれながら目を閉じた。夏朝の事を思いながら。
これが、いつも頑張っている君へのご褒美になるといいな。猫達、もし僕が起きたら……思い切り甘えてきていいからね？
猫達を撫でている夏夜の手が段々ゆっくりになる。そしていつしかすうすうと規則正しい寝息が聞こえてきた。
「ん……」
瞼の上から降り注ぐ眩しい陽射しに夏朝は目を覚まし、そして仰天した。
「……あれ、ここは……猫さんが沢山！」
寮の自室にいたはずなのに、いつのまにか外にいて寝転んでいる。その上猫達がたくさん自分に寄り添い、丸くなっているのだ。その内何匹かは起きてきて、のっしりと夏朝の体に乗ったりぺろぺろと頬を舐め始めた。
「うわぁ可愛いなぁ……！」
不思議に思いながらも夏朝は思い切り撫でてやる。すると我も我もと猫達が寄ってきて、夏朝はもふもふまみれになってしまった。
日頃の疲れも忘れ、きらきらの陽射しの下でたくさんの猫達と遊んで寛ぐ夏朝。猫まみれになりながらも思っていた。
もしかしてこれは夏夜ちゃんのおかげかな？
嬉しい……本当に、ありがとう……！
桜花寮の自分の机で、パチリと彼女は目を開けた。彼女……恵御納 夏朝は先程うとうととしてつい机に顔を預けてしまったばかりなのに。もう目が覚めてしまったのだろうか？
いいや、違う。彼女の顔をよく見て欲しい。いつもの彼女の穏やかでのんびりとした瞳の色はなりを潜め、同じ焦げ茶色でも鋭い眼光が見て取れる。油断なく引き締めた唇。彼女は頭を起こすと外界に慣れるように静かに首を振った。
そう、彼女は夏朝ではなかった。夏朝の別人格―――夏夜だ。
（ん、まだ昼間か）
夏夜は外の光を確認した。机には開いたノートと教科書。
（ふ～ん……）
ぱらりとノートを見ながら夏夜は肩を竦めた。夏朝は大方授業の復習でもしていてうたた寝をしたのだろう。そこで僕が出てきた、と。
「夏朝……」
夏夜はふうと息をついた。その瞳は愛しさと心配が入り交じった複雑な色をしていた。
別人格の僕が言うと、本人格贔屓になってしまうのかもしれない。
けれど、やっぱり思うんだ。夏朝はいつも頑張っているって。
どの進路にも進めるようにと勉強を頑張り、土日にはバイトを入れて頑張り。
彼女は進んでくれている。フツウを守る為にも、願いを叶える為にも。
昼間に疲れて寝てしまうくらい。きっと僕の事を考えながら寝たのだろう。
「ありがとう、夏朝」
けして本人に直接伝えられない言葉を夏夜は口にする。そしてふと考えた。
（そういえば、僕から夏朝に何か物とかあげた事って……あったかな）
いつも頑張っている夏朝に何か、あげられたらいいのだけれど。
夏夜はしばらく考えると、夏朝との交換日記を取り出す。そして今日の午後はほぼ予定が入っていない事を確認すると、桜花寮の部屋を出て散歩をすることにした。
この体は夏朝と共有しているから、ゆっくり外の空気を楽しんだら、夏朝の健康にもいいと思うし、それに。
頑張る夏朝へのご褒美が……見つけられたらいいな。
＊
気持ち良く晴れた空の下、夏夜は寝子島散策を始めた。
夏朝への贈り物を探しつつ、寝子島のあちこちをチェックする。―――夏朝の目では気付かない事が僕には気付くかもしれないから。
色々な事を考えながら歩いていた夏夜の足がふと止まった。そこは九夜山の裾野に近い場所。細い路地に面した陽当たりの良い広場にたくさんの猫達がいて、思い思いに寛いでいたのだ。
気持ちの良さそうな場所に、夏夜は引き込まれるように入っていった。
小さいが綺麗な場所だった。木々が植えられ、下草も程よく刈られている。猫達は陽当たりの良い場所でひなたぼっこをしたり、じゃれあいっこをしたり。夏夜がそこに足を踏み入れても人懐こいのだろうか、気にしてはいないようだ。
（これは、素敵な場所だ）
夏夜は猫達に交じりそっと下草に座った。この辺りはチェックしていなかったから、こんな場所があるなんて気が付かなかった。夏朝の情報にもなかったはずだから、ここはお互いに初めてだ。
ぽかぽかと降り注ぐ陽射し。ふやぁとあくびをする猫達につられるように、夏夜も地面に寝転んだ。すると猫達がわらわらと集まってきたではないか。
「なんだ、暖を取りたいのか？」
陽射しで充分暖かいだろうに、夏夜の体に密着するように丸くなる猫達。その１匹がすりりと顔を擦りつけてきたので、夏夜は優しく撫でてやる。猫は嬉しそうに夏夜の頬をぺろりと舐めた。
ああ、夏朝。温かいよ。命は温かいね。
君の温もりは僕には触れられないけど、いつか。
お互いの頬に触れて
「温かいね」
って言い合えたらいいね。
「起きたらいきなり猫まみれ、か……ふふっ」
夏夜は猫達に囲まれながら目を閉じた。夏朝の事を思いながら。
これが、いつも頑張っている君へのご褒美になるといいな。猫達、もし僕が起きたら……思い切り甘えてきていいからね？
猫達を撫でている夏夜の手が段々ゆっくりになる。そしていつしかすうすうと規則正しい寝息が聞こえてきた。
「ん……」
瞼の上から降り注ぐ眩しい陽射しに夏朝は目を覚まし、そして仰天した。
「……あれ、ここは……猫さんが沢山！」
寮の自室にいたはずなのに、いつのまにか外にいて寝転んでいる。その上猫達がたくさん自分に寄り添い、丸くなっているのだ。その内何匹かは起きてきて、のっしりと夏朝の体に乗ったりぺろぺろと頬を舐め始めた。
「うわぁ可愛いなぁ……！」
不思議に思いながらも夏朝は思い切り撫でてやる。すると我も我もと猫達が寄ってきて、夏朝はもふもふまみれになってしまった。
日頃の疲れも忘れ、きらきらの陽射しの下でたくさんの猫達と遊んで寛ぐ夏朝。猫まみれになりながらも思っていた。
もしかしてこれは夏夜ちゃんのおかげかな？
嬉しい……本当に、ありがとう……！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2020年02月29日
- 参加申し込みの期限
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- 2020年03月07日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2020年03月07日 11時00分
