ころころ寝子島すごろく｜リアクション

ころころ寝子島すごろく

●いつもと違う体験

　御巫時子は気が付いたら寝子島駅の前にいた。どうやら寝子島全体がすごろくになっているようだ。

（神魂の影響でしょうか……？）

　そう思って見渡すと、寝ぼけた様子の五十嵐尚輝先生の姿があった。時子は近づくと、すぐに声をかけた。

「尚輝先生！」
「御巫さん……？」

　五十嵐先生は旧市街に住んでるから、ここにいてもおかしくない。普段と違う島の様子に困惑しているようだが、何かの催し物だと解釈したらしい。すごろくを一緒に進むことにした２人。
　時子がサイコロを振ると、６が出た。幸先のいいスタートを切れそうだ。

「尚輝先生、行きましょう！」

　着いた先は寝子島総合病院。なにやらスペシャルな看護を受けられるらしい。

（スペシャルな看護が何か気になります）

「尚輝先生は体調はいかがですか？　私は良いと思うんですが……」
「僕も特には……」

　そうは言っても五十嵐先生が常に低調なことを時子は知っている。折角の機会なので、2人そろって看護を受ける。なにやら体の調子が良くなったような気がする。
　先生も見た目は変わってないが、どことなく回復したように感じた。そのまま１マス進み、寝子電スタジアムへ。

　今まさにサッカーの試合をしているようで、時子は気になって尚輝先生を引き連れてスタジアムへ寄ってみた。座りながら観戦するので休憩もできそうだ。

「尚輝先生、疲れてないですか？」
「大丈夫です。御巫さんはどうですか？」
「私も大丈夫ですよ」

　ゆったり座りながら展開の早い試合を眺める。
　ボールが忙しなくお互いのゴールを目指して移動している。その様子と並んで座った観客席で楽しむ。最後までどちらが勝つか分からない展開に２人はすっかり見入っていた。
　試合が終わり、時子たちはスタジアムを後にした。

「すごい試合でしたね」
「そうですね」

　そんな話をしながらすごろくの続きを再開する。
　出た目に従って進むと、なにやら怖い顔をした警官がこちらを見ている。嫌な予感がしたのも束の間、その警官がこちら目掛けて駆けだした。

「尚輝先生、逃げましょう！」

　時子は五十嵐先生の手を取って、咄嗟に逃げた。

（何か誤解されてそうですが……あの様子だと話し合いは難しいでしょう）

　追いかけてくる警官の顔をみながら、時子はそう感じた。五十嵐先生は訳も分からず、時子についていくように逃げている。
　どれほど逃げただろうか。どうにか警官を撒くことに成功した。

「はぁ……はぁ……もう大丈夫そうですね、びっくりしました」

　呼吸を整える２人。
　そのときふと、時子は五十嵐先生と手を繋いでいることに気づいて、恥ずかしさから顔を隠した。

「さ、さぁサイコロを振りましょう」

　それを誤魔化すようにサイコロを振る。
　このマスでは６が出ると戻されるようだが、それは回避できた。
　そして次に出た数でゴールに到着した。

「なんとかゴールに着きましたね」
「そのようですね」
「折角ですし、ここで食事していきませんか？」

　目の前には高級レストラン。
　２人は店内ですごろく中に起こったことを振り返りながら食事を楽しんだ。

「新たな発見は無かったですがいつもと違う体験はできました。楽しかったですよ」

　時子は五十嵐先生のほうを見ながら、笑顔でそう話した。

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