ころころ寝子島すごろく｜リアクション

ころころ寝子島すごろく

●時計ともふもふ

「あれ？」

　佐藤瀬莉は首をかしげた。
　ついさっきまで星ヶ丘の自宅にいたはずが、なぜか外にいる。

「ここって寝子島駅前……？」
　
　何が起こっているのか確かめようと周囲を眺める。どうやら寝子島全体がすごろくになっているらしい。その手には猫で数を示したサイコロがある。

「寝子島がすごろくになってるのか……面白そうだね」

　きっと神魂の仕業だろう。
　けれど瀬莉は退屈はしないだろうと思い、サイコロを振ってみる。

「えいっ！」

　一投目の数字は１。
　小さい数字にがっかりしつつ、１マス進んだ先で筋トレをすることに。内容はヒンズースクワットと腕立て伏せを２０回ずつ。

「……１８……１９……２０っ……！」

　瀬莉は目標数に達するころには息があがっていた。筋トレの類は普段やっていないため、なかなか厳しい。

（今度は大きい目で進みたい）

　息を整えつつ、サイコロを振る。出た目は１だった。

（２連続で１かぁ……）

　しょんぼり顔で向かった先は寝子島神社だった。神社に来たならばお参りをしようと思い、鳥居をくぐる。賽銭箱の前に立って５円玉を投げ入れて、目を閉じ、手を合わせる。
　すると、何かが天に届いたのか、目を開くとそこは寝子島中学校の近くだった。
　戸惑っている瀬莉の頭上に猶予を与える間もなくいきなり金たらいが降ってきた。

『ガ～ン！！！』

　漫画に大文字で表示されそうな効果音が響く。思わぬ衝撃で変顔になった瀬莉は足取りがふらつく。

（いったぁ～…！！！　空からたらいが降ってくるなんてどういうわけ！？）

　まるで大昔のコントのように、その辺にひっくり返った。
　怒涛の展開にようやく頭が追い付いたところで、ゆっくり起き上がる。

「いたたた……」

　たんこぶなどは出来てないが、まだ少し痛い。でもしばらくすれば収まるだろう。

「気を取り直して……えいっ！」

　今度は４が出た。
　数字に従って進むと、海岸が見えるところまで来た。このマスは海に向かって愛を叫ぶらしい。

「海に向かって愛を叫ぶの？　えーと……」

　考えながら、大きく息を吸った。

「あたし、時計が大好きだよー！！」

（こ、こんな感じでいいの？）

　恥ずかしかったが、気分はスッキリした。スッキリしたところでサイコロを振る。今度は海辺のカフェにたどりついた。なかへ足を運ぶと、アフタヌーンティーを満喫する。

「筋トレしたり、たらいに当たったり、叫んだりで疲れたしね」

　海の音を聞きながら静かに流れる時間に身を任せる。気分も落ち着いたところで、何度目かのサイコロを振る。向かったマスで、何かいいことが起こりそうだと瀬莉は感じた。
　そんな瀬莉の目の前に、ふわふわとしたぬいぐるみが現れた。突然出てきたので驚いたが、害はなさそうだ。恐る恐る撫でてみる。

（あっ、すごく柔らかい……）

　撫で心地がよく、ぎゅっと抱きしめるともふもふ感が気持ちいい。しばらく瀬莉はそのぬいぐるみと戯れた。十分満喫したところでサイコロを振り、ゴールへとたどり着いた。

「ゴール！」

　瀬莉は笑顔でゴール宣言をした。目の前には『ステッラ・デッラ・コリーナ』があった

「このホテル、ご近所だけどあまり行かないなぁ。家族で食事に行くとかお茶を飲みに行くとか、そんなときくらいだものね。中を散歩するかな」

　のんびりとした足取りで瀬莉はホテルのなかを散策した。

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