膝をかかえて、空を見上げて｜リアクション

膝をかかえて、空を見上げて

　日は高く、空青く、そしてやっぱり、冬を忘れさせる暖かさ。
　アリサはぶらぶらと歩いている。
　さて何を食べようか。
　市街地に入ると飲食店がぽつぽつと目に入るようになった。ラーメン屋、イタリアン、かと思いきやまたラーメン屋、牛丼チェーン……取り立てて『コレ！』といった希望はない。
　当てずっぽうで通りを選んで、フィーリングで角を曲がったりしているうちに、アリサの足は『ザ・グレート・タージ・マハル』なる店の前で止まった。
　ふーん、インドカレーか――。
　入り口にはガネーシャ象みたいなものが飾られている。英語とヒンディー語の記載もある。たたずまいからしてどうやら本格派らしい。
　こんな店あっただろうか、少なくとも入ったことはない。
　カランコロンとドアベルが鳴る。
　ドアを開けると、マサラというのであったか、刺激的な混合スパイスの香りがアリサを迎えた。インド映画のサントラらしき軽快なBGMも。
「いらっしゃいませー」
　奥から、口ひげをたくわえたインドの人らしき店主が顔を見せた。コックさんの白い帽子とエプロン、にこにこと笑っている。
「ここ来るのはじめてなんですけど」
「それは嬉しいことですよ。ナマステ、私店長のアーナンド・ハイイドと言います」
　手を合わせてアーナンドはあいさつした。思わずアリサも同じポーズを返す。
「私、辛いもの苦手なんだけど、大丈夫？」
「もちろん大丈夫、カレーの辛さ、工夫してますよ。マイルドテイストも充実ね」
　ランチセットを選ぶ。カレーは二種類、チキンカレーと茄子入りキーマ、もちろん辛さは最弱（マイルド）だ。
　一口する。まったく辛くない。なのにトロトロ濃厚で、口にしたときはまろやかなのに、しっかりコクのある後味なのだ。自分の顔ほどもありそうな薄焼きナンにつけて、あるいは小盛りのライスと合わせて食べると味わいは倍増だ。つけあわせのサラダには、クリーミーなオレンジ色のドレッシングがかかっている。さらには、真っ赤だけど辛くない、香ばしいチキンティッカと、パパダムという名のカリッと焼いた米粉クラッカーまでついて、思わずメニューを再確認してしまうくらいリーズナブルな料金なのも嬉しい。
「超絶美味しい！」
「ありがとうございまーす」
「この店のこと知らなかった」
「はい、元々ランチ営業だけですからー。少し前までは、私病気してたので平日閉めて土日祝だけバイトの子で回してたね」
「あ、そうか今日平日だから」
「おかげさまで復帰したですよ」
　なんだかいい話が聞けた。ごちそうさま、と手を合わせると、店長は次回使えるサービス券を出してくれたのだった。
　店を出てもやっぱり良い天気だ。
　もう過去の記憶にとらわれたりはしない。
　いいサボり日にしよう、と前向きにアリサは思う。
　どうせ明日からクリスマスやら年越しやらで休む暇はないのだから、今日はのんびり羽を伸ばそうじゃないか。
　今度は何をしようかな。
　猫スポットで日向ぼっこもいいよね。

　――『膝をかかえて、空を見上げて』　了

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あとがき

担当マスター：桂木京介
ファンレターはマスターページから！

　ご参加ありがとうございました。

　今回は、あなたのスカジャン☆あなたの和のプレゼントシナリオということで、少しサービスを盛り込んで作成しました。

　キャラクター同士の会話が多かったので、テンポ良く書けたという印象でしたが、皆様はどんなご感想をもたれたでしょうか？
　ご意見ご感想お待ち申し上げております！！
　桂木京介でした。

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