ころころ寝子島すごろく｜リアクション

ころころ寝子島すごろく

●すごろくと猫の癒し

　恵御納夏朝は眼前の光景に驚いた。

「寝子島全体がすごろくに……これも神魂の影響かな？」

　こういった異変自体には慣れているし、害が及ぶようなものでもなさそうだ。気づけばその手にはサイコロが握られていた。

「猫さんサイコロ、可愛い……！」

　反対の目が地面に接することに少し申し訳なさを感じながら、そっところころと振ってみる。

「猫さん何匹来てくれるかな……えーい！」

　出た目は６。さっそく進んでみると、そこは病院だった。
　体が充足するようなスペシャルな治療を受けてさらに１マス進んだ。

「これでもう少し進め……」

　と言いかけて、寝子電スタジアムのほうを見ると、サッカーが行われている。そこに猫が乱入した様子が映し出された。

「えっ、サッカーに猫さん乱入！？　これは気になる……！」

　ついつい足はスタジアムへ向かっていった。
　白熱する試合と乱入した猫という不思議な組み合わせが展開されていた。夏朝はサッカーよりも猫の様子をずっと追いかけていた。

「猫さん可愛かったなぁ……」

　試合中に猫はどこかへ行ってしまったが、その姿はちゃんと覚えている。気を取り直してサイコロを振った。出た目に従って歩いていくと、絶妙な角度とタイミングで空き缶を踏んでしまう。
　まるで映画の１シーンのように体が一瞬浮き、そのまま尻もちをついてしまった。

（……これは痛い……！）

　空き缶をゴミ箱に捨ててから病院へ逆戻り。
　今度は転んだときの擦り傷なども見てもらい、万全に回復。ふたたび寝子電スタジアムを通ると、まだ試合が続いていた。

（ん！？　またしても猫さんが乱入してる！？）

　猫が見たい。
　その気持ちだけで夏朝はふらふらとスタジアムへ吸い込まれていった。

「可愛かったなぁ……」

　先ほどとは違う猫がグラウンドを駆ける様子を満喫した夏朝。
　ほくほく顔でサイコロを振る。すると進んだ先で、いきなりお巡りさんが追いかけてきた。

「待てー！！」

　何もしていないのだが、つい条件反射で逃げ出してしまう。

「いや僕何もやってないからー！？」

　口でそう言いつつも足は警官から遠ざかろうと必死だ。警官が追い付いてから、どうにか事情を説明し、ようやく誤解が解けた。

「な、何とか誤解だってわかってもらえた……！　気を取り直して……次はいいことあるといいなぁ……」

　息を整えつつサイコロを振る。６が出たので、一気に進む。

「やった！あっ、しまった！　猫さんがいそうな所を通り過ぎた！？」

　のんびり過ごすノラ猫たちを横目に、夏朝は進路に従って足を運ぶ。

（猫さんー……）

　残念に思いながら星ヶ丘駅の前を通り、星ヶ丘マリーナが見えるあたりまでやってきた。すると先ほどのノラ猫たちとは違ったタイプの猫たちが集まっているのを見つけた。夏朝が近づくと、自然と集まってきた。

「星ヶ丘の猫さんたちも、ふわふわで可愛い……！」

　撫でたりじゃりしたりと、幸せな時間が流れる。夏朝はひたすら癒されて、微笑みを浮かべた。十分に癒されたところで、すごろくに戻る。

「猫さん達、ありがとー！　このまま突き進めば……！」

　ゴールは目前。
　渾身の一投は、悪いことが起きそうな所を通過して無事にゴールした。

「よし、悪いことが起きそうな所は通過した……そしてあがったー！　高級レストランで豪華な食事……楽しんでみようかな？」

（寝子島すごろく……猫さんサイコロも可愛かったし、楽しかった……本当に、ありがとう！）

　夏朝は心のなかで感謝をつぶやくと、レストランへと足を運んだ。

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