ちょっと、ご褒美｜リアクション

ちょっと、ご褒美

●猫達とゆったり

　白真白はちっちゃい体だが頑張り屋さんだ。
　海外にいる事が多い両親はシーサイドタウンの家にはなかなか帰ってこず、実質１人暮らし。だから自分でご飯も作るし洗濯もする。料理の腕はだいぶ上がってるよ。
　昔の事故の後遺症で体にもハンデがあるが、明るく乗り切っている。ほら、瞳の色を変えられるなんて、おしゃれでしょ？　（……おトイレも何とかなってるしね！）
　趣味も色々あって忙しかったりする。大好きなカードゲーム、スマホとかでやるゲームも好きだし、アニメも好き。家事を終えてからやると夜遅くなって次の日遅刻したりしそうになるのは内緒。
　同級生を見上げて話さなければいけないこの身長と、それに見合わない爆乳はコンプレックスだし歩く時バランスは悪いし下は見えないし肩は凝るけど……これはしょうがないもんね。うんうん、大丈夫、日々無問題。
　―――しかし、学生として逃れられない行事というものがこの生活に入ってくる。そう、それは期末テストだ。

「ふひぃー、やっぱり疲れるー」
　１人黙々と机に向かっていた真白は、突然ネジが切れたように机に突っ伏した。
　真白は冬休み前の期末テストのために、珍しく勉強を頑張っていた。夜もちょっとはゲームを封印しているし、今日だって休みだけど家事が終わったらずっと勉強。こんなに天気がいいのに。外は気持ちよさそうなのに。きっとぽかぽか小春日和に違いないのに。私えらい！　とってもえらい！
「―――うん、えらいぞ私！」
　がばりと起き上がり真白はシルバーの瞳を窓越しの陽光に輝かせた。こんなにえらいんだから私、今日くらいゆっくり休んでもいいよね？
　誰も答えない１人の部屋で、真白は大きく頷いた。いいのだ。自分へのご褒美ってことでいいのだ。
　そうと決まれば話は早い。真白は椅子から立ち上がり、勉強机はそのままにいそいそと出掛ける支度。
　お洋服よーし。レジャーシートよーし。義眼よーし。おむつよーし。
　むふふと自分で指さし確認。そのまま元気よく家を飛び出した。

＊

　お気に入りのワンピースの裾が柔らかい風を孕む。ちっちゃな可愛らしいバレーシューズも軽やかに真白はシーサイドタウンにあるガーデンスペースまでやってきた。
　ここは芝生も手入れされ、木々もふんだんに植えてある。気持ち良い木漏れ陽の下歩いていた真白は、お気に入りの場所で足を止めた。
「うん、やっぱりここにしよう」
　そこは木々に囲まれながらもキラキラとした陽光が降り注ぐ素敵な場所だった。この季節にはこういう場所がうってつけだ。風も遮りポカポカと温かくて寒くない。
　真白は慣れた手つきでレジャーシートをパサリと敷く。四隅に小石を置くと、ころりんとシートの上に寝転んだ。
（ああ、やっぱりここは気持ちがいい）
　瞼を閉じても陽光の煌めきが落ちてくる。真白は大の字になってうーんと体を伸ばした。こんな素敵な昼下がり、きっとあの子達も来ると思うんだけど……。
　その時、にゃーんと小さな声が聞こえた。真白が目を開けると彼女の周りに猫達が数匹集まってきている。
（お、きたきた）
　真白は周囲の猫達に声を掛けた。
「おいでおいでー。にゃんこちゃんたちもいっしょにゆったりしよー」
　彼らはここで顔馴染みになった猫達。猫達は警戒する様子もなく真白の傍に近付いてくる。挨拶をするように１匹の白猫が真白の腕にすりりとその身を寄せ、にゃーんと甘い声で鳴く。真白はその子を抱っこした。
「うんうん、いつもながら君たちはもふもふだねぇ」
　丁寧に撫でれば白猫は気持ちよさそうに喉をごろごろと鳴らす。その可愛らし様子に真白は目を細めた。
（ノミとかもついてる感じしないし、誰かにブラッシングしてもらってるのかな？）
　猫の多い寝子島はあまりみすぼらしい猫はいない。飼い猫が多いし、住民は皆猫好きだから放っておかないのだろう。だからこうやって人懐こい君達をもふもふできる。とってもありがたい話だよね。
「にしても、君たちはあったかいねぇ」
　白猫を抱えながら、真白はまた横になった。他の猫達も真白の周囲に集まってくる。常緑樹の間から零れる光はこの季節には珍しく温かい。胸のにゃんこも温かくて柔らかい。そしてここ最近頑張って勉強している私が合わさると。
「ふぁー……」
　真白の瞼がゆるゆると下りていく。気持ち良すぎて何だか眠くなってきちゃった。まぁ、ここなら誰も来ないだろうし寝ちゃっても……いいよね？
　だんだん狭まる周囲の景色。胸にも、足元にも猫達の温もりを感じながら真白はその瞳を閉じた。

　ここで微睡むは猫達と心通わせた１人の少女。猫達に守られながら柔らかな木漏れ陽の下、穏やかに寝息を立てている。

このページにイラストを設定する

ちょっと、ご褒美

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧