ころころ寝子島すごろく｜リアクション

ころころ寝子島すごろく

●たくさん詰め込んで

　日々野結衣香は寝子島全体がすごろくになっていることに気づいた。楽しそうなのでリュックサックにいろいろ詰めてスタート場所である寝子島駅前に立った。

「ではさっそく振ります！」

　猫の絵が描かれたサイコロを勢いよく振った。出た目は２。数に従ってマスを進むとそこは寝子島神社だった。
　せっかく神社に訪れたので、神様にお願いしようと境内を進む。進んだ先にある建物の前で、目をつむり手を合わせる。

（この旅が無事に終わりますように。あと、いいことありますように）

　その願いが届いたのか、マスを大きく進み、気づいた時には寝子島中学校の近くに移動していた。頭にハテナマークを浮かべる結衣香。
そして、そのマークを消し去るように頭上からタライが降ってきた。突然のことに困惑している。

（痛い……調子に乗るなってことでしょうか……）

　気を取り直して、サイコロを振る。
　出目次第では寝子電で大移動だったが、残念ながらそのチャンスは逃してしまう。

（仕方ないです……）

　結衣香はてくてくと歩いていくしかないと割り切って進む。それでも表情は暗くなかった。

「でも、サイの目次第ってところが面白いです」

　テーブルの上でコマを進めるのではなく、自分自身が大きなマップを歩いているのも楽しいと感じる要因かもしれない。着いたマスでは海に向かって熱唱するという指定があった。

（海に向かって歌う、ですか。ここは校歌を歌うのがベターでしょうか）

　結衣香の歌う校歌は海の風に乗って飛んでいく。そこに自然に馴染むように、こっそり時代劇の歌も歌ってみる。口笛で吹くと、ろっこん『武士召喚』で『ござるさん』が出てきてしまうので、そこだけは気を付けて時代劇の歌を楽しんだ。

「ふふふ♪」

　海に向かって歌ったことで３マス進んだ。しかしここで６が出るとかなり戻らなくてはならない。

「え、戻りたくないから出ませんようにー！」

　出た目は１。どうにか逆戻りは避けることができた。
　安堵の心で１マス進むと、そこでは海を見ながらお茶を楽しもうと書かれている。

「こんなこともあろうかと！」

　結衣香はリュックサックを開けるとマイボトルを取り出した。なかに入っている紅茶を海の音を聞きながら味わう。

「海を見ながら飲む紅茶は美味しいですねぇ～」

　ほっと一息つきながら、のんびりした時間を過ごす。しばらくそんな時間を楽しんだ後、すごろくに戻る。その後はハプニングもなく、無事にゴールすることができた。

「やっと着きましたねー。いろいろありましたが、楽しかったです。タライが頭に落ちてきたのは地味にショックでしたけども。それでも参加できてよかったです」

　ゴール地点で結衣香は笑顔を浮かべた。

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