秋の夜長に……｜リアクション

秋の夜長に……

●恋人と秋の星座の夜長

　旧市街の自宅にあるお風呂からあがった城山水樹は、湯冷めしないように自分の部屋に戻る。
　時刻は午後10時。
　髪をドライヤーでセットしながら乾かしてから早めにベッドに入り、いくつかのファッション誌に目を通しているうちに眠くなり、いつしか眠りにつく……はずだが、寝付けない。
　湯冷めしないように気を付けていたのだが、身体が冷えきて目が冴えてきたのだろうか。
　なぜか妙に気分も冴えて、眠れそうにない。
　明日は撮影の予定はないし、大学の授業も昼から。
　だからといって、モデル稼業に夜更かしは禁物なのであまり夜更かしもできない。
「部屋を暗くして、ベッドの中でじっとしていれば眠れるわ」
　そう思い、部屋の電気を消してベッドに潜り込む。
　眠れるまでじっとしていようと思ったが、一向に眠れない。
「仕方ないわね」
　ベッドから下りて、窓に近寄る。外には一面の星が輝いている。
「星空……綺麗」
　しばらくは窓から満天の星の海を見ていたが、不意にヒュー・ヒューバートのことを思い出した。
「今頃、何してるかな？」
　彼の声が聞きたくなったので、スマホに手を伸ばして電話をかける。

　水樹が眠ろうとした少し前。
　ヒューは仕事先から木天蓼市内のアパートにある自宅に帰ってきた。
　食事は既に済ませたので、荷物類をひとまず片付けてから、冷蔵庫から缶コーヒーを取り出して飲む。
　今日も1日疲れたが、明日もまた仕事だ。
「缶コーヒーを飲み終えたら風呂にでも入って、さっさと寝てしまおうか。明日もハードな日程だし、少しでも休んでおかないと」
　そう思い、腰を浮かしかけたらテーブルの上のスマホが鳴った。

　まだ出ないのかしらと思いながらコール音を聞く水樹は、数度のコールでヒューの声を聞けてホッとした。
　何かな？　と思いつつヒューが電話に出ると、水樹はあれこれと聞いてきた。
「ヒュー、私。水樹よ。ねえ、今何してるの？　もしかして、これから寝ようとした？」
「いや。特にすることもないから」
「……そう、なら良かった。私は……ちょっと寝付けなくてね」
　窓を見上げ、ヒューも星空を見ているかしらと水樹は少し間をおいて訊ねた。
「それで今、窓から夜空を見てるんだけど……とても綺麗だよ。そっちから星空が見える？」
「ちょっと待って。今、外を見るから」
　今日の星空は特に綺麗だから、と水樹が言うので窓から見ると、確かに途方もなく綺麗な星空だった。
「こっちからも見えるよ。とても綺麗な星が」
　それからというもの、二人は取り留めのない色々なことを話しをした。
「水樹、おひつじ座だったよね。夜空を見ていたら、おひつじ座が見えたよ」
　僕の星座も見つけたよ、とヒューはうお座の位置も教えてくれた。
　ファッション誌に掲載されていたデートスポットの中にプラネタリウムが紹介されていて、秋の星座早見表が載っていたことを思い出した水樹はそのページを開き、ヒューが教えてくれた星座と見比べた。
「制限時間内に、どれだけ星座を見つけられるか競争しないか？」
「いいわね、面白そう」

　星座を探している合間に互いの近況について話をしたりしているうちに、時間はあっという間に過ぎた。
　2人とも最近多忙気味だったので、こうしてゆっくり会話できるのは久しぶりだった。
「もうこんな時間か」
　ヒューが時計を見ると、時刻は午前2時になっていた。
「そろそろ寝ようか。もう2時だ」
「え？　もうそんな時間なの？　これ以上、夜更かしできないから眠るわ」
　話をしているうちに、水樹は眠たくなってきた。
「うん……おやすみなさい。また会おうね」
「おやすみなさい。また会おうね、ヒュー」

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