膝をかかえて、空を見上げて、白い雲のたなびくのを眺めている。
お気に入りの桜柄ロンTに袖を通し、これまたお気に入りのスカジャンを羽織って、
真境名 アリサは緑の丘にいる。遠くには海、視線を下げると名も知らない島が、波に洗われているのが見えた。
寝子島のいいところは、こんな風に眺めのいい場所が、徒歩圏内のあちこちにあるところだ。
カレンダーによればとっくに十二月なのだけど、今日はやたらと暖かい。風はないし日もさんさん、まるで冬が、冬であることをサボっているかのようだ。
サボってるといえば、あたしもかあ。
などとほんのり考えた。まあ実際のところ今日は夜も店は休業で、とりたてて予定もないというだけのことなのだが。
だからといっていそいそと街へ出かけたり、資格の勉強のひとつでもしてみるなどといった、殊勝な気持ちにもなれないのだった。能動的な活動は、なにひとつ。
ま、いわば人生のサボり日ね。
アリサは、あくびをした。
サボり気味の冬のサボり気味の昼が、目ざめたての猫みたく、至極ゆっくりと訪れようとしていた。
----+----+----+----+----
腕は銀、胴は赤、背中には昇り龍の刺繍。
左右の胸にも踊る龍、サテン生地のテカテカ具合、お手本みたいなスカジャンだ。
もっと堂々としていればよかろうに、
詠 寛美はこの格好で居心地悪げにしている。下が制服のスカートなのも、なにやら木に竹をついだような。
こういう服、はじめて買ったからな――。
寛美に服の知識はほとんどない。
お嬢様育ちだったので、これまでの人生、服といえばほとんどが買い与えられたものだった。実家を飛び出してからは、稽古着と制服でたいていの用はすませてきた。だからスカジャンは、彼女なりに一生懸命考えた『悪そう』な服装なのである。そのチョイスはともかくとして、着こなしのほうは伴っていない。
ぎこちない手つきでチャックを上げた。
寛美にとってこの服は鎧だ。
家に戻る気はないと、無言で送るメッセージだ。
寛美の父親、
公村 厳(きみむら・いわお)は一命を取り留めた。
彼はひとりで寝子島までリムジンを運転し、誤って海に転落したのだと強固に主張したという。
よく言うぜ、と思う。
んなハズねぇだろ、運転手なしで来ただと? 海に落ちて大怪我だと?
厳は権力者だ。なんらかの手段で警察に手を回し、事故として処理させたに違いない。
まあ、それはどうでもいいことだ。
寝子島総合病院。
寛美はいまから、その父親を見舞う。自分で決めたのだ。
なのに病院入り口の自動ドアをくぐっただけで、もう引き返したくなっている。
----+----+----+----+----
「私がですか?」
やだなあ、という本音が声と顔に出ないよう、寝子島中学教師
今道 芽衣子は努めた。
……でもすこし、出てしまったかもしれない。
不登校になった生徒の家庭訪問だ。それ自体は教職員として当然の職務だと芽衣子も思っている。
問題はその生徒が、
脇坂 香住(わきさか・かすみ)だというところだ。
あの子に嫌われてるからなあ、私――。
----+----+----+----+----
そんな、冬の一日。
桂木京介です。
真境名 アリサさま、当選おめでとうございます。ご指名をありがとうございました!
ご参加に際しては、ガイド本文にかかわらず自由にアクションをかけてくださって大丈夫です。
(いまはサボり状態かもしれませんが、昼から突然元気に活動するというのもいいですね。人間ってそういうものですから)
シナリオ概要
冬の一日をすごす日常シナリオです。
この時期のある一日のある場面を切り取って描写させていただきます。
休日、平日、昼夜も天候も自由です。
特徴があるとすれば、暖冬というか、春みたいに暖かいということでしょうか。
イラスト応援キャンペーン『あなたのスカジャン☆あなたの和』に関連するお話ですけれども、とくにこのテーマにこだわる必要はありません。(もちろん、こだわってくださってもウェルカムですよ)
イベント続きの寝子島、今月だってクリスマスが控えておりますけれども、もちろん、とくになにもない一日だってあるわけです。
膝をかかえて空を見上げて、ぼんやりとすごすのも大切なひとときです。
暮れゆく街を友だちや彼氏彼女と、楽しくすごすのもいいでしょう。
部屋の掃除だって洗濯だって、あなたが生きているというだけで意味があるのですから。
シチュエーションについて
シナリオガイドではNPCに状況を用意していますが、仮にかかわるとしても、このシチュエーションに続ける(あるいは参加する)必要はありません。
NPCについて
NPCのご指定があれば、100%は保証できないもののできるだけ出すよう調整します。
※NPCとアクションを絡めたい場合、そのNPCとはどういう関係なのか(初対面、親しい友達、ライバル同士、恋人、運命の相手など。参考シナリオがある場合はページ数まで)を書いておいていただけると助かります。
また、必ずご希望通りの展開になるとは限りません。ご了承下さい
あなたのご参加を楽しみにお待ちしております。
次はリアクションで会いましょう。桂木京介でした。