秋の夜長に……｜リアクション

秋の夜長に……

●猫と戯れる夜長

「過ごしやすい秋の夜だね。のんびり楽しみたいな……何をしようかな？」
　外を散歩しようと恵御納夏朝は桜花寮を出た。
「とりあえず、寮の外を散歩してみようかな。可愛い猫さん、いるといいな……」
　散歩の途中で猫さんに会えるかもと期待しながら、ゆっくりと歩く。
　夜風は冷たいが、猫を抱っこすれば暖かそうと思いながら。
　しばらく歩いていると、野々ののこを見かけた。
（……あれ、ののこちゃん？　僕と同じで散歩しているのかな？）
　そっと声をかけてみようと、ののこに近づく。
「こんばんは、ののこちゃん。ののこちゃんも散歩？」
「夏朝ちゃん、こんばんは。私、猫を探してお散歩しているんだ」
「猫さん探し、いいね……」
　僕も一緒に探してみてもいい？　と言うと「一緒に探そう！」とののこは夏朝の手を取った。
　そうと決まれば、さっそく猫探しをしながら散歩だ。

　可愛い猫を探しながら、２人は手を繋いで散歩や会話を。
「お三夜祭り。楽しみだね。僕は去年、童水干風な衣装を着てみたんだけど……」
　お三夜さまが人の姿をとったなら、どんな風になるかと思いながら作った衣装のことを思い出す。
　猫パペットのハルくんも一緒にお三夜さまを模した黒猫耳や尻尾を付け、お三夜祭りを目一杯楽しんだ。
「お三夜祭りの衣装、まだ決まってないの？　私はまだ決めてないなー」
「今年は、僕もまだ思いついてなくて……」
　具体的にはまだ決めていないが、今年も猫さんな、和風の衣装にしたいかも。
　ののこと会話しながら、そう考える夏朝だった。

「夏朝ちゃん、あそこに猫さんいるよ！」
　ののこが指さした方向を見ると、黒猫がいた。仄かな月明かりでかろうじて見つけることができた。
「あ、猫さんだ……可愛い……！」
　２人で「おいでおいで」と誘うと、甘えたいのか、ゆっくりと近寄ってきた。
　近づいていた黒猫を可愛いねと撫でたり、ののこと一緒にじゃらしたりと遊んだ。
　黒猫と夏朝達が遊んでいるのを見た他の猫は、楽しそうだから自分達も混ぜてと言っているかのように近づいてきた。
「わあ、猫さんいっぱい！」
「どの子も可愛い……！」
　三毛、サバトラ、茶トラといった様々な模様の猫達が集まってきた。
　その子達も撫でたり、じゃらしたり、抱っこしたりと思う存分遊んだ。中には抱っこを嫌がる子もいたが。
（可愛い猫さんが衣装のヒント、見つけてくれるといいな）
　猫達に囲まれながらそう思う夏朝だったが、どの模様の猫にしようかが悩みどころ。
　今年のお三夜祭りの衣装は、当分、決まりそうもなさそうだ。

　桜花寮に戻った夏朝は交換日記をつけ始めた。
　別人格【夏夜】とやりとりしている日記だ。
「夏夜ちゃんにも、お三夜祭り楽しんでほしいな……」
　今年はこのパターン多い気がするが、お三夜祭りでも夏夜が出られるよう祭りの途中で一回寝て……。
　そう思いながら、ののこと一緒に散歩したり、猫と遊んだりしたことを日記に書く。
「分離・共存の願いを叶えて一緒に、あるいは別々に楽しめるのが一番だけど……」
　まだ叶えられてないから、夏朝は、できる事をするんだと交換日記に思いをしたためる。
「……来年のお三夜祭りなら、チャンスはあるかな……？」
　いつか一緒に、夏夜とお三夜祭りを楽しみたいな……と想像する夏朝だった。

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