お疲れ、中間試験！　打ち上げの流しそうめんパーティー！｜リアクション

お疲れ、中間試験！　打ち上げの流しそうめんパーティー！

「あら、パートナーが待っているんじゃないの？」
「あっ……」
　その一言で、信彦は我に返る。桃色そうめんの影響で惚気話をしまくっていた結果、相手を待たせてしまっていたのだ。彼は慌てて頼まれた飲み物を注ぎ、ベガの元へ急ぐのだった。その背中を見送り、冴来は小さくため息をつく。
（仲のいい友人、いつか私にもできるのかしら。できるなら、とびきり変わった子がいいかしら）
だって、フツウだなんて、つまらない。そう付け加えながら彼女は優しく微笑見ながらオレンジジュースを飲み、瞳を細める。
（あの子も、変わってるわね）
　冴来は遠ざかる信彦の背中を見、もう一度くすりと笑った。

　その後、心からベガに謝った信彦は楽器を奏でながら彼女への愛を語るのだが、それがまた妙に風流で周りの人々もさほど気にならなかったらしい。ただ、ロンリーウルフ達にとって苦痛なだけであった。

　一方、瑠奈は頼まれた分の飲み物を用意しつつじーっ、と麦茶とコーヒーのペットボトルを見る。
（なんか変わったのがあったら持っていこうかな）
　そこで冷やしあめと書かれた缶やらおしるこやら甘酒を見つけた彼女はそれもついでに持っていく。そして受け取った面々は冷やしあめとおしるこの甘さにノックアウトされたという。因みに冷えた甘酒は意外と好評だった。

＊ひやしあめ
　麦芽水飴または米飴を湯で溶き、生姜の搾り汁や卸し生姜を加えた飲料で香り付けにシナモンをつけることがある。関西地方で普及しているらしい。

　飲み物を運ぶ途中、彼女の脳裏に浮かんだのは最近見かけない人の事だった。とある放課後に背中を見たっきりの人の他、何人もいる。玄関に飾ってある紫と白のバラを思い出しつつも、今、この時を楽しもう、と瑠奈は思い直した。

　一方こちらはのんびりコース。もじもじしながらも流しそうめんをたんのうする葛城璃人と高尾日菜は頬を赤くしたままだった。
（もう少し、もう少しだけ…って。いつになったら、進めるんだろうね。進もうとしないと、進めないのに）
（もう少しこのまま…と、ずっと立ち止まっていたけれど、そろそろ勇気を出して進まないといけません。だって、この気持ちは抑えられないから）
　互いにそんな事を思いつつ、静かに食べていた２人だったが、ふと、下流の方をみて首を傾げる。そこではナタリア・シシロヴァと小倉杏子が食事をとっていた。それなのに空気がちょっと違うのは何故だろうか？
　あまりにもうるさかったので桃色そうめんを杏子の口につっこんだナタリアだったが、杏子は普段よりかなり積極的にナタリアへスキンシップを取ってくる。
「えへへ～。ナタリアさんと一緒で楽しいでありますぅ♪」
　今も抱きつきながらご満悦。そこでナタリアは少しからかってみることにした。
「ふふ、今日は積極的ですね？　どういう風の吹き回しですか？」
「なんだかよく分からないけど、とーってもナタリアさんとこうしていたいのであります！」
　でれでれした表情で頬を寄せる杏子。ナタリアは内心でふむ、と唸りながら空を仰いだ。眩しい太陽に照らされ、水分が足りなくなってくる。
「暑いですね。杏子、スポーツドリンクをもらえませんか？」
「はい、であります！」
　こっそり頼めば、杏子は元気よく飲み物を取りに行く。従順なその姿はなんだか犬……しかも日本スピッツ……のような印象を受けた。
（これはもしかして……）
　一方のナタリアは、走ってくる杏子の様子を見ながら考察を続ける。そして、効果が切れた頃に静かに、色付きそうめんが神魂の影響を受けていたのかもしれない、と漏らすのだった。

（色つきのそうめんを食べると、精神に作用が起こるです？）
　璃人が首をかしげていると、日菜はなんとなく予想がついてしまった。
「桃色を食べると、恋バナをしたくなるのかもしれないね」
　そして、食べなくてよかった、と心から思う２人であった。けれども、食べてなくても十分甘酸っぱい光景を見せていた、と後に目撃していた桜栄理事長は語った。

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