うみねこで鍋を｜リアクション

うみねこで鍋を

●寒い日は鍋でしょう

　昼時のお客さんが帰った後、魚戸夫妻とアルバイト達の昼食時間に。
（滅茶苦茶忙しかったわ。夕方から夜にかけては、もっと忙しくなりそう）
　脚にも腰にも疲れがけっこうくるので、楡宮遠海はお疲れ気味。強烈にお腹も空いてきた。
「賄い、できたぜ」
　ケンゾウが皆の分の賄いを用意してくれた。定食屋でのバイトの醍醐味は、なんといっても賄い飯。
　待ってました、と遠海は心の中で喜ぶ。
　彼女の賄いは、特製の魚介ばくだん丼温泉卵乗せを大盛りと海鮮かき揚げ丼。
　これで夕方からのバイトも乗り切れると遠海は賄い飯を食べる。
「夕方からも忙しくなりそうだけど頑張ろうね、楡宮さん」
　海鮮かき揚げ丼を食べている総悟に「頑張ります」と遠海は張り切る。

　夕方の開店時間になってからも、お客さんが徐々に来店した。
「寒い時には、やっぱり鍋だよな！」
　こういう日にはやっぱり鍋が食べたいが、家で１人で食べるのはつまらない。
　なので、たまには外で食べることに。
　寝子島は海の幸が豊富なので、どうせなら魚が美味い店でと思ったが、そういう店はどこだろう。
　そう考えていた龍目豪は、ワイルド飯企画で世話になった魚戸夫妻の店に行ってみるかと『うみねこ』に足を運ぶ。
「いらっしゃい！」
　接客をしながらハルコが挨拶を。
「こんにちは、先日のワイルド飯ではお世話になりました」
「ああ、あの時の！　豪くんだっけ」
「俺のこと、覚えていてくれていたんですね」
　ハルコが自分のことを覚えていてくれたので、豪は嬉しくなった。
「美味い魚が食いたくて来ました！　何かお薦めはありますか？」
　接客中のハルコに代わり、遠海がお薦めを教えてくれた。
「魚をでしたらお造りがお薦めですけど、今の時期なら魚介たっぷりの寄せ鍋ですね」
「鍋か……」
　他にどんなメニューがあるのか確認したいので、席に着き、メニューを見て考えることにした。
　今の時期の『うみねこ』イチオシメニューは鍋。
　魚介類メインの寄せ鍋、鶏肉を煮込んだ水炊き、鶏団子と野菜を入れた鶏団子鍋、牛肉が美味しいすき焼き。
「他にも、いろんな鍋があるんだな」
　メニューに迷いつつ、豪は寄せ鍋を選んだ。
「すいませーん、寄せ鍋、お願いします」
「スープは何にしますか？」
　注文聞きに来た遠海にそう言われ、それも決めるのか……と更に悩むことに。それだけでなく、シメの雑炊とうどんもあるのだとか。
「そうだな……じゃあ、しょうゆで。シメは後で注文する」
「かしこまりました。少々お待ちください」

「お待たせしました、寄せ鍋です」
　鉄製のいろり鍋に木製の蓋を乗せ、固形燃料が入っているコンロ鍋とガスライターが運ばれてきたので本格的だな、と豪は感心した。
　木製杓子と具材とスープを入れる器は1人分だ。
　ガスライターで固形燃料に火を付け、鍋が煮えるまで待つ。
　鍋が煮えたのでアクを杓子で救ったり、具の煮え具合をチェックしたりして食べる。
　まずはケンソウが仕入れたブリから。
「美味い！　やっぱり鍋はいいな！」
　他の魚介も美味い！　と言いながら口の中へ。鍋を食べていくたび、身体もお腹も温まる。
「探検部の奴らも一緒なら良かったな……今度連れてこよう」
　大勢で食べる鍋は美味いに違いない、と思い、機会があれば連れてこようと思った。
「ごちそうさまでした、美味かったです！」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。またおいで」
　レジ打ちするハルコにお金を支払った豪は、鍋で英気を養った。

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