ころころ寝子島すごろく｜リアクション

ころころ寝子島すごろく

●２人旅

「お、お、おおお～！？」

　パトリシア・プロウライトは眼前の光景に目を丸くする。

「はえー！　すごい！　寝子島全部がおっきなすごろくになってる！　私たちはそーんな不思議の中なんだねぇ！」

　パトリシアは興奮気味に語る。

「じゃあ、もしかして人目を気にしないでマルクといっぱいお喋りしてもヘーキかな！？　やったね、マルク！」

　被っているお気に入りの犬耳帽子に話しかけた。するとろっこん『いつでもいっしょ』が発動し、その帽子に成人男性の人格――マルクが現れた。

「一緒に頑張ろうねぇ！」
「ああ」

　さっそくサイコロを振る。初めに向かったのはまたたび市動物園。

「飼育員さんは居るかなっ！？　制服のつなぎを動物がもしゃもしゃして、くしゃっとしてたりするの、かわいいよねぇ！」

　するとなぜか外にいるシロクマが近づいてきた。

「……えっ！？　乗せてくれるの！？　凄い凄い！　パティさん、くまに乗るの初めてだよ！！　れっつごー♪　ひゅわー！」

　しろくまの背に乗ってマスを大きく前進する。そのまま寝子島小学校の近くまで運んでくれた。パトリシアが背中から降りると、動物園のほうへ戻っていく。

「しろくまさん、送ってくれてあーりがとー♪」

　しろくまを見送りながらパトリシアはご機嫌な様子で手を振る。

「さってさて、２回目のサイコロ、ころーん！」

　出た目に従って進むと、キャットロードのカフェで１回休みというマスだった。しかし、パトリシアの目は輝いていた。

「はっ！　ここは！　パティさんお気に入りの素敵カフェじゃないですか！」
「そんな場所あったのか」
「ここはね、カフェオレもケーキもおいしいんだけど制服がしゅっとしてて格好いいんだよ～～！」
「……そうかよ」
「えへへ！　えへへへ！　ひっとやすみ、ひとやすみ～♪」

　浮かれ気分のパトリシアにマルクは呆れ顔だが、そんなことは気にせず入店して注文する。

「ん～ふふふ～。ふわふわシフォンケーキにベリーソースとホイップクリームがおいしい～！」
「わかったから落ち着け」
「カフェのお兄さんも細腰にカフェエプロンがカッコイイ～～～しあわせ～～♪♪」
「……はいはい」

　１回休みを目いっぱい満喫したパトリシアは満足そうな顔で店を後にすると、サイコロを振った。今度止まったマスでは海に向かって愛を叫ぶ、という指示があった。

「えー！？　何について叫ぼうかなぁ」

　頭の中では警官のきっちりした制服から覗く鍛えられた体のかっこよさとか、アレンジのバリエーションが非常に豊富な寝子島高校の制服など際限なく浮かんでくる。

「……ここはシンプルに！　制服男子、サイコーーーッ！！」

　どこまでも届きそうな声が響き渡った。
　その後は野良猫とじゃれあったり、新たな素敵カフェとの出会いがあった。猫の毛だらけにされたマルクが不満そうだったり、２店目のカフェでもため息をつかれたが、それも含めて楽しそうだ。
　最後は６の目で一気にゴールへ飛び込んだ。

「わーーい！　一気にゴールだよ～……はっ、まぶしい！！」

　目の前には『ステッラ・デッラ・コリーナ』がある。実際に輝いているわけではなく、あくまでパトリシアの主観である。

「格好いいホテルマンさんがたくさんでご褒美だよ……！　困ったお客さんを気遣いで助けるヒーローだねぇ」
「ヒーローっておおげさな……」
「それに制服はね～、それぞれのお仕事に絶対ピッタリだから、そんな機能美（？）とかが素敵なの」
「そういうもんか」
「せっかくだから見ていこうかな」

　マルクのため息を聞きながら、意気揚々と建物に入っていった。