【お三夜】猫と鼠と人と悪魔、四つの世界が交わる夜｜リアクション

【お三夜】猫と鼠と人と悪魔、四つの世界が交わる夜

　恵御納夏朝はたこ焼きを平らげた。口元に付いたソースを親指の腹で拭き取り、口に含んだ。続け様にペットボトルを開ける。喉を鳴らして一気に飲み干し、大きな息を吐いた。
「夏朝には感謝だね。お祭り、本当にいいよね」
　柔和な顔は突然、厳しい表情へと変貌した。派手な足音でゴミ箱に行き、底を目掛けてペットボトルを投げ込んだ。
　直後に木に立て掛けていた錫杖を手に取る。一度、空間を横薙ぎにした。

「楽しいお祭りを邪魔するなんて、絶対に許せない！」
　錫杖を持った姿は山伏を連想させる。背中には烏天狗のような翼を取り付けた。祭りを反映して黒い猫耳と尻尾も装着。運動靴は衣装に合わせて白く、靴紐は袴の色と同じ赤であった。
「僕は夏朝のように甘くない」
　別人格、夏夜は片方の口角を釣り上げた。袖に手を入れて一枚のねこシールを取り出し、自身に貼り付けた。
　ろっこん『重く軽く』を発動。自在に重さを変える能力で自身を軽くした。
「待っていろ、悪魔共！」
　瞬間、地面を蹴った。急上昇を果たした夏夜は上空から地上を見下ろす。
「あそこか！」
　くるりと向きを変えて急降下。頭から突っ込んでいった。