うみねこで鍋を｜リアクション

うみねこで鍋を

●分け合ってお鍋をいただきましょう

　深倉理紗子と深林真瞭が『うみねこ』に向かう1時間ほど前。
　最近、大衆食堂『うみねこ』でアルバイトを始めた楡宮遠海が駆け足でやって来た。
　魚戸ケンゾウ、ハルコ夫妻は鍋の具材の下拵えをしていた。
「おはようございます。今日もよろしくお願いします」
「おう、おはよう。今日も忙しくなるだろうが頑張ってくれ」
　賄い、美味いもん食わせてやるぞ、と豪快に笑って言うケンゾウに「頑張ります」と遠海は張り切る。
「遠海ちゃんが来てくれて助かっているよ」
　平日は夫婦二人三脚で店を切り盛りしているので、遠海が来てくれたことはありがたいと感謝するハルコ。
　遠海がここでアルバイトをすることになったきっかけは、店前に貼られているアルバイト募集の紙を見て。
　魚戸夫妻とはワイルド飯を食べよう企画で面識アリ。
　不安だったが、アルバイトをしたいと申し出たら魚戸夫妻は助かる、と快くＯＫしてくれた。
　ショルダーキーボードをそろそろ新調したいかな、と思ったいたり、年末年始は、いろいろと物入りだったりするので助かった、と安心した。
　それからというもの、先輩アルバイトの鳴鏡院総悟と一緒に学校の休みの日などにお手伝いを。
「楡宮さん、お店の掃除、手伝って」
　掃除道具を手にした総悟に続きネイビーブルーのＴシャツにジーンズ、その上にエプロンをかけて髪には布を巻き、足元はスニーカーと至って動きやすい服装になった遠海は店内の掃除をし始めた。
　掃除を始めた頃は少し寒かったが、身体を動かしているうちに段々と暖かくなってきたので暖簾もかけることにした。

　開店時間になると、少しずつお客さんが入ってきた。
「いらっしゃいませ、空いている席にどうぞ」
　遠海が手際良く接客をし、総悟が注文を聞きに行く。
　それからしばらくして理紗子と真瞭が『うみねこ』にやって来た。
　空いている席に座り、メニューを見て何を食べようか2人で考える。
「冬の鍋をやっているのね。何にしようかしら」
「お鍋、1人分から注文できるみたい。まーちゃん。何にする？」
「何にしようかしら。迷うわね」
　メニューを見比べて、理紗子と真瞭は何を食べようか話し合う。
「ご注文、お決まりですか？」
　注文を聞きに来た遠海に、理紗子は塩スープの寄せ鍋。真瞭はしょうゆスープの鶏団子鍋を注文した。
「まーちゃん、熱燗も頼まない？」
「いいわね。頼みましょう」

　2人の前に運ばれたのは鉄製のいろり鍋に木製の蓋を乗せ、固形燃料が入っているコンロ鍋とガスライター。
　木製杓子は、具材とスープを入れる器に入っている。
　ガスライターで固形燃料に火を付け、鍋が煮えるまで2人はおしゃべりをしながら待つ。
　しばらく経つと煮えてきたので、分け合って食べることに。
「鶏団子鍋、美味しいわ」
「りさちんが頼んだ海鮮鍋のブリも美味しいわよ」
　和気藹々とおしゃべりしながら鍋を食べていたが、こうやって一緒にごはん食べるのって、何か月ぶりかな……と思うと理紗子は涙が出てきた。
「ごめんなさい……まーちゃんと一緒にご飯食べるの、本当に久しぶりだから……」
「りさちん……」
　不意に理紗子が涙を流したので少し慌てたが、真瞭も涙ぐんできた。
「りさちん、熱燗、冷めちゃうから飲まない？」
「そうね。せっかく頼んだんだもの。飲みましょう、まーちゃん」
　鍋を食べ終わったので、ご飯を入れて雑炊に。これも分け合って食べた。
　顔を見合わせ「美味しいわね」と2人は微笑んだ。

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