ころころ寝子島すごろく｜リアクション

ころころ寝子島すごろく

●憧れとの出会い

「寝子島がすごろくになってるー！？」

　寝子島の異変に対して多喜美律は声をあげた。しかし、その声色には好奇心がにじみ出ていた。

「体感型ゲームっぽいしやってみたら案外楽しいかもしれないわ。よし、ゴールを目指すわよ！」

　そうと決まればさっそくと言わんばかりに、手に握られた猫仕様のサイコロを振る。出た目は４。それに従ってマスを進む。着いた先はまたたび市動物園だった。

「動物園に着いたけど……しろくまが外を歩いてるぅ！？」

　悠然と歩くその姿に思わず驚いてしまった。しろくまは美律のほうを見ながら、姿勢を低くした。

「背中に乗れってことかしら？　じゃあ遠慮なく！」

　毛皮のモフモフした感触を楽しんでいると、しろくまが急に走り出した。

「って走り出したー！？　どこ行くのーー！！」

　振り落とされるほど早くないが、それでも胴体にしがみつく。
　どこまで行くのだろうと思っていると、寝子電スタジアムで止まり、ふたたび姿勢を低くした。美律はゆっくりとその背中から降りる。そして、しろくまは何事もなかったかのように動物園へと戻っていった。

「びっくりした……でも、もふもふは堪能できたし。ま、いっか」

　寝子電スタジアムではちょうどサッカーの試合が始まろうとしていた。せっかくなので観戦しようとスタジアムへ足を運んだ。序盤から終盤まで予想のつかない接戦で、会場も美律も盛り上がった。

「やっぱり生で見ると迫力が違うわね！」

　スタジアムを出ると興奮気味に美律は言った。白熱した試合に満足したところで、サイコロを振る。出た目は６。これはラッキーと軽い足取りでマスを進むと、寝子ヶ浜交番の近くで止まった。

「順調順調～ってお巡りさんだ、なにかあったんですか？」

　そう問いかけると、警官はじっと美律の顔を見た。どことなく疑いのまなざしを感じる。直感的に良くない流れを察した美律は逃げだした。警官はその後ろ姿を追いかける。どうやら何かの犯人に間違えられているようだ。

「何かの間違いよー！　っていうか何の事件なの～～～！？」

　せっかく６が出たのにこの展開は悲しい。結局捕まり、交番でいろいろと聞かれた。どうにか誤解を解こうと必死に説明してようやく解放された。

「疲れた～……あ、サイコロ振らなきゃ」

　今度はいいことが起こりますように、と願いながらサイコロを振る。向かった先では野良猫がのんびり過ごしていた。美律が近づくと、警戒するどころか寄ってきた。人懐っこいのか、美律の近くで寝転がる。

「ふふ、かわいい～あぁ癒されるわ～」

　猫のもふもふを存分に堪能する。猫は逃げるような素振りもなく、美律に身を委ねている。しばらくモフモフ空間を楽しんてすっかり元気になった美律はすごろくを再開した。

「元気が出たわ、ありがとね猫ちゃん」

　そういって別れると、サイコロを振った。着いたマスでは、なにかいいことが起こる予感がした。その予感を探すように周囲を見渡す。すると寝子サンマと浜マンボウが歩いているのが見えた。
　美律は２人のファンなので、すぐさま手を振った。

「２人とも今日も素敵よー！！」

　２人は美律の声に気づくと手を振り返した。

「やった！　気づいてくれたし、手を振ってくれた！」

　美律は２人を見かけたことで、すっかりご機嫌になった。意気揚々とサイコロを振り、ゴールぴったりでクリアした。

「到着！　なんだかんだで楽しかったわ！」

　警官に勘違いされたときはどうなるかと思ったが、それでも楽しいと思えた。そして目の前には高級レストランが待っていた。

「折角ここまで来たんだし、行ってみようかな。高級な所は初めてだけど何事も経験よ、楽しみね！」