欲望の果てに望むものは｜リアクション

欲望の果てに望むものは

【浮き輪メガネ男子】

　眩しい海にぷかぷかぷかぷかクラゲのように浮き輪に乗って漂うのは、ひょろりと細いメガネ男子。出会い頭に腕でも当たろうものなら、不気味な笑みをニタニタ。海上での素敵な出会いを求め、漂い続けるのだ。

　ミラの声を聞き、絶神を探しに来た『宮祀青果店』の看板娘宮祀智瑜。１人で海で浮いている怪しい人影を見つけた智瑜はこう思ったのだ。
（まるで何かを監視しているよう……怪しいです！）
　すわ絶神と、勇んで自分も浮き輪で海に出てみた智瑜であったが。
「ね、ねぇ……凄いおっぱいだね」
「！」（ぞわわわわっ）
　メガネ男子に声をかけられ、文字通り鳥肌が立った。何これ気持ち悪い！　それに私には心に決めた人が！
（同じメガネなのに大違いですっ！）
　……おっぱい好きは同じだと思いますが。
　まあ兎に角普通の智瑜であればこれはひとまず退散している所だが、今回は違った。寝子ヶ浜を覆う欲望の影響で、どうにも人恋しくてその場から立ち去れないのだ。
（ああどうしよう）
　智瑜が逃げないのでメガネ男子はニタニタ寄り添い、海水にぷかぷか浮く智瑜の胸をガン見してくる。―――こ、これは貞操の危機？！
　しかし智瑜は人と繋がりたいという欲望の狭間でも、何とか理性を保っていた。恐らく恋する人のお陰かもしれない。
（私が本当に繋がりたいのは、あの人。そして今、彼も住む寝子島が危機なんですから）
　嘘のようにすうっと気持ちが落ち着いた。智瑜は一呼吸置くと、メガネ男子の気持ち悪い笑みを、真正面から捉えた。